中島隆信(2009)「サービス産業の生産性」『マクロ経済と産業構造』第9章,シリーズ「バブル/デフレ期の日本経済と経済政策」第1巻,289-321
- 消費と支出が等しくなっているからといって耐久性がないと決めつけるのは早計である。たとえば,歯科診療を例に考えてみよう。患者は診察を楽しむために歯科医のもとを訪れるのではない。歯の健康を一定期間保つために訪れるのである。すなわち,歯科診療サービスには物理的に耐久性がある(Hayashi 1985)。
- 医療・美容・教育などのサービス消費はサービスストックへの投資という側面をもっている。
- サービスをストックと考えると,その価格についても建物や設備といった資本財の価格決定理論がそのままあてはまり,資本財の価格は,資本ストックが将来生み出すであろう収益を現在価値に割り戻したものとして解釈される。
- 資本財の収益性が高まれば価格は上昇し,低くなれば下落する。同じことがサービスにもあてはまる。対消費者サービスストックの場合,その価格は消費者が将来にわたって受ける便益の現在価値に等しくなっているはずである。
- 高度な機能をもつ PC の価格が通常の PC よりも高いのと同様,10 年生存率の高いガン治療の価格が低い治療よりも高くなるのは当たり前といえる。
- ただし,ストックの収益性には外部効果が働きやすい。高速道路が整備されれば自動車の収益性は高まり,知力を発揮できる場がないと教育サービスの収益性は低くなる。
- サービス業についてこうした考え方が必要とされる理由は,料金の変化をそのまま価格の変化とみなして実質系列を求めるためのデフレータとすることについて疑問が存在するからである。サービスに対する消費者の評価が高まった結果として価格が上昇したのであれば,それは単なる「値上げ」ではない。しかし,値上げと見なして名目生産額をデフレートすると結果,実質アウトプットの過小評価につながるおそれがある。これはサービス産業の生産性指標に直接影響を与える。