- 教養の再構築以上に,旧来の教養に回帰させない大学の再定義が必要。
- 90年以降の大学進学率上昇は,入学需要に応える構造から,学力や将来の志望はともかく,とりあえず進学する者を大学が自己努力によって創出していく構造への転換(マーケティング)。
- 近代日本の大学は,医学と理学はドイツ,法学はフランス,工学はスコットランド,農学はアメリカ,文学はイングランドと,当時の最先端から外国人教師を招き,留学生を送ることで移植した。これが帝国大学として,中世ともフンボルトとも異なる日本的大学を生む。
- 大学は知識形成の実践を集中・再編成・安定継承するメタメディア。近世の大学は印刷革命に対応できず新しい知を媒介するメタレベル組織への発展に失敗した。
- 高度に細分化され総合的な見通しを失った専門知を結び合わせ,新たな認識の地平を与えることで相対化するリベラルアーツが必要。
- ユニバーシティは学生の組合を指す言葉であったのに対し,カレッジ(コレギウム)は教師の組合を指す言葉として出発した。ユニバーシティの担保は聴講料,カレッジの担保は学位授与権。
- コペルニクスは天文学だけを勉強して地動説に至ったのではなく,かなりの時間が医学や法学にさかれ,実際生活を支えたのもそれらの知識で,全てが何らかの形で天文学と結びついていた。
- 18世紀の新たな知識生産と継承の主役は大学ではなく,専門学校・アカデミー。中世に都市の自由を基盤に知の自由を抱え込んだ協同組合的大学は,印刷革命を経て近世にかけて一度死ぬ。
- アカデミズムを象牙の塔・権威主義と見るなら,二重に間違っている。アカデミーは大学の保守性を批判し,新しい知を切り開く役割を担い,かつ,実学的で新しいものに対応して実験的な知を紡ぐ専門家集団である。
- フンボルト型大学の特徴は,いかに新たな知を発見するかという技法。内容としての知から方法としての知への転換。とは言え,実際はゼミナール学生になるには選抜試験があり,一方で放任主義教育の学生がいる二重構造だった。
- 19世紀のアメリカのカレッジは,裕福な家庭の子を紳士に仕立てる寄宿舎学校。よって,大学教師はある分野の専門家ではなく,学生生活の監督官,授業は定食メニューの繰り返し。
- ハーバードでドイツ型を意識し,講義を始め,出席の試験も課さず,能力別編成,選択科目導入などをティクナーが入れたが,学生からすれば怠ける絶好の機会で,最終的に改革は成功しなかった。伝統的教授法を変えたくない教授もサボタージュで抵抗した。
- ハイスクール的カレッジから抜け出せず,旧式カレッジの教授を安心させ,一方一流の教授をおける方法としてジョンズホプキンスに大学院が生まれる。ここから,教授は教師でなく研究者が求められ,紳士の育成ではなく研究者の育成に向かう。
- 大学の名称は古代律令制の大学寮に由来,唐の官僚候補生への教育と試験を実施する所。
- 士族にとって維新は特権喪失であり,新たな人生の道を見つける必要があったため,学校に通って技能を身につける以外に道がなかった。
- 京都大学の帝国大学への挑戦(学年出科目固定,進級試験必須)は,高等文官試験の成績向上に結びつかずに挫折してしまい,結局東大とほとんど同じになる。
- 帝国システムの6番目はソウルの京城,7番目は台湾の台北。
- 敗戦時の総合的教育を行う大学は49校。高等教育全体のヒエラルキーは官学。地方の官立高等教育機関を1件大学に統合して官学全体は縮小,一方で,私立の大学化で重心が私学へ移る。
- ハッチンスのシカゴ改革は,40の学科を人文,社会.生物,物理,の4ディビジョンに再編,学部前期課程も独立ディビジョン,経営,法律,図書館,医療のプロフェッショナルスクールを加えて,大学の基本構成にする。ジュニアカレッジに高校の最後2年を取り込んで,4年生カレッジを作り,学士授与を2年早めることを可能に。
- しかし,これはカレッジの教員が専門課程教員より格下とみられる問題を生み,社会もシカゴの学士を他の大学と同等に見ずに失敗する。
- 南原は専門科学の分断的発展は大学の危機であり,知識の統一に向けたシステムの中核に一般教養の徹底した導入を据えた。これはエリート文化の教養主義知は異なり,異なる専門を総合する力を指す。将来いかなる職業人になろうとも,高度に専門的な知識や技術を文化や社会の全体構造の中で総合する力を備えていなければならず,大学で教育関わる者は研究者であると同時にプロフェッサーでなければならない。
- 日大会頭の古田は,大学職員からトップに上がり,自民党政治家とパイプのあった人。大学は経営体であり,大学の質が劣化しても文部省が口出しできず,巨額使途不明金問題をきっかけに古田体制への反乱として学生反乱がはじまる。東大の医学部無給医局員問題がきっかけの東大とは別。
- 大学に遊び半分で来た若者の多くは,闘争参加でむしろまじめになっていった。
- 46答申の基本課題は,5つの矛盾:(1)大衆化と学術研究の高度化の矛盾,(2)高等教育の内容の専門家と総合化の矛盾,(3)教育研究の特性と効率的な管理の矛盾,(4)大学の自主性と閉鎖性の矛盾,(5)大学の自発性尊重と国全体の計画的援助・調整の矛盾。
- これに対して13の改革を提案:(1)一般教養大学,研究大学,専門職大学の3類型化,(2)一般・専門教育を廃し,総合的教育課程で教育,(3)ICT活用,少人数,実験など教育方法改善,(4)資格認定制度導入(社会人の履修容易に,海外との互換),(5)教育組織と研究組織の分離,(6)博士学位授与水準者向け研究院設置,(7)教務,財務,人事,学生指導の学長副学長による中枢的企画・調整・評価と学外者の運営参画,(8)教員選考・評価の学外者参画,任期制,インブリーディング制限,(9)国公立の法人化,(10〜13)国の財政支援方式再検討,学生生活環境改善,入試制度改善。
- 国立大学法人化の最大の変化は財務上の変化。組織運営が変化しないように見えるのは,事務組織や職員の意識・能力が新しい体制に追いついていないため。法人化が,予算の自由化・安定的な保証の解除と結論されかねない状況。
- 大学は誰のものか,学生のものであれば,消費する学生の時代には大学は消費者のためのサービス財になってしまう。大学の転換点に直面した人たちは,人類的普遍性に答えを求めた。
- 日本の大学はアメリカモデルとも異なり,基本的に加算式,古いものを残して新しいものを付ける形で発展したため,私塾,帝国大学,専門学校,新制総合大学,アメリカ式大学院などのあらゆる要素が混在している。
- 大学とはメディアである。人と人,人と知識の出会いを持続的に媒介する。その媒介原理は自由である。
2011/12/13
吉見俊哉(2011)『大学とは何か』岩波新書
2011/12/12
瀧本哲史(2011)『武器としての決断思考』星海社新書
- 学問のすすめでいう学問は,普通の生活に役立つ実学であり,リベラルアーツである。
- 賛否両論を自分の頭の中で整理するディベート思考法こそ,個人の意思決定に使える思考法である。ディベートとは,客観的に決断するための思考法。
- 実学の世界では,知識・判断・行動という3段階があり,3つセットではじめて価値が出る。知識を持っている人材はコモディティ人材だが,行動できる人材は交換不可能。
- プロフェッショナルとは,専門的な知識・経験に加えて,横断的な知識・経験を持っており,それらをもとに相手のニーズに合ったものを提供できる人材をいう。そうでなければ,エキスパート。相手の立場で相手の代わりに考えてあげることができる人がプロフェッショナル。
- ディベートは,正解ではなく,現時点の最善解をを出すもの。
- その際,人は(1)過去を重く未来を軽く見積もる,(2)限られた情報・枠組みで考える,(3)サンクコストにとらわれるので,一人でなく議論で考える必要がある。
- ディベートは,(1)具体的な行動を取るべきか否かを議論する,(2)賛成と反対側に直前に分かれる,(3)限られた時間で発言する,(4)第3者を説得するというルールで行う。
- 従って,ディベートは,準備が8割,根拠が命。
- 賛成側は,(1)何らかの問題があること,(2)その問題が深刻であること,(3)問題が行動によって解決することを示せばメリットを主張したことになる。
- 反対側は,(1)上の(3)の行動を取った時に,新たな問題が発生すること,(2)その問題が深刻であること,(3)現状ではその問題が生じていないことを示せばデメリットを主張したことになる。
- 相手の主張に反論する時は,相手の主張を支える根拠・推論に反論を行う。
- 全ての人はポジショントークを行う。なので,発言で強調されるポイントは重要ではない。油断した時に本音は出るので,バカを装って知らないふりをして,話を自分の知りたい方へ持って行くのが優秀なディベーター。
- ディベートの判定は,質と量と確率で判断する。
2011/12/10
2011/12/06
ソフトバンクアカデミア特別講義(2011)『孫正義リーダーのための意思決定の極意』光文社新書523
- 事前情報のない状態で意思決定の質問は乱暴過ぎる上に,実際の意思決定は通常の選択とは逆のケースが多く,個別のケースを見るとつまらないが,全体では次のような姿勢が一貫されている。
- 意思決定は,志,お客様のため,出資者のために本質的に重要なことであれば,通常とは逆の選択であっても大きく勝負に出る。
- 正義・正直・道義的責任はどんな場面であっても貫く。
- 自分の気持ちやエゴではなく,お客さんの利益を損なう理不尽なものにキレる。
- 目標は公言する。必ず成すという決意で引っ張ることがリーダーシップ。
- ビジョン・理念を実現させるとは闘うこと。少々の批判は覚悟の上で,革命家は闘わなければいけない。
2011/12/05
楠木新(2011)『人事部は見ている。』日経プレミアシリーズ122
- 人事部はフリーハンドを持っていない。人事評価は企業経営の反映であると共に,各職場の配置構想や移動構想を無視することはできない。
- 人は自分のことを3割高く評価している。
- 人事評価は主観的であり感情面が大きく関わっており,定量的・客観的なものを取り入れてもそれは一部を表現しているに過ぎない。求めるものは客観性や公平性ではなく,評価される側の納得性。
- 大きな組織では伝聞情報が中心となる。
- 多くの大組織はいまだに大量生産時代の就業形態が続いている。サービス化やソフト化で要求される創造的な知的労働に合わないオフィスが多い。組織や体制を旧来のまま共同作業を行うと,遂行・調整に時間がかかりすぎる。
2011/12/03
沢田健太(2011)『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』ソフトバンク新書
- 業者外部教員の授業が,1年生に自分の将来と大学の勉強は関係ないと受け取られている。
- エントリーシートの複雑化は,応募者の多さに驚いた人事部が本気なら書けるはずという志望度の高い学生を選別するためにやったことだが,学生側もそれなりのものを作って出している現状。
- 欧米と違い,目的はないがとりあえず大学生になった人に自由な就職活動はむしろ困難であり(自由化の恩恵を受けるのはごく少数),新卒一括採用はモラトリアムに線を引き職業社会に目を向けさえる意味で,積極的な存在意義がある。
- 大学受験でがんばった人が評価されるのは普通であり,同じ土俵で戦いたいなら,大学でがんばらないといけない。
- 企業を見る時は,就活生向けの広報ではなく,投資家向けの広報を見るべき(当然読み解くための勉強も必要)。
- 今の就職活動は,企業と学生の間に業者が入ってしまい,互いの顔が見えなくなっていることが問題。
著者のスタンスは誠意ある一職員,書いてあることはよく知られた内容で目新しさはない。
中身は就活生&親向けなので,その層が手にするタイトルにした方が良い。
2011/12/02
酒井穣(2011)『ご機嫌な職場』東洋経済新報社
- ある個人があるコミュニティへの参加を自発的に決める時,そこにはそれぞれが異なる欲求を満たそうとする複雑な背景がある。コミュニティ開発では,こうした複雑さから逃げない態度が必要。
- 職場コミュニティが弱体化する背景は,(1)時代背景から個人の安全が脅かされており,他人を気にしていられない,(2)ITによる職場外コミュニティの形成,(3)業績へのフォーカス強化と非公式コミュニケーションの悪者化。
- ネットワークのスケールフリー性から言えることは,仲の良い職場づくりとは,人的ネットワークのハブになれるキーマンを増やす活動。
- フレドリクソンの拡張-形成理論(broaden-and-build theory)は,ポジティブ感情形成,行動の拡張,個人の成長というサイクル。
- 仲の良い職場を作りたいという気持ち(関係欲求)には相当のばらつき(安定・拒絶・とらわれ・恐れ)があり,その対応が実務上の大きなハードル。
- 明るい職場形成の鍵は,ラポールを形成する力であり,そのために有効なものの1つが傾聴。
2011/12/01
ちきりん(2011)『自分のアタマで考えよう』ダイヤモンド社
- 知識は過去,思考は未来。特に成功体験と結びついた知識は影響力が大きい。
- 意思決定のためには,どうやって結論を出すかを先に考える必要がある。意思決定のプロセスが抜けた会議が多い。意思決定プロセスは,情報を収集する前に決めておく必要がある。
- 考えるとは結論を出すこと,あるインプットをもとに何らかの結論を出した・ある考えに至ったということ。考えるとは何かを決めること。
- 能力・人間性・志があっても,リーダーならこういうときにこう振る舞うべきという具体的な方法論を教えるのがビジネススクール。自ら試行錯誤して学ぶには時間がかかる。
- 判断基準は2×2マトリックス。2つの判断基準に絞り込むことも考えること。比較の基本は時系列と競合比較
- 細部まで突き詰めて考えていないと図にできない。
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