2010/11/09

依田高典(2010)『行動経済学―感情に揺れる経済心理』中公新書


  • 人間は見たいものを見る。人間は必然的に誤りを犯す。大切なのは、人間の誤りをシステム全体に関わる重大事故につなげない予防システムである。
  • 割引率と時間選好率は同じではない。現在の100円と1年後の120円が等価である場合、100=120/(1+r)としてr=20%とはならない。100円から1円増える限界効用は、120円から1円増える限界効用よりも大きいと考えるためだ(限界効用逓減の法則)。仮に、効用関数をlogとすると、log(100)=2, log(120)=2.08であり、ρ=2.08/2-1=0.04となり、時間選好率は4%になる。
  • 割引効用には、隠れた仮定が置かれている。
    1. 効用の独立性:現在消費の効用と未来消費の効用は相互依存せず、時間選好率で割り引かれた効用の足し算で定義される。
    2. 消費の独立性:現在の効用は現在の消費だけに、未来の効用は未来の消費だけに依存する。
    3. 効用の定常性:効用関数は、現在と未来で同じ形状であり、時間を通じて人間の選考が一定と仮定。
    4. 割引率の一定:今日の100円と明日の110円に適用される時間選好率は、1年後の100円と1年1日後の110円の満足に適用される時間選好率と同じ。
  • 割引率は大きくなるほど未来消費を増やし、現在消費を減らすが、割引率が正であっても、時間選好率が正とは限らない。r=ρとなる場合は、C1=C0で、45度線上で無差別曲線と予算制約線が接する。
  • 時間選好率の逓減は、時間の不可逆性による。よって、現在の利得だけを特別に重視する。これは、双曲型割引で説明できる。双曲割引では未来消費の割引効用をU(C1)/(1+αt)で表す。人間の時間感覚は、4,8,16年と経ても、2,3,4倍程度に感じる。
  • プロスペクト理論の主観的確率では、参照点は0.3。客観的確率0.3以下の主観的確率は過大評価され、それ以上は過小評価される。
  • アローの不可能性定理は、選択肢が3つ以上あるとき、全ての個人の選好を民主的なルールで集計する社会的選好を導くことはできず、誰か特定の個人の選好を反映したものにならざるを得ない。序数的選好を仮定する限り、各個人の選好から社会的な選好を得ることはできない。
  • 喫煙は、時間上の選択(今直面するストレスを発散させ、将来の健康を蝕む)と、リスク下の選択(喫煙は健康リスクを高めるが、喫煙に関係なく長寿を全うする人もいる)の2つの意志決定問題。