本書は、現代の大学生の生き方を心理学の立場から解説したものである。
- 学生の自己評価の高低に関わらず、現代の学生の自己評価を最も規定する要因は学業
- 60年代の青年の一人前になる人生形成の仕方は、まず学歴トラックに乗ること、できるだけ上級の学校へ進むことで一般化される。それを背後で支えたのが、所得水準の上昇と子供の数の減少。
- ただし、戦前期の学問で身を立てる立身出世は50年代に消滅済みで、怠惰な学業生活が珍しくなかった。
- 私は何者かというアイデンティティが成り立つ条件を、エリクソンは自己同一性(自分がどこから来てどこへ行くか)と、心理社会的同一性(他者・社会の中で私はどのような存在か)の二次元で示し、両方が必要条件であると考えた。
- 60年代の人生形成は、より高い社会階層に属する大人社会に参入するために最適な学校を選ぶ、アウトサイドインと言える。
- 70年代のは、アウトサイドインが強化された時代。ただし学生同士のコミュニケーションは、流行的、消費的、娯楽的な自己表現で成り立つ変化があった。
- 90年代のバブル崩壊は、企業の採用戦略の変化をもたらし、同時に大学に教育への要請が高まる結果をもたらした。より上級の学校へのレールは維持しながら、大学が将来を保証された青春を謳歌する場所でなくなった。
- 人生形成の仕方の大きな転換は、学生の学業中心型キャンパスライフへの転換として現れた。
- これらは、職業世界における大人社会の権威の失墜を意味する。これが、自分のやりたいことを目標に人生を形成するモデルが突出化する。実際、就業意識調査でもやりがい重視傾向が出ている。これをインサイドアウトと呼ぶ。
- しかし、そこでも70年代に確立した学歴トラックも強く機能している。
インサイドアウトの難しさ。
- 生き方の情報化:メディアで理想とする生き方を提供しながら、裏側の困難や努力が伝わっていない。
- やりたいことが趣味・娯楽:消費文化から発したもので、職業世界に入ることを前提としない考えで、仕事になるかどうかを考えていない。
- 目標の実現場所・実現方法不明
- システム化された大学生活:全体を部分にわけ、その有機的連関をはかって全体を再定義。様々な私の全体性が自己感情の総体を作り上げる。目標とその実現に向けた活動が、大学生活全体でどう位置づくのかの調整がむずかしい。
現代の学生への対応
- ある程度の将来の目標にあたりをつけたあとは、行動しながら具体的な形に修正する。(将来見通しを持っている学生が6~7割いるというデータが前提)。今の学生は、勉強でもしなければ将来のことを考える機会を得にくい。
- やりたいことを他者へ話す。
- 受け身的な授業に対する不満を超えて、双方の相乗的改善(学習観の転換)が必要。