本書は人口が減少してく社会で直面する課題を指摘しながら、質的に充実した社会を確立する好機であること示すものである。実際の中身は、一貫した主張が述べられるものではなく、これまでの社会の特徴、今後の特徴を説明的に述べるにとどまっている。仮説がある研究書というよりは、役人の書いた優等生な文章という印象が強い。
人口を維持するために子供の数を増やすという議論があるが、合計特殊出生率が持続的に2を超えるOECD加盟国はあり得ず、少子のような言葉で問題化されることもない(少子の英訳はない、出生数は個人の問題)。
人口減少は少子化ではなく平均寿命の上昇で起こる。出生数を一定にしてベビーブーム世代が高齢化すると、他死になる。出生率が上昇しない理由は、養育費が経済成長率以上の割合で上昇するためであり、日本では出産と結婚の関係が強固であるために未婚率上昇も影響する。
終身雇用・年功賃金のルーツは戦時の賃金統制令と従業者移動防止令。戦後は量産効果追求を支える勤労意欲の維持のために終身雇用・年功賃金で忠誠心を確保した。国全体の人口構造もピラミッドであったために、終身雇用を維持しても昇進ポストを用意できた。
成長期の日本企業は売上高至上主義をとってきた。これが機能するためには、売り上げが右肩上がりであることで、終身雇用とポスト維持のためにも必要。しかし、利益率の低い投資は労働生産性を引き下げる。それでも維持できるのは、利益率を重視しなくても資金調達に困らないメインバンク金融のため(逆に欧米は市場で資金を調達するため、投資の利益率を重視する)。
経済成長率は生産性と労働者数で決まるので、生産性が一定であれば、労働者数がマイナスになれば経済成長率はマイナスになる。さらに、労働時間が減れば経済成長率はさらに下がる。こうして経済が縮小するとこれまでの売上高を重視する経営モデルに変革を迫る。つまり薄利でも売れれば良いというビジネスは持続不可能になる。
人口が減少すると消費者が減少し、生産者は売り上げ減少により生産量を減少させることから負の連鎖となるという議論は、景気循環と経済成長を混同している。人口減少による生産量低下は、生産能力の低下でもたらされるものであり、その下での採算と資金繰りで経営は可能。