- 大学とOrganizational Stupidity:大学の経営慣行は、OS文化を意図せず強化している可能性がある
- 批判的な考察、発言、有意義な参加の文化を確立するためにリーダーが取るべきステップを提案する
- 大学への民間経営導入=時間が重要になる=限られた時間で成果を出す
- →個人:燃え尽き症候群
- →組織:学習・新たな知識構築の能力制限
- 組織構造や文化は、省察を阻害することがある
- OSの分析対象は個人ではなく組織:特定の意志決定の問題や意志決定者の限界を説明する概念ではない → 構造・文化・ルーチンの中に埋め込まれたStupidityに注目
- なぜメンバーが省察を避けるのか?
- 発言を恐れる、現状維持を好む → オープンに話そうと言っても話さない
- 決定に対する説明が不足している → 正当性の欠如 → メンバーが正当性を要求しなくなる
- 目標達成の強迫観念 → 適切なアウトプットを生んでいるかどうかを疑わない
- OSが続くと、階層的な権力の強化につながる
- 大学への民間経営手法導入は、批判的に分析されずに導入されてきた
- ↑有効性は誰の視点で評価するかで変わる
- 迅速実行、中期計画の合意形成=リーダーにとっては好都合(有効)← OSにより批判から守られる
- ↑安定が必要な環境下ではOSが有効 ← Organizational Hypocrisy(組織的偽善)=リーダーの発言と行動が矛盾する
- 例:公平性を重視する宣言を出す→取り組みに予算をつけない
- 偽善がはびこる=メンバーに感情的な犠牲を強いる
- 組織に疑問を持つことはプロフェッショナルではないという文化
- →組織に忠実であることを優先する
- メンバーが感じる不協和→疎外感や離職につながる
- OSを維持する3つのマネジメント
- 組織的沈黙:組織の問題に対する意見や懸念を差し控える
- 批判をすると、上位者がトラブルメーカーと呼んだりチームプレーができないと言う
- 時間と資源の不足:上位者が資源の配分や意思決定のタイミングをコントロールすることで、時間と資源の不足をつくりだすこと
- 迅速な解決:問題が起きたらすぐに対応すること
- OSにどう対処するか?
- リーダーが省察する
- 構造に変化を加える:大学組織はサイロ→ネットワーク構築が重要
- 例:Equity Scorecardプロセス=執行部と教職員が一堂に会し、人種や民族ごとに分けられた学生の経験や成果に関するデータを検証し、学業や管理運営における部門横断的な変更を提案
- 文化を変える(ただし困難):パフォーマンスを時間基準で考えず、意味・目的基準で考える
- 権限の再分配(≠共有):階層上の地位とは関係ない権限の中心地をつくる
2023/05/28
Jay R. Dee & Amy E. Collinsworth (2023) Challenging the Pervasiveness of Organizational Stupidity in Higher Education, Change: The Magazine of Higher Learning, 55:3, 4-11
2023/05/24
舟津昌平(2020)「制度ロジック多元性下において科学と事業を両立させる組織の対応」『組織科学』54(2), 48-61
- 近年の研究は、制度ロジック多元性が前提
- コンフリクトをもたらす一方、イノベーションの機会でもある
- →コンフリクトの軽減は、イノベーションの毀損になる可能性(イノベーションの阻害にもなり得る)
- →制度ロジック多元性を保ちながらコンフリクトをマネジメントすることが重要
- 制度ロジック多元性:組織に対して複数の制度ロジックが関与し、影響を持っている状態
- 組織の対応のパターン:
- 区分化を行った上で複合・ブレンド
- 選択的に結合
- 状況に応じてスイッチ
- →3つとも、競合するロジックの中で、新しい支配的なロジックを構築することで競合を解消(組織がいかに多元性を削減するかがテーマ)
- イノベーションを目指す組織=多元性を削減せず、維持したまま、多元性が生み出すコンフリクトに対応
- 産学連携事例(医学部・製薬企業):新薬の創造が目的
- 企業→大学へ研究者派遣、日常的なコミュニケーションの下共同研究
- 企業+国の資金
- 数十の研究テーマ→スクリーニング→創薬標的限定→1/10テーマ
- 調査設計
- 5件のべ7名470分の面接+資料等
- 分析に用いる2つの制度ロジックを先行研究に基づき整理・概念化
- 2つの概念に従って発話データをコーディング
- 集約的分析コード:下位概念を内包した抽象次元において最も上位に該当する概念群
- 二次概念:原データの表現を2つのロジックの概念に沿って抽象化
- 面接後24時間以内にメモ作成
- コンフリクトの解消
- 制度設計:双方の事情を勘案して妥協点を探った結果の2年ルール
- ルール策定:企業が打ち切ったテーマは大学が他企業とでも継続可能
- 資金が企業+国であることが、事業ロジックの圧力を緩和する材料になった
- →第3のロジック(国家ロジックの道具的活用)=2つのロジックの一元化でもハイブリッドでもない多元性への対応
- なぜそうなったのか?:本事例は国の関与や高い公共性が求められる特徴+ケアのロジック(患者さんのため)→2ロジック以外がドミナンスを持ちやすい事例
2023/05/21
緒方広明・江口悦弘(2023)『学びを変えるラーニングアナリティクス』日経BP
- 自己説明:文章や他の媒体に提示された新しい情報を意味づける試みにおいて、自分自身への説明を行う活動(Chi 2000 p.163)
- プレゼン=理解していることを言語化して発表する
- 問題を手書きで解答し、その動画の説明を後からテキストで入力する
- アクティブリーディング:意図と目的を持った読み
- スキミング、スキャニング、自問自答、音読、暗唱、要約作成、マーカー・メモによる注釈付け、再読など
- SQ4R:予測(Survey)、質問(Question)、読み(Read)、暗唱(Recite)、復習(Review)、記録(Record)
- 記録は、メモを取る、注釈を書く、マーカーを引く等で読書記録を残すこと
2023/05/20
勅使川原真衣(2022)『「能力」の生きづらさをほぐす』どく社
- 個人の能力が大きく変わることはないのだから、能力を評価する社会の方を見る必要がある。
- 教育社会学は、なぜそうなってしまうかを問うことでメカニズムを明らかにしたり、そのような仕組みを後世に継ぐべきかを考えて提案する。
- 日本の教育は、機会の平等を重視したことで結果の不平等を放置した。平等と信じられた日本の教育は、生まれの格差を是正しようとする気持ちを持ちにくくしている。そのため、うまくいかない人は努力が足りない人という主張に、社会が違和感を持てない。
- 大学の教育方針の大転換は、社会が大学にかけた圧力そのもの。
- 儀礼化した学校は精査されない。そこで獲得するとされている能力も深入りされずに顔パスになる。一人前になるには学校に行かないといけない、しかし能力をはじめとする教育内容の細部について、誰も興味がない。
- 学校という権威に表面的な服従を示すことが実際の生きる力とは皮肉の極み。学校は通過点であり、照準は社会。実際に学習指導要領にも、「社会に出てからも学校で学んだことが生かせるよう」学びに向かう力・人間性、知識・技能、思考力・判断力・表現力の3つを育むとある。社会が求めるものを教育現場が下請けで子どもに教えている。
- 人事部が人材開発業界という第三者を必要とした。人事は、昇格・降格などのシビアな内容を扱うため、公明正大さが求められる。そのため理論武装が必要で社員の納得感の醸成に気を遣う。なのに、人事もさまざまな業務を経験させるために数年ごとの配置換えがあたりまえ。
- 人材コンサルをする外資系大手、保険会社から派生している。保険会社として保有する年金データを活用して応えたのが報酬専門のコンサル。報酬は何に基づいて決めれば納得性が高いか?→能力の違いに注目すればいい→能力専門のコンサル会社誕生
- 全員を1つの同じ能力の獲得に向けて競争させる、キャッチーで訴求しやすい能力のレベルを測ることは危険(むしろ組織全体の機能を担い合うことが大事)
- 組織の業績は組織風土次第:しかし、何が風土かに気づくのは難しい
- →風土の醸成に大きな影響を与えるのがリーダシップ
- 好業績者(ハイパフォーマー)と同じ行動を取っている度合いをコンピテンシーと呼ぶ
- マクレランドがコンピテンシーモデルやコンピテンシーディクショナリーをつくった
- できる人は脳みそが違うといわれるより、仕事の成果はよい行動ができているかどうかで、次はこの行動を取れるようにがんばろうと言われる方が納得感が高い。
- →できる風を装う行動をする人が続出
- ピクチャー・ストーリー・エクササイズ:正解がなくどうとでも解釈できる絵について作文を書き、そのキーワードを分析して評価
- 画面の中心に白衣を着た女性が試験管を振って、それを眼鏡をかけた女性が見ている絵。
- 実は性格を調べている検査
- 行動は装いやすいといっても、自分が行動するとできない人がいる。行動の根底には性格があるから。
- →マクレランドは氷山モデルを示す:知識・経験・スキル(表層=習熟可能)、マインドセット(意識・意欲・心構え・価値観)(中層=変容可能)、性格特性・動機(感情の素)(深層=変容困難)
- 個人の能力の問題で仕事ができる・でき内を決められると、個人に無限の努力が強いられる。
- 能力の商品化が進んだ先に、人の心・精神状態まで能力に取り込まれた。
- 必要なのは違いをふまえること:背が高い人に、なんで背が高いんだ、病院行ってこいとは言わない。
- 精神状態や発達特性は、わかれば解決するものではない。わかっても何も進まない。
- 科学という客観性に傾倒するあまり、主観を置き去りにしてきた。プロなら主観は敵と言われる。どこかの誰かの客体ばかりが重視され、主体は我慢に我慢を重ねてきた。
- →まず相手の話をとにかく聞くこと。聞くことこそが、相手にはほしくてたまらなかった私に関する情報を教えてもらったと同じ信頼を作り出す。その上でなら、どこかの誰かの話の客観性・エビデンスについても安心して聞く耳が持てる。
- 人間は複雑なものをわかりやすく・はっきり提示する習慣が染みついている。
2023/05/16
石田雅樹(2022)「アメリカ高等教育をめぐる対話」『宮城教育大学紀要』57, 1-11
- デューイ−ハッチンズ論争:
- 進歩主義論者 VS 教養主義の復権を掲げる復古主義者
- 進歩主義・経験主義・プラグマティズム VS 永遠主義・古典主義・現実主義
- ハッチンズの「アメリカにおける高等教育(The Higher Learning in America)」
- 教養を深め専門的知識を習得するはずの大学教育が全く機能していない
- 高等教育は、金儲け主義、デモクラシーの誤解、進歩の誤った考えがある
- 金儲け主義:寄付金・学納金獲得、社会関心に沿った学部設置
- デモクラシーの誤解:進学者増が学問関心でなく失業対策
- 進歩の誤った考え:現在より未来はよくなる(=進歩論)考えが過去(古典)との決別を促した
- その解決策:教養教育(general education)の再生
- 歴史を超えて伝えられてきた普遍的な知識
- → グレートブックスを読むことを提案
- → テクストを正しく読み・書き・考え・話すための技法の修得
- → 新高等教育プラン:4年の教養教育修了者のみが高等教育(専門学科)を学ぶ
- 3つを3年かけて体系的に学ぶ(自由選択履修はなし)
- 形而上学:学問全体と統括する原理(哲学)
- 社会科学:倫理学、政治学、経済学(これらを応用したのが法学)
- 自然科学:物理学など(これらを応用したのが医学・工学)
- デューイの3つの批判
- 権威主義的な真理概念:哲学を固定的でい永遠の権利原理としている、それはデモクラシーを脅かす
- 経験主義と自然科学の軽視:古典の真理のみが重視されると、経験の観察から真理を見つける過程(自然科学の探究プロセス)が軽視される、テクストの解釈のみで事足りるという考えが現代になじまない
- 社会的要請からの大学の撤退:問題はわかるが、代替案を示さず理念を述べても問題からの逃避にしかならない
- ハッチンズの反論
- 批判になっていない、議論を正確に反映していない
- 固定的・永遠はデューイの創作、教養で自然科学は重視している
- 大学の使命がデモクラシーの建設と明言している
- 教養の後で、聖職者、医師、弁護士、教師が、形而上学、社会科学、自然科学を同組み合わせるかを提案している
- 職業教育と教養教育
- 中等教育を教養と職業に分離する二元システム導入をデューイは批判(社会的分断を生み、デモクラシーを脅かす)
- ハッチンズ=教養教育から職業教育へ進む ⇔ デューイ=職業教育の中に教養教育を見出す
- どちらも職業教育と教養教育を二者択一ではなく、異なる方法で統合しようとしていた
- ← 社会的効率性の名の下で、特定技能の修得を進めることは一見合理的だが、技能の陳腐化で大量の失業者を生む非効率な帰結になるかも
2023/05/15
近森憲助・谷村千絵・上野正恵(2017)「教育研究と教育実践における批判的実在論(クリティカル・リアリズム)の可能性」『教育学研究』84(4), 59-69
- 批判的実在論(クリティカル・リアリズム):ロイ・バスカーに始まる科学哲学、実践哲学
- 見えないものをも実在と捉えようとする
- 特に教育は言葉で捉えきれない
- 「学習とは何か」「どうしたら学習とは何かを知ることになるのか」2つの問いの区別が曖昧 ← 何か(what:存在論的な問い)とどうしたら(how:認識論的な問い)を明確に区別しないと、認識できないものは存在しないものとされる ← 現代は認識論が支配的
- → 学習についてそれは何かをまるごと問う=知ることができるかはともかく、まず対象に向かって問いかける
- バスカーの存在論の3つの主張
- 知識対象と対象についての知識の関係
- 太陽:自存的=人が太陽についての知識の生むにかかわらず存在している
- 我々の知識:意存的=さまざまな方法による太陽についての我々の認識に根ざす(認識されないなら太陽はないものとされる)
- 意存的な知識は誤っている可能性がある → だからこそ更新・洗練へ開かれている必要がある
- 現実世界は開放系
- 現実世界の現象は多くの要因が複雑に絡み合って生起する
- 学校カリキュラムは学校が閉鎖系であることを前提に作られる
- 実際には部分的な閉鎖系 → 開放系として学校外の教育資源を活用し、生で本物の学習機会の提供が求められている
- 現実世界は存在論的な深さを持つ
- 教師は生徒の行動の全てを経験として捉えない ← 教師自らの関心をもとに注目した一部の行動を捉えるのみ ← それを基に評価する
- 批判的実在論は、これら3つを全て含んで実在と捉える
- 批判的実在論の3段階
- 基礎的・批判的実在論:人間の生み出す知と現実世界は別物(科学を可能にする)
- 批判的自然主義:自然主義の可能性をあらためて描出
- 超越論的実在論:科学の基礎となる実在を巡る議論へのバスカーの答え
- 後者2つを1つにして、批判的実在論が定着
- バスカーの言葉
- 不在の不在化:目に見えるものを手がかりに見えないものを思考し、確認する実践・実験。これにより人間は「少し」自由になる。
- 対案がない:不在の不在化に進まず、破綻、堕落、思考停止
- 具体的個別=普遍:教育は具体的で個別な存在であると同時に、なんらかの普遍法則の相互作用を体現する
- → 批判的実在論は、経験主義、現実主義ポストモダンを批判する
- 世界には層的な深さがある、存在は皆異なり、それぞれ変化し、相互作用する。この世界でともによりよく生きるための工夫を生み出す知の創出を人はできる。
- 南アでの西洋文化:理科教育で土着知は迷信や神話とされる
- → 科学知と土着知の両者を、学習者自身が自分の生きる社会的・生態学的文脈に位置づけ、それぞれを関わらせる学習を重視する
- 日本の防災教育との相似:科学知と学校知のパラダイムが違う
- 学際性は社会科学の必要条件
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