- 組織学習:部門が組織にとって有益と認識した知識を組織が学ぶ。→ 知識の創造と活用に関する理論。→ 変革,効率改善(改悪),エンパワーメント(抑圧)を引き起こす+職場の社会化,意味づけ,影響力にも関与する。
- 学内のあらゆる活動を意味あるものにできる:認証評価などのルーチン,教職員研修,新人の社会化など。
- にもかかわらず研究蓄積が少ない。← これは高等教育研究が過度に機能主義パラダイムに立つため。= 組織学習を効率性・効果性促進ツールととらえる。→ マネジャーによる組織学習メカニズムのコントロールに注目。
- このトレンドは,高等教育機関をビジネス組織への加速ツールとなる。
- eg. 80年代の財政問題
- 財源や学生を巡る市場的競争を促進 → 民間的運営が普及 → 非常勤職員の増加 → 本部機能の膨張 → 3つの深刻な問題。
- 大学の中心的価値を知識創造・公教育から収入増大へシフトさせた,
- プロセスと成果の標準化を進めた(教育研究のイノベーションを阻害した),
- 執行部と教員集団間の信頼関係を壊した。
- 機能主義の組織学習の効果
- データによる意思決定の改善,実践の改善に役立つ新しい知識の導入,合意形成を促進する共有されたメンタルモデルの構築。
- → 解釈主義も考慮:異なるグループ間の意味づけの理解,組織アイデンティティの形成と保持,職場における価値とコミュニティの感覚づくり,パワーダイナミクスの理解もできる。→ 異なるグループサイロ間で効果的なコミュニケーションをつくれる。
- 大学=異なる目的を同時に追求=関係者間での合意形成困難。
- 大学で組織学習が困難な要因:高度な専門性と部署分断,個人の成果で評価,成果に対するフィードバックが貧弱。(分権化,部局自治もサイロ指向を促進,組織統合・協働・学習を阻害。)
- 大学はそもそもフィードバックループが困難な組織特徴。
- → (1)学際・プロジェクト活動,(2)自己点検・認証評価,(3)ベンチマーキング,(4)FD・SD・COP,
- IR室=組織学習の草の根リーダーとしての能力がある。(実際は単にデータ担当部署としか認識されていないが。)
- IR室は意思決定支援から組織学習促進へシフトすべき:それには,データに対する認識転換が必要=判断の道具→多様な集団間で意味や解釈をする道具
- 組織学習の関心:
- 機能主義:個人の学習は組織学習の代理人(組織目的達成に必要な知を求め,それを保存・拡散する。)+学習を促進するメカニズム:IRなど。
- 解釈主義:学習は対話と相互作用を通じて起こる⇔学習は個人の頭の中で起こる。
- ポストモダン:学習は影響力の装置で,影響力の小さい部局を周辺化・沈黙化させる。= 学習は全員が同じ考えを持つ手段 → 個人の力を促進する自由な学習になるべき。(ポストモダンは基本的に,集団的な取組に対して懐疑的。)
- 学習主体:
- 機能主義:個人かトップ(組織は無生物)→ 個人の和以上の共有知(でなければ退職したらなくなってしまう),行動,メンタルモデル,規範,価値観に保存される(逆に個人が学習してもそれに反映されないものは組織学習でない)。
- 行動主義者は,組織が内外の刺激に反応できることが学習。
- 今後の研究課題:個人の学習はどう組織の学習を規定するか,組織の学習はどう個人の学習に影響するか?
- 認知変化=組織学習,行動変化=組織適応で分離する → 学習せずに行動変化する現象を説明できる(はやりの経営手法の導入など)。
- この場合,学習は直ちに行動変容にならない。将来の変化への柔軟性を獲得するもの。
- 学習が組織のメンタルモデルを拡大・深化させるなら,学習は組織の有効性を高める力を持つ。
- 解釈主義:COP
- 学習の牽引要因:
- 機能主義=獲得,解釈主義=参加
- 機能主義=意図的 VS 解釈主義=生得的
- → 大学は部局分断なので学習装置なしでは学習できない。
- → 意図できてなくても付随的に学ぶことはある(認証評価など)。
- COPは意図的か発生的かは意見が分かれる・どちらもある。
- ナレッジマネジメント:
- 機能主義:競争力≠組織の知識,=知識を問題に合わせて再構築する組織の能力。(知識があっても問題に適用できなければ意味がない。)
- 解釈主義:暗黙知→形式知は問題がある。= 知識を文脈から切り離すと実用性が失われる。
- マニュアル化しても使われない,マニュアルよりも修羅場ストーリーの方が学習になる。
- 知識を形式・暗黙ととらえるのがおかしい,両者は同じ知識の両側面(自転車にのる知識と同じ)。教育はまさにこの種の知識。
- 批判主義=暗黙知→形式知はマネジャーによる知識の盗用。専門職から得た知を低賃金労働者にさせようとする。
- Bernbomの定義:知識の発見,その加工と適用,組織内でのその共有と活用。→ 組織学習を支援する不可欠な組織装置。← IR室はそれになりうる。= 知識は組織の「資産」。
- センゲのメンタルモデルとワイクのセンスメイキングは基本的に同じ。学習する組織とダブルループ学習は基本的に同じ。
- 機能主義の主要理論:ダブルループ学習,学習する組織,探索・活用枠組み,情報処理モデルの4つ。
- ダブルループ学習:メンバーから大きな抵抗を招く活動。← 外部からの介入がDLを起こすには不可欠(外部評価など)。
- DLは常に有効とは限らない。問題は,思考に偏って実践になりにくいこと。
- これを避けるには,トリプルループ学習(ダブルループの学習を組織がどう学んでいるかの学習)が有効。(本当?)
- DLを重視することは組織変革に偏るということ,シングルループも漸進的変革には重要。← 実際はどちらの学習による変革かはわからない可能性が高い,変革の最中は自分たちの活動がどの方向へ向かっているかわからない場合が多いので。さらに,ある人の漸進的変革は他部署から大変革に見える。(これらも同じ変革の両側面)。
- DLの問題:(1)エラー検知型学習で,新しい知識創造に言及していない,(2)外部刺激で発動と言いながら,既存のメンタルモデルにとらわれている誰が組織内から必要性を言い出すかという矛盾。
- 学習する組織:5つの取組が行われれば,組織学習が起こる。
- 大学はルースカップリング組織なので,5活動が学内のボトルネックを探す際に有用。(システマティックでないのによく研究で使われる。→ 流行研究。)5取組の調査票を用いた実証研究もある。
- 5活動は産業に近いので教員は好まない?
- 構成員は自由な存在ではなく,エージェントとして学習するので,この活動はトップの力を強める作用がある。
- 探索・活用:トップが戦略をつくる時,学内・学外双方の知識のバランスを取らないと実行可能な改革戦略にならない。
- 学外知識の獲得=探索(=収集,リスクテイク,実験,柔軟性,発見,イノベーション),学内知識の適用=活用(=修正,選択,産出,効率性,実践)(March 1991)。両者は異なる学習メカニズムを持つ。
- バランスを欠く=迷信学習,→ これを避けるには,構造分離が有効=ある部門は探索,ある部門は活用に特化する。(本当?コンフリクトをまねくのでは。)← 一例は企業家大学:共同研究に特化する学際部門と,伝統的教育に特化する学部部門に分離する。
- 情報処理モデル(Huber):外部からの情報獲得+内部知識への統合=組織を機能させる新知識の創造
- 4つのプロセス:情報獲得,情報拡散,情報解釈,組織的記憶(それぞれに対応するシステムを作る必要がある)。基本は経験学習モデル。
- 制度理論は組織同型化を指摘するが,他大学の模倣は深刻な学習能力低下を招く。
- 特に大学は,基本的にインプットはうまいが,拡散は苦手,保存にどの部署も責任を持たない。また,弱小組織は情報拡散が届きにくい。対応は,部局間対話とジョブローテーション。
- 組織学習は組織変革と結びつきやすいが,日常改善の学習としても重要。
- このモデルは学習プロセスを描写する点が魅力,ただし,あまりにリニアなモデルであることと,パワーダイナミクスを考慮しない点が課題(4つのプロセスの活動にトップの承認や支援が必要なのに)。
- 解釈主義の主要理論:マルチレベル理論(4iフレームワーク),COP,実践ベースアプローチ,非公式社会ネットワーク
- 4iモデル:個人-組織学習連結モデル(探索・活用モデルを援用)。
- 探索=feed-forwardプロセス(学生支援課が環境を見て新しい支援策を思いつく),活用=feedbackプロセス(学長が新しい支援策を制度やルーチンに入れる)
- → この2つのプロセスは4つの社会的認知プロセスとリンクしている:Intuiting,Interpreting,Integrating,Institutionalizing(有名な階段図)。
- Intuiting:専門性と想像力の間で生じるもの,言語かされにくい暗黙知を含む(なのでメタファーが使われやすい,家電としてのMac)。
- Interpreting:個人と部署間で行われる,共通言語を磨き,将来像を明らかにし,共通の意味づけをつくる段階。
- Integration:知識が実践と結びつく段階,実践によって知識が磨かれる,部署内の共通認識は実践しなければ決して形成されることはない。
- Institutionalizing:実践が構造・戦略・文化に埋め込まれる段階。トップが制度を整える。これによって他部署からのフィードバックが得られる。
- Institutionalizingは,いくつか問題があるし困難。人は自分の信念にあうものに注目し,合わないものを見過ごす。よって組織化は組織に制約を課す。
- 通常大学での変革は,先にプロジェクトがあってそれの全学展開という形を取る。もし,構成員がこの枠組みに合わない変革と見なすと,変革をしても十分に認識できない可能性がある。→ 制度化した仕組みをプロジェクト的に試す期間が必要。
- 4つのプロセスは,リニアではなく実際には断片化・不完全・混乱がある。特に時間制約とトップの介入で阻害される。
- 学習の阻害要因(特にInstitutionalizingの阻害要因):マネジャーの時間制約,専門性分業・目標不明確・メンバー-の自律性(教育機関の特徴),マイクロマネジ,心理的危険,部門間の競争,
- このモデルも,トップが好んだものが埋め込まれるという問題がある。
- 何が埋め込まれるかを決めるのは,パワーと自己関心。← 組織学種を起こすには政治力が必要。
- 2つのパワー:エピソードパワー(自己関心からの政治行動,交渉・説得)とシステムパワー(ルーチン・構造・文化)。
- 4iモデルはマルチパラダイムフレームワーク(理解に注意,基本は機能主義という見方もある)。
- COP(=アイデンティティ開発)
- 解釈主義≠何が個人の中で認識されているか,=何がグループの中で進んでいるか。
- 認知に注目して文脈を無視するリーダー=無意味な情報を集めるIRシステムを作ってしまう。ベストプラクティスを拡散するのではなく,その部署の独自の強みをつくることがリーダーの仕事。
- 新人がグループの言語を覚えるプロセス=組織アイデンティティを形成する。学科や専攻はまさにCOP。全学的なナラティブの例もある。
- ただし,実践者へのインプリが弱い。COPはどう知識を生成して共有するのか,あるCOPは他のCOPにどう影響するか,という問いに明確に答えられない。また,パワーダイナミクスも説明できない(Lave and Wengerの研究ではもともと考慮されていたにもかかわらず,後の研究はCOPの合意や統合の達成に注目してしまった)。
- eg. 高まる説明責任要求 → コンプライアンス文化をつくる(質の高いデータをつくり,詳細なレポートをつくろうとする)。→ データが意思決定に使われることはない。代わりに,エビデンスベース探究チームを作ろう(COPの1つ)。
- 内部社会ネットワーク=何らかの相互依存(共通の仕事・目的・価値観)を持つ人同士のつながりのこと。通常は非公式なもので公式命令でつくれない。
- 毎日ジムで会うメンバー同士のつながりなど。「弱いつながりを強化する」。知り合いの知り合いの助けを借りる。
- 越境構造は,グループ内でしか共有されない知識を運搬できる可能性がある。越境構造=2つの部署にいる越境者のつながり。ただし,遅延・不正確運搬(どちらも意図的・非意図的がある)のために機能しない場合もある。→ 全体越境の方が効果的(出向など)。
- 批判主義:組織学習におけるパワーダイナミクスに注目する(組織学習によって誰の関心が満たされるのか?)
- 通常,トップが組織学習の手段と構造をコントロールする。= 組織学習はメンバーの統制手段。
- 機能主義モデルは,トップの力を強化する学習となる。=トップの代わりにメンバーが学習するだけ。
- また,暗黙知が形式知されてマニュアル化されると,メンバーの持っていた強みが失われる。
- 学習する組織は自発的なものという主張 ← そもそもコミュニティに誘われる人が地位や立場で選ばれている。
- → ラーニングアリーナをつくる(場所だけでなく心理的に)。= そこでは意見をまとめない。シェアドガバナンスの委員会はその例(ビジネス化で縮小傾向にあるが)。
- → 別の方法,批判的アクションラーニング:仕事の経験を話す場。
- 機能主義と批判主義の問題:パワーの分散が必要という主張は重要だが,そうした主張はトップの力なくしてどのように組織化されるのか?という疑問に答えられない。
- 今後の研究
- テニュアシステム,シェアドガバナンス,ルースカップリング,高度専門職組織は,組織学習プロセスに大きく影響する。
- 組織改善
- 機能主義研究
- 外部情報収集:管理者,IR室,教員集団がどう情報を取ってくるか。
- 情報共有機能:知識はどう部署を超えるか。
- 知識の上方移動:現場のイノベーションがどう組織化されるか。
- 解釈主義研究
- COPなどがどう高い成果につながるのか。高い成果はデータ分析ではなく,実践者の暗黙知による(Dowd 2005)。
- 組織変革
- 4iモデルによる教職員集団の組織化。
- 教員の学習
- FDセンターの役割。

