2016/12/28

濱中淳子(2013)『検証・学歴の効用』勁草書房


  • 高卒と大卒は何が違うのか,大卒は自己学習ができる。自己学習が所得を高める。大卒の成長は自己学習によって生じていた。
    • 大学は,自己学習で伸びる人材を育てている(大学教育のキーワードは,応用,問題発見,問題解決)。
    • 自己学習ができる学生を選抜している点は検証していない。
  • 文系の所得は,企業規模と就労時間で決まる。知識能力は有意でない。会社主義・現場主義が色濃い世界。大学時代の熱心な勉強がマイナスにもなる。工学系と逆。
  • 読書離れは進んでいるが,大学は専門書を読ませることで,読書習慣の形成に貢献している。読書週間ができると,卒後の所得を高める。(大学教育の効果の部分。)
    • 大学のメリットは,自らの専門をいったん固定して行動する機会を与えること。読書の出発点としての専門書。
  • 学歴に関して言えることは,
    • 大卒の効用は増大している:賃金は大卒一人勝ち。
    • 大卒は能動的な学習ができる点で,高卒とは異質の人材。
    • 大学時代の読書経験が,経済的効用を高める。
    • 女子にとっての大学進学は,正規就職,非正規就職,配偶者所得の全てで効用がある(オールマイティ)。
    • 専門学校進学は,資格につながるなら効用がある。
    • 院卒の効用は小さいが,教育機能の潜在的有効性がある(フレームワーク思考など)。
  • なのに,(1)一部の人の効用低下発言,(2)問題を見つけたがるメディア報道によって,学歴効用低下が流されている。
  • 早すぎた高学歴化:後発効果の3つ命題(ドーア)。
    • 学校の修了証書が求職者の選別に利用される範囲が広くなる。
    • 学歴インフレの進行が早くなる。
    • 真の教育の犠牲において,学校教育が受験中心主義に傾く。

分析上の問題は,日本は賃金と昇進がリンクしているのに,選抜と読書習慣を扱っていないこと。

2016/12/16

Honeycutt, B. 2016, "Ready to Flip: Three Ways to Hold Students Accountable for Pre-Class Work"


  • Flipped=授業前がブルームの低次領域に,授業中がブルームの高次領域にフォーカスすること。
  • 事前課題は何をするかではなく,何を用意してくるかを指示する。
    • × 1章を読みなさい,ビデオを見なさい
    • ○ 1章の2つの仮説を比較できるようにしてください,ビデオを見てワークシートを埋めてきてください
  • 事前課題をaccountableにする
    • Ticket to Enter:教室に入る際に,文献やビデオの疑問点を3つ書いた紙を出す。
    • Choose a Side:事前課題が対立軸を扱う場合は,指示する側に座ってもらう。
    • Pass-the-problem cheat sheet:覚えることが多い科目の場合,最終試験に持ち込み可能な1ページ要約を作ってきてもらう(他は持ち込み不可)。友達同士でつくることを奨励してもよい。


http://www.facultyfocus.com/articles/blended-flipped-learning/ready-to-flip-three-ways-to-hold-students-accountable-for-pre-class-work/

2016/12/15

Snyder, S. 2016, A Practical Approach for Increasing Students’ In-Class Questions

Prompts to Elevate Students’ Questioning Skills

Level One

  • Contextuals
    • How was X (event, text, work, etc.) shaped by its time?
    • Where did X originate and why?
    • Who was the originator of X and what was he or she like?
  • Definitions and clarifications
    • How do you define X (word, term, idea, etc.)?
    • What does this passage, concept, etc., mean?
    • What would be a specific, concrete example of X?
  • Analyzers
    • What parts or features make up the whole and what does each part do? How do the parts contribute to the whole?
    • How is X organized and why is it organized this way?

Level Two

  • Comparatives
    • How is X the same as that?
    • How is X different than that?
    • How are these more or less similar?
    • What is the opposite of X?
  • Causals
    • What factors caused X to happen?
    • Which of these factors is sufficient? Which contributing or probable? On what grounds can we eliminate possible causes or explanations?
  • Evaluatives
    • What are the most important features of X?
    • Why do you like or dislike X (or agree or disagree with this)? How strong is the case that X is correct?
    • What criteria are best for judging X?
    • What is the best order or priority for these things and why? What is the strongest argument against X?

Level Three

  • Counterfactuals
    • How would X change if this happened?
    • How would things be different if X had not happened?
    • How would things be different if X happened to a greater (or lesser) degree? 
  • Extenders (Synthesizers)
    • How can we apply X to this set of circumstances?
    • What can we predict if X is correct?
    • What ideas should be added to X?
    • What might happen if you added this to X?

2016/12/14

Weimer, M. 2016, Why Are We So Slow to Change the Way We Teach?


  • 教育は変わりにくいデータは多数ある(7割が講義など)。
  • では,なぜ変わりにくいのか。
  • 1つは,変えるということは,人が想像する以上に難しいこと。
    • 教育を変えることは試行錯誤で進むもの。
  • 教え方を変える複雑さを過小評価している。
    • ○○をやればいいという態度がそれを助長している。寄せ集めのアイディアだけが増えて,肝心の改善する方向を見失っている。
  • 一人で取り組みすぎている。
http://www.facultyfocus.com/articles/teaching-professor-blog/why-are-we-so-slow-to-change-the-way-we-teach/

2016/12/05

藤本昌代(2005)『専門職の転職構造』文眞堂


  • 外部の集団への準拠集団選択行動が,個人にとって順機能であるか逆機能であるかは,社会構造の開放性/閉鎖性に規定される(Merton)。
    • 移動の余地が低い場合:所属組織の規範に沿わない行動は,所属集団から排除される可能性がある。
  • 業界トップの研究職の情緒的コミットメント:企業理念の浸透や終身雇用される企業内研究職共通の態度でもない。
  • 専門職が所属組織に対してコスモポリタン的態度であるといわれてきたのは,所与の条件として移動可能性の高さと専門職集団への準拠が想定されていたため。
    • 移動可能性は社会との相対性の中にある
    • 転職することで何らかのメリット(社会的・経済的地位向上,研究環境・権限・社会的意義向上)があり,それが実現可能と予測されなければ,実質的に移動可能性が高いと認知することはできない。
  • 準拠集団(reference group):人が自分自身を関連づけることによって,自己の態度や判断の形成と変容に影響を受ける集団。
  • 予期的社会化(anticipatory socialization):将来参加するであろう社会システムの価値や規範,将来付与されたり独得されたりするであろう位置や役割に関する知識や態度,技能などを学習すること。
    • 比較的開放的な社会構造の場合にのみ,予期的社会化が機能的(Merton)。
    • 比較的閉鎖的な社会構造の場合(=外部集団への移動が困難な状況):外部集団への志向的態度は所属集団から「腰の落着かない奴」として排除され,外部集団からも所属集団からも受け入れられない境界人となる(=逆機能)。
    • つまり,準拠集団選択行動が個人にとって順機能になるか逆機能になるかは社会構造が規定する。
  • 研究者の移動
    • 水平移動:基礎科学系研究者の多様な方面への移動(国立大学,政府系研究機関,ベンチャー)
    • 垂直移動:同分野でのヒエラルヒーでの上下移動(学界・産業界での地位の移動)
  • 相対的不満(relative deprivation):自己の評価に対する基準を他者に合わせることで,自己が不当に評価されていると感じることを示す準拠集団概念。
  • A社の研究者の場合,学界は受け入れられたい集団としての規範的準拠集団であり,自己の地位を確認する比較的準拠集団でもある。
    • しかし自己の地位の非一貫性を痛感させられる場合,彼らは学界を比較的準拠集団とはせず所属組織を産業界における比較的準拠集団として位置づけ,価値の内面化が起こる。
    • 応用科学系研究が学界で低位に置かれる(=研究者が共有する学問的序列意識)→ 研究者たちは相対的不満をもつ。
    • → 研究者の所属組織への愛着には,研究者が共有している学問的序列意識が影響を及ぼしている。
  • 組織の地位は研究者にとって凝集性を高める要素。
  • 移動可能性が低いと予測された場合,研究者といえども組織に依存的にならざるを得ず,組織は存続のための価値客体になる。
  • 外部集団を見ている専門職であるからこそ,自己の相対的な地位が,業界での地位だけではないことを認識している。
    • 業界での地位の方が学界での評価よりも高いことを知る → 2つの所属組織のうち,自尊感情を高める方をより重要な準拠集団として選択する。
    • ← ローカル・マキシマムという非一貫的状態は研究者の自尊感情を脅かし,認知的不協和を起こすものであるため。
  • プロフェッションの定義が時代と共に増加する新しい職業を包括できずに,常に定義づけを堂々巡りの中で行ってきており,その雛論に過度に集中しすぎた。
    • スペシャリスト(⇔はジェネラリスト):ある1つの職務に精通している人。知識・技術の習得形態の違いを表現しているのであって,職業人を指す語ではない。
    • エキスパート(⇔アマチュア):熟練者を指す。知識・技術の習得レベルの違いを表現しており,これも職業人を指す語ではない。
    • オキュペーショナル・プロフェッション(⇔ステイタス・プロフェッション):(1)体系化された専門知識や技術の習得,(2)仕事へのコミットメント,(3)同僚への準拠,(4)職業団体による専門分野の評価システムの存在,(5)標準化されない仕事。
  • 直接生産に結びつかないプロフェッションの基礎をなす科学技術の導入は,民間にゆだねることが不可能。
    • → 最大の財源をもつ政府がその導入のためのスポンサーになる。
    • → 多くのプロフェッションは官僚制という巨夫な機構により,その機構の一部として導入されることが多くなる
    • → 科学自体が講座制という官僚機構の中で育成される
    • → 官で養成して民に放出するをくり返す。(石村 1969:227)
  • マイナスのプロフェッション:人々の不都合に対処するプロフェッション
    • 専門職に援助を求めざるを得ないような不都合がある場合に,クライアントが救済を求めるため,その秘儀的な専門知識により支配関係が成立しやすい。
    • ⇔ プラスのプロフェッション:クリエイティブの仕事。
  • プロフェッションは組織に雇用されていても,(1)自己のアイデアを実行する自由,(2)仕事それ自体,(3)専門分野の深化,(4)役職にこだわらず専門を生かす,(5)というように専門分野を志向しており職業人性の強さを示している。
  • 日本のプロフェッション概念はヨーロッパのようにキリスト教という文化的な背景がないため,キリスト教を背景としたエートスは輸入されず,制度だけが模倣された。当時,社会的地価位が低かった医師や弁誰士の職業威信は,政府の力によって確立されたといっても過言ではない。
  • 科学は哲学からの自立に際して唯一性・普遍性が重要な要素であったため,具体的な技術を厳しく峻別した。
    • エコール・ポリテクニク=工学の基礎として科学を教えるという現在の工学教育の原点となるカリキュラムを考案。→ 科学と技術の一体化というもくろみは,基礎は科学で技術はその派生に拍車をかけた。
    • → アメリカで応用科学を確立。
    • アメリカの研究者は大学という組織より,専門分野に忠誠心をもっている(=所属組織より専門職集団が重要)。アメリカの科学は経験から学ぶことで発展してきたが,アメリカの研究者たちはヨーロッパの伝統的価値意識によって確立された学問に対抗するためにプラグマティックな業績を重ねることで,伝統による正統性や名声に代わるものを手に入れようとした。
    • 日本の植民地化を防ぐために,科学・技術を導入 → 世界で最初に総合大学(東京帝国大学)に工学部を組み込んだ。ヨーロッパの大学が技術を下位に置き,工学部の位置づけを試行錯誤している間に,スムースに科学と技術の結合を行った。
    • → 専門的教育と実践的教育のサンドイッチ方式(工場実習に多くの時間を割いて,技術の習得を重視したカリキュラム)。
    • → 工部大学校:1885年の工部省の廃省に伴い東京帝国大学の工学部と統合され,それにより分科大学として帝国工科大学となって文部省に移管された。
    • → 工学部は帝国大学の他学科の影響を受け,教養主義的な学理伽偏重傾向の工業教育となった。実践できるエンジニア教育が幕を閉じ,工業教育がアカデミズムの中で下位に置かれる。
    • → 原爆による戦争終結+スプートニクショック:アメリカで基礎科学が技術
    • 革新をもたらす素因になるという認識。戦後はヨーロッパが疲弊していたため,基礎科学系研究の源泉となり得ず,アメリカは自国による基礎科学支持の科学政策パラダイムを打ち出した。
    • → 日本の西洋科学輸入:体系化された学問が導入されたために,学問とはそういうものであると誤解してしまった。具体的な問題を解くことによって新しい学問分野を開拓しようとする態度はほとんど見られない。(奥田 1996)
  • 潜在的な移動可能性とは,移動することが可能であると予測できることであり,現実的に転職行動を起こすこととは別。
  • 日本の大学や政府系研究機関は,研究したらそれで満足してしまって,それ以上アイデアがない。アメリカの大学は「こちらにはこういう研究があるが,あなたの研究所とこのような展開をすれば,事業につながるのではないですか」といった具体的なアイデアとセットで売り込んでくる。
  • 人材の流動性を抑制している要因のひとつとして年金制度などの社会保障に関するポータビリテイの悪さがある。
  • 電産型賃金体系:基準労働賃金と基準外労働賃金とに分類。基準労働賃金=生活保障給・能力給・勤続給の3つで構成。
    • 職位が上昇しても賃金が上がらない:肘掛付きの椅子を与えるなど,シンボルで職位の上昇を示す工夫をする。
    • 勤続年数20年未満で他社へ移動することは,退職年金受給資格を失う。

2016/12/02

Dee, J. and Leisyte, L. (2016) "Organizational Learning in Higher Education Institutions: Theories, Frameworks, and a Potential Research Agenda," in Paulsen M. (Ed.) Higher education: Handbook of Theory and Research, vol.31, 275-348.


  • 組織学習:部門が組織にとって有益と認識した知識を組織が学ぶ。→ 知識の創造と活用に関する理論。→ 変革,効率改善(改悪),エンパワーメント(抑圧)を引き起こす+職場の社会化,意味づけ,影響力にも関与する。
    • 学内のあらゆる活動を意味あるものにできる:認証評価などのルーチン,教職員研修,新人の社会化など。
    • にもかかわらず研究蓄積が少ない。← これは高等教育研究が過度に機能主義パラダイムに立つため。= 組織学習を効率性・効果性促進ツールととらえる。→ マネジャーによる組織学習メカニズムのコントロールに注目。
    • このトレンドは,高等教育機関をビジネス組織への加速ツールとなる。
      • eg. 80年代の財政問題
        • 財源や学生を巡る市場的競争を促進 → 民間的運営が普及 → 非常勤職員の増加 → 本部機能の膨張 → 3つの深刻な問題。
          1. 大学の中心的価値を知識創造・公教育から収入増大へシフトさせた,
          2. プロセスと成果の標準化を進めた(教育研究のイノベーションを阻害した),
          3. 執行部と教員集団間の信頼関係を壊した。
  • 機能主義の組織学習の効果
    • データによる意思決定の改善,実践の改善に役立つ新しい知識の導入,合意形成を促進する共有されたメンタルモデルの構築。
    • → 解釈主義も考慮:異なるグループ間の意味づけの理解,組織アイデンティティの形成と保持,職場における価値とコミュニティの感覚づくり,パワーダイナミクスの理解もできる。→ 異なるグループサイロ間で効果的なコミュニケーションをつくれる。
  • 大学=異なる目的を同時に追求=関係者間での合意形成困難。
  • 大学で組織学習が困難な要因:高度な専門性と部署分断,個人の成果で評価,成果に対するフィードバックが貧弱。(分権化,部局自治もサイロ指向を促進,組織統合・協働・学習を阻害。)
    • 大学はそもそもフィードバックループが困難な組織特徴。
    • → (1)学際・プロジェクト活動,(2)自己点検・認証評価,(3)ベンチマーキング,(4)FD・SD・COP,
    • IR室=組織学習の草の根リーダーとしての能力がある。(実際は単にデータ担当部署としか認識されていないが。)
    • IR室は意思決定支援から組織学習促進へシフトすべき:それには,データに対する認識転換が必要=判断の道具→多様な集団間で意味や解釈をする道具
  • 組織学習の関心:
    • 機能主義:個人の学習は組織学習の代理人(組織目的達成に必要な知を求め,それを保存・拡散する。)+学習を促進するメカニズム:IRなど。
    • 解釈主義:学習は対話と相互作用を通じて起こる⇔学習は個人の頭の中で起こる。
    • ポストモダン:学習は影響力の装置で,影響力の小さい部局を周辺化・沈黙化させる。= 学習は全員が同じ考えを持つ手段 → 個人の力を促進する自由な学習になるべき。(ポストモダンは基本的に,集団的な取組に対して懐疑的。)
  • 学習主体:
    • 機能主義:個人かトップ(組織は無生物)→ 個人の和以上の共有知(でなければ退職したらなくなってしまう),行動,メンタルモデル,規範,価値観に保存される(逆に個人が学習してもそれに反映されないものは組織学習でない)。
      • 行動主義者は,組織が内外の刺激に反応できることが学習。
      • 今後の研究課題:個人の学習はどう組織の学習を規定するか,組織の学習はどう個人の学習に影響するか?
    • 認知変化=組織学習,行動変化=組織適応で分離する → 学習せずに行動変化する現象を説明できる(はやりの経営手法の導入など)。
      • この場合,学習は直ちに行動変容にならない。将来の変化への柔軟性を獲得するもの。
      • 学習が組織のメンタルモデルを拡大・深化させるなら,学習は組織の有効性を高める力を持つ。
    • 解釈主義:COP
  • 学習の牽引要因:
    • 機能主義=獲得,解釈主義=参加
    • 機能主義=意図的 VS 解釈主義=生得的
      • → 大学は部局分断なので学習装置なしでは学習できない。
      • → 意図できてなくても付随的に学ぶことはある(認証評価など)。
      • COPは意図的か発生的かは意見が分かれる・どちらもある。
  • ナレッジマネジメント:
    • 機能主義:競争力≠組織の知識,=知識を問題に合わせて再構築する組織の能力。(知識があっても問題に適用できなければ意味がない。)
    • 解釈主義:暗黙知→形式知は問題がある。= 知識を文脈から切り離すと実用性が失われる。
      • マニュアル化しても使われない,マニュアルよりも修羅場ストーリーの方が学習になる。
    • 知識を形式・暗黙ととらえるのがおかしい,両者は同じ知識の両側面(自転車にのる知識と同じ)。教育はまさにこの種の知識。
    • 批判主義=暗黙知→形式知はマネジャーによる知識の盗用。専門職から得た知を低賃金労働者にさせようとする。
    • Bernbomの定義:知識の発見,その加工と適用,組織内でのその共有と活用。→ 組織学習を支援する不可欠な組織装置。← IR室はそれになりうる。= 知識は組織の「資産」。
    • センゲのメンタルモデルとワイクのセンスメイキングは基本的に同じ。学習する組織とダブルループ学習は基本的に同じ。
  • 機能主義の主要理論:ダブルループ学習,学習する組織,探索・活用枠組み,情報処理モデルの4つ。
    • ダブルループ学習:メンバーから大きな抵抗を招く活動。← 外部からの介入がDLを起こすには不可欠(外部評価など)。
      • DLは常に有効とは限らない。問題は,思考に偏って実践になりにくいこと。
      • これを避けるには,トリプルループ学習(ダブルループの学習を組織がどう学んでいるかの学習)が有効。(本当?)
      • DLを重視することは組織変革に偏るということ,シングルループも漸進的変革には重要。← 実際はどちらの学習による変革かはわからない可能性が高い,変革の最中は自分たちの活動がどの方向へ向かっているかわからない場合が多いので。さらに,ある人の漸進的変革は他部署から大変革に見える。(これらも同じ変革の両側面)。
      • DLの問題:(1)エラー検知型学習で,新しい知識創造に言及していない,(2)外部刺激で発動と言いながら,既存のメンタルモデルにとらわれている誰が組織内から必要性を言い出すかという矛盾。
    • 学習する組織:5つの取組が行われれば,組織学習が起こる。
      • 大学はルースカップリング組織なので,5活動が学内のボトルネックを探す際に有用。(システマティックでないのによく研究で使われる。→ 流行研究。)5取組の調査票を用いた実証研究もある。
      • 5活動は産業に近いので教員は好まない?
      • 構成員は自由な存在ではなく,エージェントとして学習するので,この活動はトップの力を強める作用がある。
    • 探索・活用:トップが戦略をつくる時,学内・学外双方の知識のバランスを取らないと実行可能な改革戦略にならない。
      • 学外知識の獲得=探索(=収集,リスクテイク,実験,柔軟性,発見,イノベーション),学内知識の適用=活用(=修正,選択,産出,効率性,実践)(March 1991)。両者は異なる学習メカニズムを持つ。
      • バランスを欠く=迷信学習,→ これを避けるには,構造分離が有効=ある部門は探索,ある部門は活用に特化する。(本当?コンフリクトをまねくのでは。)← 一例は企業家大学:共同研究に特化する学際部門と,伝統的教育に特化する学部部門に分離する。
    • 情報処理モデル(Huber):外部からの情報獲得+内部知識への統合=組織を機能させる新知識の創造
      • 4つのプロセス:情報獲得,情報拡散,情報解釈,組織的記憶(それぞれに対応するシステムを作る必要がある)。基本は経験学習モデル。
      • 制度理論は組織同型化を指摘するが,他大学の模倣は深刻な学習能力低下を招く。
      • 特に大学は,基本的にインプットはうまいが,拡散は苦手,保存にどの部署も責任を持たない。また,弱小組織は情報拡散が届きにくい。対応は,部局間対話とジョブローテーション。
      • 組織学習は組織変革と結びつきやすいが,日常改善の学習としても重要。
      • このモデルは学習プロセスを描写する点が魅力,ただし,あまりにリニアなモデルであることと,パワーダイナミクスを考慮しない点が課題(4つのプロセスの活動にトップの承認や支援が必要なのに)。
  • 解釈主義の主要理論:マルチレベル理論(4iフレームワーク),COP,実践ベースアプローチ,非公式社会ネットワーク
    • 4iモデル:個人-組織学習連結モデル(探索・活用モデルを援用)。
      • 探索=feed-forwardプロセス(学生支援課が環境を見て新しい支援策を思いつく),活用=feedbackプロセス(学長が新しい支援策を制度やルーチンに入れる)
      • → この2つのプロセスは4つの社会的認知プロセスとリンクしている:Intuiting,Interpreting,Integrating,Institutionalizing(有名な階段図)。
        • Intuiting:専門性と想像力の間で生じるもの,言語かされにくい暗黙知を含む(なのでメタファーが使われやすい,家電としてのMac)。
        • Interpreting:個人と部署間で行われる,共通言語を磨き,将来像を明らかにし,共通の意味づけをつくる段階。
        • Integration:知識が実践と結びつく段階,実践によって知識が磨かれる,部署内の共通認識は実践しなければ決して形成されることはない。
        • Institutionalizing:実践が構造・戦略・文化に埋め込まれる段階。トップが制度を整える。これによって他部署からのフィードバックが得られる。
      • Institutionalizingは,いくつか問題があるし困難。人は自分の信念にあうものに注目し,合わないものを見過ごす。よって組織化は組織に制約を課す。
        • 通常大学での変革は,先にプロジェクトがあってそれの全学展開という形を取る。もし,構成員がこの枠組みに合わない変革と見なすと,変革をしても十分に認識できない可能性がある。→ 制度化した仕組みをプロジェクト的に試す期間が必要。
      • 4つのプロセスは,リニアではなく実際には断片化・不完全・混乱がある。特に時間制約とトップの介入で阻害される。
      • 学習の阻害要因(特にInstitutionalizingの阻害要因):マネジャーの時間制約,専門性分業・目標不明確・メンバー-の自律性(教育機関の特徴),マイクロマネジ,心理的危険,部門間の競争,
      • このモデルも,トップが好んだものが埋め込まれるという問題がある。
      • 何が埋め込まれるかを決めるのは,パワーと自己関心。← 組織学種を起こすには政治力が必要。
        • 2つのパワー:エピソードパワー(自己関心からの政治行動,交渉・説得)とシステムパワー(ルーチン・構造・文化)。
      • 4iモデルはマルチパラダイムフレームワーク(理解に注意,基本は機能主義という見方もある)。
    • COP(=アイデンティティ開発)
      • 解釈主義≠何が個人の中で認識されているか,=何がグループの中で進んでいるか。
      • 認知に注目して文脈を無視するリーダー=無意味な情報を集めるIRシステムを作ってしまう。ベストプラクティスを拡散するのではなく,その部署の独自の強みをつくることがリーダーの仕事。
      • 新人がグループの言語を覚えるプロセス=組織アイデンティティを形成する。学科や専攻はまさにCOP。全学的なナラティブの例もある。
      • ただし,実践者へのインプリが弱い。COPはどう知識を生成して共有するのか,あるCOPは他のCOPにどう影響するか,という問いに明確に答えられない。また,パワーダイナミクスも説明できない(Lave and Wengerの研究ではもともと考慮されていたにもかかわらず,後の研究はCOPの合意や統合の達成に注目してしまった)。
      • eg. 高まる説明責任要求 → コンプライアンス文化をつくる(質の高いデータをつくり,詳細なレポートをつくろうとする)。→ データが意思決定に使われることはない。代わりに,エビデンスベース探究チームを作ろう(COPの1つ)。
    • 内部社会ネットワーク=何らかの相互依存(共通の仕事・目的・価値観)を持つ人同士のつながりのこと。通常は非公式なもので公式命令でつくれない。
      • 毎日ジムで会うメンバー同士のつながりなど。「弱いつながりを強化する」。知り合いの知り合いの助けを借りる。
      • 越境構造は,グループ内でしか共有されない知識を運搬できる可能性がある。越境構造=2つの部署にいる越境者のつながり。ただし,遅延・不正確運搬(どちらも意図的・非意図的がある)のために機能しない場合もある。→ 全体越境の方が効果的(出向など)。
  • 批判主義:組織学習におけるパワーダイナミクスに注目する(組織学習によって誰の関心が満たされるのか?)
    • 通常,トップが組織学習の手段と構造をコントロールする。= 組織学習はメンバーの統制手段。
      • 機能主義モデルは,トップの力を強化する学習となる。=トップの代わりにメンバーが学習するだけ。
      • また,暗黙知が形式知されてマニュアル化されると,メンバーの持っていた強みが失われる。
      • 学習する組織は自発的なものという主張 ← そもそもコミュニティに誘われる人が地位や立場で選ばれている。
      • → ラーニングアリーナをつくる(場所だけでなく心理的に)。= そこでは意見をまとめない。シェアドガバナンスの委員会はその例(ビジネス化で縮小傾向にあるが)。
      • → 別の方法,批判的アクションラーニング:仕事の経験を話す場。
    • 機能主義と批判主義の問題:パワーの分散が必要という主張は重要だが,そうした主張はトップの力なくしてどのように組織化されるのか?という疑問に答えられない。
  • 今後の研究
    • テニュアシステム,シェアドガバナンス,ルースカップリング,高度専門職組織は,組織学習プロセスに大きく影響する。
    • 組織改善
      • 機能主義研究
        • 外部情報収集:管理者,IR室,教員集団がどう情報を取ってくるか。
        • 情報共有機能:知識はどう部署を超えるか。
        • 知識の上方移動:現場のイノベーションがどう組織化されるか。
      • 解釈主義研究
        • COPなどがどう高い成果につながるのか。高い成果はデータ分析ではなく,実践者の暗黙知による(Dowd 2005)。
    • 組織変革
      • 4iモデルによる教職員集団の組織化。
    • 教員の学習
      • FDセンターの役割。


2016/12/01

Gioia, D. and Thomas, J. (1996) "Identity, Image, and Issue Interpretation: Sensemaking during Strategic Change in Academia," Administrative Science Quarterly, 41(3), 370-403.

  • 今日の環境変化=意図された変化のために,高等教育機関がビジネス指向になっている。
    • 戦略的と言いながら,ビジネスのような戦略的ではない。
    • これは利益のようなベース指標がないことも関係する。=何が大学の競争力かの判断が主観的にならざるを得ない。+ ランキングが台頭。
    • → 組織イメージが重要な戦略要素になる(?)
      • イメージ・アイデンティティは,先行研究が指摘するほど強固でない。(戦略が変わってもアイデンティティは変わらないか?)
      • 変化を起こすには,構成員の解釈枠組みを変える必要がある。
      • = 新ビジョンに合致する新しい取組(=既存解釈と不整合の取組)は既存イメージ・アイデンティティを揺るがす。
  • イメージ・アイデンティティのシフトと,それが問題解釈に果たす役割が本論の中心課題。
    • RQ:戦略的変化に取り組む際,TMTはどのように問題を解釈するのか?
    • TMTの追う戦略・情報処理構造は,センスメイキング活動に影響される,
    • TMTの組織アイデンティティ解釈は,組織レベルの課題を解釈するのに用いるレンズによって構築される,
    • 組織課題は,機会/脅威で認知されるのではなく,戦略的/政治的カテゴリーによって認知される。
  • 外部環境だけでなく,内部文脈も課題解釈プロセスに影響する。
    • 戦略=組織の意図の宣言。← TMTの重要課題の解釈に影響されたもの。
    • → 戦略=組織がイナクトした環境の重要な要素。
  • イメージ・アイデンティティ=認知レンズ
    • ここで注目するのは,TMTの組織アイデンティティ。特に,戦略変化の文脈における組織アイデンティティ。
    • → 組織アイデンティティは,TMTの情報処理プロセスや重要課題解釈を移す鏡となるから。
    • 戦略変化=通常,TMT+メンバーの解釈枠組み変更を意味する。
  • 問題の認識
    • 戦略的か非戦略的で重要なものの2カテゴリーで認識。
  • TMTの解釈枠組み=間主観的に構築された物事を理解する枠組み。
  • 研究デザイン
    • 3名のTMT,6ヶ月面談,戦略変更に関わった期間,エスノグラフィ,1名質問者でもう1名は記録者,24時間ルールで初期分析,他大学の11TMT周辺スタッフも調査,会議資料等も収集。
    • 分析カテゴリーの設定が詳細。
    • 印象分析(Van Maanen 1988)。
  • 課題解釈
    • 戦略的/政治的の2分類,戦略的=最も重要の意。
    • 戦略的課題:トップ10研究大学につながると解釈した課題。← ずいぶん主観的(=ビジネス型の情報処理ではない)。← にもかかわらず,各部局を平等に扱うなどはしない。
      • 戦略的課題:本人たちは3本の支柱原理(公的財源増加,私的財源増加,戦略プラン)を主張しているにもかかわらず,主観的情報処理。
    • 政治的課題:トップ10に関連するが,競争的な関心に関するもの。たとえば,学生参画。
      • トップ10達成に学部がたいした役割を果たさなくても,学部を無視できない。
      • 学内外の関係者がトップ10構想を受け入れないと,戦略変更の努力は実を結ばない。→ TMTは影響力のある言葉を選んで使用する。
    • 戦略的カスケード
      • マイノリティの入学=政治的課題,→ 将来急増するマイノリティ入学への対応と定義して,戦略的課題に。
    • トップ10=戦略的変化を生み出すシンボルとして機能。← TMTも構成員も曖昧な定義であることを認知(現実的でないという声も)。
    • 組織アイデンティティ:TMTは現状を保守的と判断して,トップ10をそれを動かすてことして使用。
  • ここまでの結論
    • アイデンティティとイメージは課題解釈に個別に関係する。
      • トップのイメージは政治課題解釈に関係する。
      • 望ましい将来像は戦略的課題解釈に関係する。
  • センスメイキング
    • TMTが問題を重要と認識する際に注目すること:戦略と情報処理構造
    • 戦略:既存の戦略が,何に注目するかを特定している(それはそれですごい)。戦略は注意を引くためのデバイス。
    • 情報処理構造:データベースの意思決定をする(以前は直感の意思決定)。
  • ここまでの結論
    • 戦略と情報処理構造が問題解釈に関係する。
      • 戦略は,戦略的課題の解釈と関係する。
      • 情報処理構造は,戦略的課題・政治的課題両方の解釈と関係する。
    • 戦略と情報処理構造が組織アイデンティティ・イメージに関係する。
    • イメージとアイデンティティの認識は,センスメイキングと課題解釈の関係を部分的に媒介する。


  • 含意
    • まずアイデンティティが変わらなければ,組織の中心的な質が変わらない。
      • 望ましい将来像は,既存のアイデンティティを変えることができる。
      • ← イメージとアイデンティティの関係。アイデンティティ形成装置としてのイメージ。
    • TMTは組織外よりも組織内のセンスメイキングによって解釈している。
    • 課題が意図的・主観的変化をつくるなら,基盤的な組織特性が変わらないといけない。
    • 構成員が望ましいと思う将来像を示せれば,変化につながる。