本書は、医学部におけるPBL教育の実践事例を紹介したものである。しかし、成人教育論を簡潔にまとめたものとしても大変優れた面を持っている。
以下の5点が、なぜPBLかの理由。(1)関連づけによる定着率(学習効率)の向上、(2)少人数グループ学習による対人関係教育、(3)将来働く現場に直結、(4)能動学習による生涯学習力の獲得、(5)成人学習論に合致。
Knouwlesの成人教育の5つの前提は、(1)自己概念:人間は成熟するにつれてその自己概念が依存的人格の自己概念から自己主導性を持った自己概念へと変わっていく、(2)過去の経験:成人は経験を蓄積させていくが、その経験が学習の豊かなりそーすになる、(3)学習へのレディネス:成人の学習へのレディネスはその成人の社会的役割をめぐる発達課題に密接に関わるものである、(4)学習の導入:人々が成熟するにつれて時間的概念に変化が現れる。将来的に知識を適用しようとする考え方から差し迫った場面に適用しようとする考え方への変化であり、成人は学習において教科中心的よりも問題解決中心的である、(5)成人は外的要因よりも内的要因によって学習への動機付けを得る。
社会的学習理論では、行動が個人要因(既得の知識・態度)、環境要因(他者のアドバイス、学習促進・阻害因子)、行動要因(学習活動)の3つの相互作用で決まる。社会的学習のプロセスは、注視(attention)、概念記憶(retention)、運動再生過程(motor reproduction process)、動機づけ過程(motivational process)。
自我は心的・内的エネルギー、自分は社会の中での位置づけ、自己は自らの心理的スクリーンに自分とはこういうものだと思い描かれているもの。
SDLは自己学習、自己主導型学習、自己決定学習と言われるが、医学教育では自己主導型学習というべき。
SDLの3つの立場は、(1)成人学習者が学習プロセスの中でSelf-diredtedになる能力を伸ばすことが学習の最終目標にある(Knowles)、(2)SDLの中核に認識変容学習をおくことを最終的に目指すべき(Mezirow)、(3)SDLに統合された解放のための学習と社会行動の促進を学習の最終目標とする(Freire)。2と3が自己決定学習(学習の社会的文脈を重視)、1が自己主導型学習。
PBLやSDLはポートフォリオ評価(=自己評価)がなじみやすい。