2019/01/21

安藤史江・杉原浩志(2011)「組織はどのようにアンラーニングするのか?」『組織科学』44(3),5-20

  • 環境変化が大きいほど、大規模な組織アンラーニングの必要性は増し、旗振り役としてのトップに対する期待も高くなる。
    • ← トップ主導での取り組みが望ましい組織アンラーニングをどのように可能にするのかのメカニズムは不明。
  • 組織アンラーニング(組織の学習棄却):時代遅れになったり組織や人を誤った方向に導く知識を、組織が捨て去るプロセス(Hedberg 1981)。
    • 規範、価値、準拠枠、認知構造、世界観、基本的仮定も対象。
  • これまでの研究は、ルーチンより深く埋め込まれた対象物に向けがち。何を捨て去るかについては議論されていない。
  • 棄却と置き換えは別の活動と考える。(← ここでは棄却のみをアンラーニングとする)
    • 棄却は置き換えの基盤になるが、可能性を高めるに過ぎない。
    • 棄却を伴わない知識獲得も多い。
    • 棄却と置き換えが同時に行われる場合もある。
    • 棄却されても元の状態に戻り、置き換えられないこともある。
  • Akgün et al.(2007):アンラーニングの対象はルーチンと信念(=使用理論 ⇔ 信奉理論(組織が表向き掲げる概念))。
  • Tsang and Zahra (2008):ルーチンこそ、組織の行動的な側面と認知的側面を統合しうる概念。
  • Feldman and Pentland(2003):表向き(原理原則的)ルーチンと、遂行的(実際に使用され、特定の場所や時間、行動に粘着性がある)ルーチのがあり、後者が棄却されないと元に戻ってしまう。
  • 組織の共有されたメンタルモデル:組織ルーチン+世界観(組織価値、組織のものの見方)(Kim 1993)。→ 組織の共有されたメンタルモデルの変化とメンバー個人のメンタルモデルの変化がリンクするほど、置き換えが生じやすくなる。
    • ← アンラーニングのプロセスを深く記述すると、個人の新年の変化と組織アンラーニングの関係をみなければならない。
  • 3つのアンラーニング対象:(1)表向きの価値・ルーチン(慣性弱い)、(2)遂行的な価値・ルーチン(慣性強い)、(3)メンバーのメンタルモデル(組織アンラーニングの成否を握る)
    • 組織はこの3つの対象全ての棄却を同時に行うのか?段階的なのか?後者ならどのようなメカニズムか?
    • トップのイニシアティブ研究は、アンラーニング成立との関係をブラックボックスにしてきた。
  • 事例の考察
    • 段階的アンラーニング:トップ交代→表向き価値・ルーチンの棄却、従業員の新体制への信頼感希薄・受け身のまま→表向き価値観変化が成立、遂行的価値・ルーチンの変化発生→一般職員変化に施設長が気づいて棄却→遂行的価値・ルーチン下で学習活動活発化、トップのレッテル貼りから脱却。
    • 段階的=足踏みがあった:一般職と管理職で棄却レベルが揃った時に変質が生じた。
      • 先行研究でも棄却が元に戻る時は、ミドルが自己防衛意識から脱却できず、規則権益を守ろうとした時。
    • 直接の上位層の棄却が重要。
    • 階層間でアンラーニングの差がギャップとして現れ、それを解決するために段階的になった。

2019/01/07

谷川嘉浩(2017)「効果的なファカルティ・ディベロップメントの条件を考察する」『人間・環境学』26,107-118


  • 適応よりも適応力(デューイ):現状に安定しない未熟性が、その力をつける主要な条件。
  • 柔軟な適応力の涵養においては、注意を援用できる。
    • 自動的注意:自己を機械的に没入させる注意(意識的な努力は一切ない)
    • 反省的注意:目前の対象と紐づく目標と、その背後にある間接的目的を前提とする。
      • そこには、間接的目的に紐づいた関心(対象と南からの繋がりの感覚を生じさせるもの)が必要。
      • → 仕事(社会生活の営みを実験室で再現する活動)を教育に持ち込むべき。
  • 注意を向けると対象に関する感覚が生じる。
    • 正常な感覚は、なすべき活動を方向づける手がかりとして働く(=反省的な探求の方向性を決める手かがり → 感覚の相対性への注意が需要)⇔ 教室内の感覚観察:感覚の享受が自己目的化。
    • 感覚:活動を方向づける手がかり ⇔ 思考:活動の目的・計画、実現の手段に関する手がかり → 感覚と思考の協働で、持続的な活動になる(問いや疑問を通じて自分の行為と想像をコントロールする)。
  • クラフツマン(セネット):各々の対象に没入しながらも、遠くの目的に配慮しつつ、反省的に試行錯誤する態度が見出せる人。
  • 教材への関心があれば、自動的注意は生じるが、反省的注意は生じない。教材に固有の魅力が必要。⇔ 講義を面白くしたり罰則をつけたりすることで注意を作る。
    • 教材を無理に興味深く見せようとしない。実在する繋がりを実感させることで、教材を面白くすることが教師の役割。
  • FDで涵養すべきものは、反省的注意を持続的に働かせる習慣。
    • それには、共同体を要素の加算ではなく、何らかの全体論的な見方が必要。

2019/01/06

松下佳代(2017)「学力とは」『日本労働研究雑誌』681,55-57


  • 学力論争に見る学力論
    • 第1期:読み・書き・計算などの「基礎学力」と新教育が めざす「問題解決能力」との関係、戦後新教育がもたらした学力低下への批判とそれへの反論が争点。
    • 第2期:全国学力テスト(1956〜1966)で計測されるもの=学力ではなく、計測が意味をもつ条件として教育内容の系統化が不可欠である主張。広岡の「知識・技能」「態度」の三層学力モデルにおいて態度が中核に置かれ、態度への教育的介入の是非をめぐる態度主義論争。
    • 第3期:高度経済成長による生活や地域の変化・科学技術の進歩にあわせた「教育内容の現代化」→ 学力形成を人格発達の中に位置づけることを主張する立場 VS 学力形成を教育内容(科学的概念)の獲得に限定する立場。言い換えると、学力の主体的側面(学力が主体においていかに形成されるのか)を重視する立場 VS 学力の客体的側面(学力の中身として何を教えるのか)を重視する立場の対立。
    • 第4期:新学力観(=社会の変化に対応していける「自己教育力の育成」への転換)をめぐる論争:「関心・意欲・態度」を評価の観点の最上位にする立場 VS 基礎的な知識・技能の重要性を主張する立場 or 批判的な学び方の学習を主 張する立場(学力より学びに焦点化)。
    • 第5期:学力水準の低下・学力格差の拡大:本当に低下?その要因は?
  • 学力概念に関する立場
    • 政策用語としての学力をそのまま受容し使用する。
    • 学力を限定的に使用し、学力データにとどめるか、学びに焦点化する。
    • 学力の多義性や曖昧さの問題を視野に入れながら、その肥大化をコントロールする。
      • 学力は構成概念(実在しない)
      • 教育社会学は、学力データと学校内外の変数をつなぎ、格差の形成要因や 社会的影響を見た。
      • 学力そのものにはふみこまず、能力シグナルに議論を限定することで成功を収めた。
  • 学力の定義と何らかのモデルがなければ、学力データの前提となっている学力調査をデザインすることすらできない。
  • 教育社会学や教育経済学は事実を扱う学問であるの に対し、教育学は事実だけでなく価値も扱う学問。
    • 教育学は、さまざまな能力の中で何を学力をみなすべきなのか、何を測定や評価の対象とすべきなのか、という価値に関わる議論から逃れられない。

2019/01/04

山内祐平(2018)「教育工学とアクティブラーニング」『日本教育工学会論文誌』


  • ALの定義:読解・議論・作文などの活動において,分析・統合・評価といった高次思考過程への関与によって,聴講と比較して積極的に参加する学習。
  • ALの方法
    • レベル1:知識の共有と反芻に関する方法:ミニットペーパーなど
    • レベル2:葛藤と知識創出に関する方法:ジグソー法など
    • レベル3:問題の設定と解決に関する方法:PBLなど
  • アメリカ高等教育でのALの意味:多様な学生の学習成立のための学習保障
    • ⇔ 日本:時代に対応した高度な能力を育てるための方法(=レベル3)
  • 今後の研究課題
    • 授業:単元・科目単位の研究のみで,それらをどうつなげてカリキュラムの質を担保するかの研究がない。授業設計に必要な能力や育成方法,教師の成長研究もない。
    • 評価:高次思考過程が学習者に内面化され,他の領域に転移できるようになっているかについて評価する方法,社会情動的スキルに関する評価研究がない。
    • 環境:環境と学習活動のセットで成果を確認する研究はあるが,空間が持つアフォーダンスと生起する行為の相互関係に着目するミクロな研究がない。
    • 支援:教員の専門性向上に関する体系的な研究がない。

2019/01/02

塩野宏(2006)「国立大学法人について」『日本學士院紀要』60(2), 85-83

  • 経営協議会と教育研究評議会は法人の組織で、審議機関≠意思決定機関。従前の評議会方式とは違う。教授会は学校教育法上の大学の機関。
  • 学長と別に法人の長を置くと、外部権力の介入の余地を残す。
  • 法人と国の関与
    • 法人化によって、法人と国の関係は法律関係になった=大学の業務に関する国の行政的関与について争いが生じた場合、裁判上の救済を求められる。
    • 法人法の規律の仕方から考えて、権力的関与は法理の根拠が必要。関与法定主義が採用されていると解釈でき、大学自治の観念に適合的。個別の関与手段には、学長任命権、中期目標策定・認可、大学評価権、財政権がある。
    • 今後の関与手法:どのような評価基準で大学評価されるか。委員が自己見解に固執しても、実質が文科省に委ねられても、大学の方向を左右する。
  • 大学が個性を発揮する:法人法で達成するものでないが、規律密度の薄いため促進された。
    • ただし、一般に日本の行政法規は規律密度が薄い。これは、行政の裁量制確保として批判される。しかし、大学については、大学の裁量とみることもできる。