2018/01/31

林祥平(2017)「組織アイデンティティの認識と共有」『経済研究』(明治学院大学)153,45-64


  • 組織同一化研究(organizational identification):メンバーが組織に一体感を覚えることは、さまざまな形で組織に貢献することになる。
    • 組織同一化=知覚される組織アイデンティティの属性と同じものを個人の自己概念が含むプロセス。
    • 組織アイデンティティ=戦略の源泉(Abell 1980)
  • 組織アイデンティティは複数ある
    • ホログラフィック組織:組織全体で複数のアイデンティティを共有(=環境適応的)
    • イデオグラフィック組織:各ユニットがアイデンティティを形成し、全体として複数のアイデンティティが存在(=部門間・階層間コンフリクト多い=専門化が過度に進む)
    • → 前者が望ましく、後者は回避すべき。← 実際は後者が多い。
  • 社会的アイデンティティ(social identity)と共有的認知(shared cognition)
    • 集団形成に大きな影響力を持つ。
    • 2つの概念は相互に影響する。
  • 共有的認知研究:応用に課題あり:企業内の共有物(目標・組織文化・戦略)を正しく認識しているかを議論するには限界があり、新たな視点が必要(たとえば、偏った組織観に一体感を覚えて仕事をしている状況を扱えない)。
  • 組織アイデンティティ
    • 「我々はどのような存在であるか」「我々のビジネスはどのようなものか」「我々はどのようになりたいか」の3つの問いに答えるもの。
    • 3つの基準を満たす所属組織の特徴
      • 中心的特徴(組織の本質)
      • 特異性(他の組織と区別されるもの)
      • 時間的連続性
  • 組織アイデンティティ定義の3類型
    • 組織が1つの有機体として組織アイデンティティを持つ
      • アイデンティティは環境との相互作用で形成される
      • 環境からの働きかけと環境変化への適応の2つの視点で考える
      • 背景に個人的アイデンティティ研究がある
    • メンバーが自己に取り込んだものを組織アイデンティティと見る
      • 組織同一化研究の中心的説明原理
      • 背景に社会的アイデンティティ研究がある
      • 組織アイデンティティは極めて主観的なものと考える(人が嫌がる仕事をする人は、周囲とは異なる解釈をして仕事をしている)。
    • 組織に対する認識を周囲と共有したものとして組織アイデンティティを見る(間主観的)
      • 階層や専門性ごとに異なるOIを持つ
    • 3つの視点は統合できる
      • 主観的OI→(周囲と共有すべく修正)→間主観的OI→(本質的な部分での共通点)→中核的OIの3層構造
      • 組織内のOIが互いに大きく異なると、間主観的にとどまり、組織同一化による貢献行動は期待できない
  • 共有的認知研究の2アプローチ
    • 実際に共有された知識構造そのものに注目
    • 共有的認知の知覚に注目(共有という状態に関する知覚=思い込み)
  • 思い込み研究
    • False consensus:自分の判断や意見を,その状況では比較的一般的であり適切なものであるとみなす一方,それとは異なる反応は特殊で逸脱した不適切なものであるとみなす傾向。
    • 社会的投射:人が共有の感覚を持つときは、自分の考えが他の人にも当てはまると思うことで共有を認識する。
  • 心理的集団と実在的集団は必ずしも一致しない
    • 共有的認知研究では,自己イメージや自己認識を周囲に投射する形で共有的認知が形成されると見る。→ イデオグラフィック組織がどう生じるかは説明できるが、どうしたらホログラフィックになるかは示せない。
    • → 中核的OIが重要になる
  • アイデンティティの中核部分を認識する過程を通有化(commonalization)と呼ぶ。=所属組織のメンバーであれば共通して認識する組織の特徴について見出すプロセス(客観的事実ではなく、個人の認識)。
    • 通有化:実在集団としての企業の枠組みの中で共有物であるOIを見る
    • ⇔ 共有的認知・社会的投射:自分の立場からの共有
    • → 前者は、企業視点から望ましいOIをメンバーが認識できているかに注目。
  • どのようなコミュニケーションが通有化に影響するか?(実証分析)
    • 水平的よりも役職者とのやりとり
    • 管理職経験で同一化やOI変化が進む
    • トップは生え抜きが望ましい(組織文化を維持する・文化を戦略に練り込むことができるから)

2018/01/30

福島洋佑・熊澤知喜(2017)「組織アイデンティティのダイナミクス」『赤門マネジメント・レビュー』16(5),233-238

  • OI:個人のアイデンティティ概念を、宣言性、識別性、時間的連続性の3つの特徴により、組織に対して拡張した。
  • Hatch and Schultz(2002):OI・組織イメージ・組織文化の相互依存関係を動態的なモデルで記述し、組織の内部・外部との関わり合いの中で変容していく組織アイデンティティの姿を描いた。
    • 組織構成員やステークホルダーとの関係性が断ち切られた時に、OIが機能不全に陥る(=アイデンティティ形成は社会的プロセスである)。
  • OIDM
    • 文化→(アイデンティティが文化の理解を表現する)→アイデンティティ→(表現されたアイデンティティが他者に印象づける)→イメージ→(アイデンティティが他者のイメージを写映する)→アイデンティティ→(自省が文化にアイデンティティを埋め込む)→文化
    • 組織アイデンティティは、この4つのプロセスの中で形成される(組織文化と組織イメージの絶え間ない会話によって社会的に構成される)
  • 組織文化:(1)無意識下で暗黙的、(2)意味・価値・信条・仮定などの深層に存在する、(3)他者の態度に反応するもの → 自我論におけるIに近い
    • 組織文化=アイデンティティの内的定義
  • 組織イメージ=アイデンティティの外的定義 → 他者が抱く認識に対する態度(me)
  • 4つのプロセスの断絶=機能不全
    • 自己陶酔:外部イメージを無視すると、自己表現のみに依存したアイデンティティが形成される。
    • 過剰反応:外部イメージを重視しすぎ、自らの文化的遺産を無視し、仮定や価値に基づいたアイデンティティ形成が損なわれる(文化喪失)。
    • → これらは一時的な機能不全で、OIDMによって修正される。
  • 一方の機能不全が起こると、もう一方のサイクルは機能しない(=アイデンティティ形成が停止する)。
    • → アイデンティティ形成が2つに分離し、一方で自己陶酔、もう一方で過剰反応が起こるわけではない(組織内に複数のアイデンティティが発生すること自体はあるものの)。
  • 限界
    • 組織アイデンティティが組織内で果たす役割について十分に説明されていない。
    • 機能不全を起こす外的な変化の分析に理論的発展の余地がある。
    • 組織アイデンティティと組織文化の概念亭な区別に、明確な判断基準がない=異なる組織や同一組織の異時点間で概念を実証的に比較できない。

2018/01/29

Stensaker, B. (2015) "Organizational identity as a concept for understanding university dynamics," Higher Education, 69, 103-115.


  • 組織アイデンティティ:組織文化、ブランディング、マーケティングと関連した領域
  • 組織アイデンティティを定義する2つのアプローチ
    • 本質主義:真の組織の特徴を反映するもの(秩序と安定性を作るOI)
    • 組織の資源(戦略的ポジショニング・戦略志向性の一部としての)
    • この2つの違いは、OIを操作可能なマネジメントツールと見るかどうかの違い。
      • 前者はOIを文化の一部と見る、後者はOIを文化から切り離し、言語・シンボル・逸話を使って操作するものと見る。
      • 前者は組織の存続性に注目し、後者は組織の変化に注目。
      • しかしこれは、現在の外部説明責任の高まる状況を説明できない。
  • 今日のHE:市場的状況(国際化などによる)→ 管理主義的大学となる → 学内での緊張が高まる → 変革の規模や範囲を狭める → 大学改革の方向性を中心的な価値観や規範に近いところで変革する議論を推進する(← そうなるかがポイント:Marginson and Considine 2000; Hartley and Morphew 2008; Watson 2009)。

  • かつての大学組織の見方:無秩序組織・ルースカップリング(← 組織を中から見る見方)
  • もう1つの見方:学外からのニーズに基づいて変革する必要がある組織(ただし、ほとんどいつも大学は学外から批判されている)
  • → 今日の大学は、学内外からの矛盾する期待を両立することが求められている。
  • Albert and Whetten(1985):OI=教員が示すコミットメント
    • (1)中心的特徴:組織を識別する重要なもの
    • (2)経時的継続性:時間を経ても変化しない特徴
    • (3)独自性:他との違いを表す特徴(1とどう違う?)
  • 組織変革をコミットメントで進めるかデザインで進めるか
    • 前者は内部重視(OI不変)、後者は外部重視の変革(OI変化)
  • 今日の大学組織の4つの活動
    • 変革プロセスの特徴:デザイン変革 or 有機的変革
    • 重要な主体:学内 or 学外
    • → デザイン・学内=統合としてのOI
    • → デザイン・学外=イメージとしてのOI
    • → 有機・学内=解釈としてのOI
    • → 有機・学外=イノベーションとしてのOI
  • 解釈としてのOI
    • センスメイキングプロセスで使われる。
    • 新しい状況=歴史的な出来事として解釈される=現在のアイデンティティと関連付けて解釈される=OIが解釈フィルターのような役割を果たす。
  • イメージとしてのOI
    • 強いOIは外的イメージの基盤になる、OIと外的イメージのギャップは変革の原動力となる、OIと外的イメージの一致は強い安定性を作る。
    • → 今日ではOIと外的イメージギャップが、組織存続の脅威として作用する。→ ギャップが大きくなりすぎる=アイデンティティ危機が起こる
  • イノベーションとしてのOI
    • OI=ラベルに現れる → メンバーが変わるとラベルの解釈も変わる ← 比較的弱く不明確なOIで起こる(スポーツ競争が起こったのもこれ)。
  • 統合としてのOI
    • 執行部の持つ既存のアイデンティティへの影響力は小さい → 執行部が新しい解釈を提供する → 組織内でそれを解釈するプロセスが始まる
    • 外部環境対応では学内対立が不可避:OIを議論のトリガーとして使う。
    • 戦略プランもセンスメイキングのせいかではなく、センスメイキングプロセスのためのインプットとしてとらえるべき。
  • 教員のOI:同じメンタルモデルから作られるのに、実際は多様。

2018/01/26

佐藤秀典(2012)「組織アイデンティ論の発生と発展」『組織学会大会論文集』1(2)、85-95


  • OI=中心性・独自性・連続性の3つを満たす組織の特徴。
    • 注目される背景:組織環境が複雑で変化の激しいものになり、多様な組織が登場したため → OIを振り返らないと自分たちの強みや自分たちらしさがわからなくなる。
    • 中心性の研究:OIは1つしかないのか?
      • 複数ある=コンフリクト起こりやすい、意思決定遅くなる、調整コスト上がる ⇔ メンバーがさまざまな状況で求められる役割に応えやすくなる
    • 独自性の研究:独自性の主張と同時に、他との同質性も主張する必要がある。
      • ポジショニング・リソースの両面で戦略に関係する(OIが戦略に影響する、戦略がOIに影響する)。
    • 連続性の研究:OIは変化するのか?
      • OIを変化させるイベント時に組織はどう対応するのか。
  • OI研究は定性研究との相性がよい。
  • OIと組織文化・組織イメージの関係(Hatch & Schultz 2002)
    • OIは組織文化を表出する(expressing)
    • OIは内省で組織文化に埋め込まれる(reflecting)
    • 表出されたOIは、他者にイメージを与える(impressing)
    • OIは他者のイメージを映し出す(mirroring)
  • OIは直観的にわかりやすい=多くの応用研究が生まれた ⇔ 定義が多様な解釈を可能にする=そのような組織現象を説明する研究かが不明確。
  • OIをどの程度具体的にとらえるか?
    • OIの変化を見る場合、どの程度具体的に見るかで変化が生じたかの評価が分かれる。
    • → 戦略論との融合の方向か?

2018/01/25

The university of the future will be interdisciplinary


  • As academics, we’re used to departments. We cling to them for our sense of identity.
  • Inter-departmental rivalries have also long been recognised as a problem for higher education management. 


https://www.theguardian.com/higher-education-network/2018/jan/24/the-university-of-the-future-will-be-interdisciplinary

2018/01/24

Prince, M. (2017) "Understanding Student Resistance to Active Learning," Faculty Focus Premium, 2nd November.

学生の多くは、ALに不安を持っているため、教員はALの活用をためらう。

  • 学生によるALへの抵抗の仕方
    • 活動への参加に消極的に拒む
    • 活動中に不満を言ったり妨害したりして積極的に拒む
    • 授業評価に低い評価をして抵抗する
  • しかし、調査では学生の抵抗が大きく広がっているわけではない。
  • なぜ抵抗するのか?
    • ワークロードが増えるため
    • 学習に関連した課題への責任が増えるため
    • アクティブラーニングそのものではなく、やり方が悪いため(無駄なグループワークが多すぎる=グループワークでの達成感が得られない)
    • 慣れないことであるため(変化は苦痛を伴う)
  • 抵抗にどう対応するか
    • 学生を批判をしない(学生が抵抗したらその背景にある原因を探る)
    • オープンコミュニケーションで対応する(なぜそのALを用いるのかの教育的合理性を説明してから参加を促す)
    • 抵抗を積極的に受け止める(支援をする、建設的なフィードバックをする、学生に課題ができるという揺るぎない信念を示す態度で対応する)
    • 抵抗を教育的瞬間に変える(抵抗は学生自身が学習に関する重要な発見をする瞬間であり、知的成長を促すチャンスである。重要な学習成果はコンフォートゾーンの外側で活動する際に起こる。)
    • 抵抗に抵抗する(抵抗で従来の教育に戻らないことを示す)

https://www.facultyfocus.com/resources/teaching-strategies-techniques/active-learning/student-resistance-active-learning/

2018/01/23

When institutions of higher ed fail


  • 高等教育機関にとっての失敗とは、閉鎖や募集停止ではなく、ガバナンスメカニズムにおけるコントロールを失うこと。これは、トップレベルでも現場レベルでも起こる。
  • トップレベルに関しては、そもそもマネジャーは十分なトレーニングを積まずにマネジャーになる(これは教育面でも同じだが)。
  • 現場レベルでは、やる気を失った教員や、大学運営メカニズムをよく知らない教員では、大学運営に参画しても機能しない。
  • そのため、大学運営は流行に左右される。
  • 全ての教員が大学運営の基本原理を学んでおく必要がある。

2018/01/19

Ackermann, E. (2001) "Piaget’s Constructivism, Papert’s Constructionism: What’s the difference?," Constructivism: uses and perspectives in education, Vols 1 and 2, Conference Proceedings, Geneva, Research Centre in Education, 85-94.


  • Piagetの構成主義研究をベースに、Papertが構築主義という学習法を作り出したという構図。
  • 共通点
    • 人は自分の知識や、外の世界に対する見方を自ら構築する
    • 一旦構築された知識や見方は、経験を通じて再構築される
  • 相違点
    • 構成主義は、内化のプロセスに注目している
    • 構築主義は、外化のプロセスに注目している
      • 構築主義では、人は周囲の人や物(教材など)と対話しながら知識をつくる過程に注目する=学習において環境づくりが重要
http://learning.media.mit.edu/content/publications/EA.Piaget%20_%20Papert.pdf

2018/01/18

細井真・本村廣司・藤井元・人見充(2015)「大学職員業務の標準化・効率化を目的としたプロジェクトマネジメント体系に準拠した業務運営環境の構築」『大学行政研究』10,101-115


  • プロジェクトマネジメント知識体系:様々な業務分野におけるプロジェクト業務の実践知を集約し、プロジェクト業務を遂行するための基本的な枠組みをガイドライン化した業務マネジメントに関する知識体系。
  • ⇔ 一般的な仕事の進め方:文書の取り扱い事項を定めた文書規程や、意思決定の流れを定めた文書決裁規程。
  • → ガイドライン=業務の進め方の標準化・効率化。(WLBとしても重要。)
  • PMBOKが定めるプロセスと知識エリア
    • 5プロセス:立上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結
    • 9知識エリア:スコープ(作業範囲)、タイム、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダ
    • 実際は、計画、監視・コントロールに多くのプロセスが記載されている。

2018/01/17

A Syllabus Tip: Embed Big Questions


  1. 学習目標ごとに質問を用意する(Big Pictureな質問がよい)
    • 学習目標が、Students will be able to discuss current issues in political science informed by popular media and scholarly evidence. の場合
    • → What are the differences between sources of popular media and sources of scholarly evidence?
    • → What sources of popular media do you rely on to stay informed about current issues in the world?
  2. 各学習目標ごとに最低1つの質問を用意したら、それらをシラバスの学習活動ないに埋め込んでいく。
    • 仮にリサーチペーパーを説明する部分で、上の質問を学習資源の1つとして埋め込む。
  3. 初回の授業で質問したり宿題にして活用する。

2018/01/10

Seven Strategies to Grow Online Courses and Programs


  • 教員参加と支援に努力する
    • つまり、一部の人間、管理職、専門家だけで進めない。
  • 教員に能力開発機会を提供する
    • 必要であれば専門家を雇用して教員(個別)支援をする
  • オンライン学生を支援する
  • 十分な教員支援のための管理用インフラを用意する
  • オンラインで提供できるプログラムを決める
  • オンラインコース開発のインセンティブをつける
    • 金銭、ツール提供、評価で考慮など
  • 質にこだわる


https://www.academicleadertoday.com/administration/program-development/strategies-to-grow-online-courses-and-programs/

2018/01/09

As You’re Preparing the Syllabus


  • Tone matters as much as content
    • × professional, impersonal, directive → friendly invitations to exciting learning adventures
  • Downsize policies
    • 禁止事項を並べない
  • Think more like a map and less like a contract
  • The syllabus can make you a better teacher


https://www.facultyfocus.com/articles/teaching-professor-blog/youre-preparing-syllabus/