2017/08/25

山田礼子(2007)「アセスメントの理論と実践」『転換期の高等教育における学生の教育評価の開発に関する国際比較研究』7-20


  • 発達:望ましい心理的,教育的,モラル上での目的を価値づけるあるいは求める方向性への成熟や成長(ペリー)。
  • 変容:学生の認知的技能,情緒的特性,態度,価値,行動といった諸側面が時間軸でどれだけ量的,質的に変化したか。後退あるいは進展といった方向性を包含した用語ではない。
  • アメリカにおける学生の変容に関する研究の系譜は主に心理学に基づいた発達理論と社会学をベースとしたカッレジ・インパクト理論に分類できる(パスカレラ)。
  • 発達の理論:
    • 7ベクトル(能力の達成,情動の統制,依存から自立へ,対人関係の成熟,アイデンティティの確立,目標の開発,統合性の発達)。
    • 知的・倫理邸発達理論(ペリー)
    • 反省的判断モデル(キング・キッチナー)
    • 認識的反省モデル(バクスター)
    • 道徳性発達理論(コールバーク)
    • 女性の道徳性発達モデル(ギリガン)
    • ← 学生の発達の段階が後退するという段階を勘案せず前向きに捉え過ぎている+学生の大学生活を通じての経験の軽視という批判(フェルドマン)。→ 社会的制度として機能している大学を前提として,大学という環境の中での学生の社会化過程を検討する必要性を主張 = カレッジインパクト。
  • どうやってIEOを測定するか
    • O:認知名と情緒面に分類,これらの成果は心理的側面と行動的側面に分類できる。
  • 学問上と社会経験の統合が目標に結びつく(成功になる)。退学者は統合できなかったと考える。(ティント)
  • 大学1年字アセスメント
    • 履修前基本データ取得(オリエンテーション時に実施)(SATやACTとは異なり,学生の大学での期待や目標など入学前の行動や経験を把握)
      • College Student Expectations Questionnaire(Indiana)
      • College Student Inventory(Noel-Levits社)
      • CIRP Student Information Form(UCLA)
    • 1年次終了時点(一年間でどのような成長,変化があったかを見る)
      • College Student Report, NSSE(Indiana)
      • Your First College Year 
    • 学生の行動,態度,学習スキル,満足度や経験に関するアセスメント
      • College Outcomes Survey(ACT)
      • College Student Survey(UCLA)(4年生用,CIRP)
    • 学力や知識に関するプレースメント・テスト(各年次で実施)
      • Academic Profile(ETS):読解,作文,数学および批判的思考の測定
      • Accuplacer & Companion(College Board):読解,文章技能,初級代数,数学部門の問題から成り立っているプレースメント・テストで,補習授業受講決定やガイダンス目的で実施

2017/08/23

松波晴人(2011)『ビジネスマンのための「行動観察」入門』講談社現代新書


  • あらゆる企業の永遠の課題:付加価値の提案と生産性の向上
  • 行動観察はこの2つの課題解決に役立つ。
  • 行動観察には,観察,分析,改善の3ステップがある。
    • 分析では様々な知見が重要:人間工学,エスノグラフィー,環境心理学,社会心理学,表情分析。
  • 自分の価値観で観察対象者を批判的に見てはいけない。
  • 途中経過はクライアントに伝えてはいけない。
  • 行動観察をするには,自分の価値観から自由になる,人間に関する知見を持つの2つが重要。

2017/08/18

高橋知音(2015)「発達障害のある大学生への合理的配慮とは何か」『教育心理学年報』54,227-235


  • 合理的配慮:障害のある者が,他の者と平等に教育を受ける権利を享有・行使することを確保するために,大学等が必要かつ適当な変更・調整を行うこと。その際,大学等に対して,体制面,財政面において,近郊を失した又は過度の負担を課さないもの。
    • 学生の状態を訓練や治療で変えるのではない。大学が変更・調整を行う点がポイント。(障害の社会モデル)⇔ 障害の医学モデル=障害は個人に内在。
    • もう1つのポイントは合理的。しかし,どこまでが合理的かの線引きは困難。(海外では判例の蓄積で線引きが決まる。)
    • 財政面が考慮されることは,判断基準が大学で異なる可能性がある。
  • 合理的配慮では,教育の本質や評価基準を変えることは求めない。
    • 授業の本質や単位認定の基準の明確化が重要。
  • 妥当な合理的配慮=学生が感じる学修上の困難と機能障害との関連について根拠が示されていること → 発達障害(見えにくい障害)では判断が難しい。
    • ただし,医学的診断は必要条件だが十分条件ではない。
    • 検査結果等の根拠に基づいて合理的配慮の内容を決めることが広がらない理由は,大学生に利用可能な認知機能検査が限られているから。
    • 一方で,症状妥当性の検査(詐病の防止)も大きな課題。
  • 試験は,受験者の能力,スキル,知識の程度を推測するために収集する行動のサンプルである。
    • ← 何らかの機能障害がそのサンプル収集に影響を及ぼしているなら,そこから能力等の推定は不適切になる。

2017/08/17

寺島健一(2011)「組織学習論への新たなアプローチ」『経営学研究論集』35,59-69

  • 自己組織性:組織が自らを変化させる性質(組織は存続のために,新しい知識を生み出したり,自らのあり方を変える)。
    • → 組織の自律的な面や創発的な面を研究することが可能になる。
  • 組織学習の系譜
  • 古典論
    • ダブルループ学習(=ミクロ視点):学習を阻害している要因を取り除くことが研究の中心。
    • マクロ視点=学習主体が組織:学習はルーチンの変化
      • その適応プロセスには新しい可能性の開発と古い確実性の活用があり,そのバランスが必要。
    • Huberのレビュー:組織学習=情報処理を通して学習すれば,取り得る行動の範囲は変化する
      • 組織学習=知識獲得,情報分配,情報解釈,組織記憶の4つで構成される情報プロセス。
  • 知識創造論
    • 古典論は,(1)行動主義(刺激・反応モデル),(2)個人学習をメタファーに使う,(3)組織学習が適応のための受動的変化,(4)ダブルループのタイミングを客観的に知っているという仮定。
    • → 知識創造のSECIモデルへ。
  • 状況的学習論
    • 実践共同体への参加プロセスを通して学習の意味が形成される。
      • しかしその後,実践共同体の定義が「あるテーマに関する関心や一群の問題熱意を共有し,その分野の知識や専門的技術を,持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」と変化してしまう。
  • センスメーキング
    • ワイクの組織イメージ:壊するのをどうにか抑え,常に再建を余儀なくされている組織像。
      • 組織化:意識的な相互連結行動によって多義性を削減するのに妥当と皆が思う文法。
      • 組織化のプロセス:イナクトメント,淘汰,保持。
      • イナクトメントは自然淘汰における変異に相当。
  • 組織学習であるという以上,知識は共有されることが前提。
    • → 学習は独立した行為ではない

2017/08/08

Battistina, E. and Meronie, E. (2016) "Should we increase instruction time in low achieving schools? Evidence from Southern Italy," Economics of Education Review, 55, 39-56


  • We study the effect of lengthen instruction time on mathematics and language scores.
  • Identification relies on a difference-in-differences assumption and we investigate both average and quantile effects.
  • We find a positive effect for mathematics but not for language.
  • Effects for mathematics are driven by the best students in schools with low socio-economic background.
  • In the least problematic schools, more time spent at school on activities in language has negative effects on mathematics.

2017/08/07

Hill, A. (2017) "The positive influence of female college students on their male peers," Labour Economics, 44, 151-160


  • Female college students improve the academic outcomes of their male peers at public 4-year colleges in the US.
  • An increase in the female share of a freshman cohort increases graduation rates for males in that cohort.
  • There is no effect of cohort gender composition for females.
  • Effects appear to operate through changes in the college learning environment.

2017/08/01

石井拓児(2017)「戦後日本における教育行政学研究と福祉国家論」『教育論叢』60

  • 日本に特異な大学授業料政策(高い授業料負担)・奨学金政策(給付型奨学金制度の不在)・教育ローン事業の拡大政策について、これを「日本的家族主義」「親負担主義」が原因だとする学説が存在する。
    • いずれの研究も、1970 年代のある特定の時期に、意図的に持ち込まれた「日本的家族主義」を前提とする研究である。
    • 本研究が指摘するように、日本における授業料政策・奨学金政策の形成過程とその背景には、福祉国家構想の否定と不在、それを補完するように持ち込まれた「作られた家族主義(あるいは会社主義)」の存在がある。「作られた家族教育費負担意識」を実証して追認する ことに、いったいどれほどの研究的意義があるというのであろうか。
  • 天城勲の福祉国家における教育:第一に完全雇用の状態であり、第二にこれを支 える経済の成長であり、第三には社会保障制度の整備。→ まさに日本において特異な、「労働参加」を前提とする福祉国家論(資力調査や稼 働能力調査をふまえた選別的な社会保障制度論)が示されている。
    • 「福祉国家の要素の一つである経済成長との関連における教育の使命が問題となる」。高度の学問研究の発展、これら優秀な技術者の養成さらに新しい時代の社会に応じ進んでこれを形成する人間の育成」こそが、福祉国家における教育に 課られた「時代の要請」である。
  • 宗像誠也の批判:国家の財政支出を通じた教育内容統制
    • 教員給与の全額国庫負担化に対し、政治活動の制限と国家統制の危惧を表明。
  • 福祉国家システムの未整備:空白を支えたもの=賃金・企業福祉・税控除の「3 点セット」
    • 賃金カーブ,家族手当・法定外福利制度の拡充,扶養控除制度の3点
    • → 「日本型企業社会」の形成 → 「過度に競争的な教育システム」の形成
      • 社会保障の空白部分を補うだけの賃金を獲得しうる職業とは、中大規模の企業もしくは公務員・教員といった職に限定されていた。
  • 福祉国家教育行財政の原理原則
    • 就学前から高等教育段階まで、授業料を完全に無償とする
    • 「人生前半の社会保障」の確立を前 提とする、子ども・青年の学習権保障(=子ども手当制度を普遍的現金給付の仕組みに戻す,学生・青年本人が受給できる 生活費給付制度を創設)
    • 住宅と交通の問題解消(=18 歳で自立を果たす学生・青年には住宅手当の給付もしくは無償による住宅の現物給付)
    • 就学前児童、小学生、中学生の放課後の環境整備(=音楽・スポーツ指導者の育成)