2011/05/31

豊田義博(2011)「キャンパスライフに埋め込まれた学習」『Works Review』6, 8-21


  • 大卒若手社会人の迷走は,大学を出る前に組み込まれているのではないか。例えば就活は,形成された自己アイデンティティを第一志望企業が解体する意味で迷走要因(=キャリアビジョンを作り上げてエントリーシートを作ったのに,入職後の仕事は想定通りでない)。
  • スムーズに社会に適応する人とそうでない人の違いは何か?を高選抜度大学卒業生面談調査で分析。
  • 適応者の特徴:異なる価値観を持つ集団に身を置き,PDSサイクルで修行しながら葛藤を繰り返す。その敗北感から自己を相対化し,志向や適正を発見する。
  • 不適応者の特徴:
    1. 有意義な経験をしたと思い込んでいる(異なる価値観を持つと思った集団が実は同質的,マニュアル的プロジェクトを仕切ったと思い込む,有能感を高める受験勉強)
    2. 挫折・葛藤の回避(挫折体験を他者のせい・相性のせいにする。適応の機会を逃し,不適応の負の連鎖に入る。)
    3. 濃密集団への帰属が1つに偏っている
  • 不適応の事例:国際交流NPO,意識の高い社会貢献活動に従事することで自身の存在意義を確立,イベントプロデュースで有能感を感じるが,先人がパッケージ化したもので,社会的意義が高いという認識が挫折や敗北感を遠ざける。

2011/05/26

酒井穣(2011)『リーダーシップでいちばん大切なこと』日本能率協会マネジメントセンター

  • リーダーシップとは,自らの価値観(基本的情動の集合)どおりに行動する力である。人の存在意義は生まれながら与えられるものではなく,自分らしい,自分だけの人生を生きるためにリーダーシップを獲得しなければならない。リーダーシップは,人間が幸福(=自分自身との調和)を獲得するための必要条件。
本書のコアはこれだけで,あとは既存の知の切り貼り。
世間で絶賛されているほどの価値がある文献とは言えないのではないか。

2011/05/17

羽田貴史(2007)「アメリカの大学理事会について」『私大経営システムの分析』私学高等教育研究叢書

  • Trusteesとは,被信託者の集まり。ボローニャは学生支配の大学,パリは教員支配の大学,第三の管理運営革命としてBoard of Trusteesが出てきた。
  • 単一の組織があるものを運営することは,公共的利益を侵害するので,チェックの仕組みが必要。これが,BTが管理の主要な位置づけになった背景。
  • ただし,アメリカでは当初教員支配が成立する余地はなかった。誰かが大学を作って,それから教員を集めるため。逆に,オックス・ブリッジな上級教授の支配の大学。
  • ある任務,ある財産を,社会全体または特定の人間から委託されて執行するのがTrustees。この信託統治はヨーロッパで古くから発達してきた法的な枠組み。(共有と概念がない。日本は共有の国。)
  • アメリカ社会やヨーロッパ社会は,世間から信託されているという範囲でまず自分は行動しなければならないという倫理規範が内面にセットされている。日本の理事会は誰に責任を負っているのか?
  • シェアド・ガバナンスは,分担管理。理事会は経営事項,教員は教育事項と,権限を住み分けて共有する(教学と経営の分離)。
  • 理事会は社会と大学のバッファかつ架橋になれ。不当な支配や攻撃には大学を守り,社会の要求を大学に持ち込んで象牙の塔にしない。アメリカはレイマン・コントロールで社会と接続をはかることで,大学が進化してきた。上級教授支配のイギリスは,自分たちのやりたいことだけを再生産し,大学の外に成長した学問を取り込まずに停滞した。

2011/05/16

菅野寛(2011)『BCG流 経営者はこう育てる』日経ビジネス人文庫


  • 経営者が実行すべきこと
    1. 自社の置かれている市場環境を正しく認識する
    2. 目標を決める
    3. 目標と現状のギャップを正確に認識する
    4. ギャップを埋めて,目標を達成するための戦略・実行プランを立案する
    5. 組織・構成員に対して,目標,戦略・実行プラン,なぜそれをやり遂げなければいけないのかを正しく伝え,目標達成に向けてモチベートする
    6. 組織として,戦略・実行プランを実行する
    7. プランの進捗状況・結果をモニターする
    8. 結果を解析し,必要に応じて軌道修正する
  • これらを競合を上回るスピードで十戦し,競合を上回る頻度で繰り返す。これらは当たり前のことだが,これらから外れると成功は続かない。基本の実行が実は難しい。
  • 経営者のスキルセットは,科学系スキルとアート系スキルから成り,前者にはマネジメント知識とロジカル・シンキングが,後者にはリーダーシップが含まれる。前者はかなりの部分を部下に委託できるため,全て必須ではないが,後者は他人に委託できない必須スキル。
  • 科学のスキルを問われるのは参謀,アートのスキルが問われるのが指揮官。また,エリート集団は科学に偏向しやすく,ネガティブ・チェックが得意だが,周囲が反論できないまま何もしない状況が続いてしまう。
  • リーダーシップを構成する要素は,(1)強烈な意志,(2)勇気,(3)インサイト,(4)しつこさ,(5)ソフトな統率力の5つ。(1)は全てのベースで,(2)〜(4)は組織として結果を出すスキル,それを束ねる(5)という構造を持つ。
  • 強烈な意志の源泉は,高志と責任感。これはどちらか片方から出発するが,最終的に両方ないと意志は維持できない。人は利己欲ではとことん戦えない。
  • 勇気は,(1)トレードオフを理解した上で,どちらかを捨てる勇気,(2)不完全な情報下でも必要なタイミングで決断する勇気,(3)やめる勇気,変える勇気,(4)必要ならば上を捨てて人を切る勇気の4つが必要。これらを使うためには,(1)メンタル・タフネス(つらい決断に耐える精神的強さ),(2)リスク管理(失敗確率の最小化と,失敗した場合の立ち直りプラン),(3)倫理観(組織・顧客・社会のために行い,結果を出せなければ去る)の3つが必要。
  • ロジカル・シンキングで得られないインサイトを養うには,(1)わけがわからなくなったら,一歩引いて本質を見る癖をつける,(2)二極性で発想する癖をつける(積み上げ・トップダウン,帰納・演繹,ミクロ・マクロ,コストダウン・バリューアップ),(3)定石を壊して進化させる癖をつける,(4)他人の頭を使う癖をつける(人と議論する)。
  • しつこさには,考えるしつこさと実行するしつこさがある。考えるしつこさはインサイトの源泉である。実行するしつこさのポイントは,(1)地味・地道,(2)長く(10年以上)の2つ。
  • ソフトな統率力は,(1)夢を掲げる能力,(2)夢を共有する能力,(3)人間的魅力の3つから成る。共有のポイントは,やわらかな人的ネットワークを通じてコミュニケート,回数を多く,1回あたりの人数を少なくコミュニケート。人間的魅力は,カリスマ性ではなく,志の高さやひたむきな徹底からにじみ出るもので,明るいこと,善人であることが前提として必要。
  • こうしたスキルの獲得は,身体でアクション可能な習慣にして実行することで獲得できる。ただし,その訓練法は自分で組み立てないといけない。多くの場合,書き留めることが有効。
  • これらに加えて,体験が必要。これはデザインできないが,(1)できるだけ若いうちに体験する,(2)全体を統括する体験をする,(3)修羅場を体験する,(4)失敗しても立ち直れるようなダウンサイドリスクを小さくするの4つが重要。

2011/05/11

楠木建(1995)「大学での知的トレーニンク」『一橋論叢』113, 4, 399-419


  • 知的スキルは,少し話したり書いたりすれば目に見えてわかるものであり,その獲得トレーニングには長い時間を要する。
  • 知的スキルは3つのスキルで構成される
    • テクニカルスキル(会計がわかる,コンピュータが使える,方程式が解ける)
    • ヒューマンスキル(人にものを伝える能力,説得力)
    • コンセプチュアルスキル(ようするにこれだというコンセプトを創造する力,問題の全体像を理解してそこから本質的な問題を導出する力,解くべき問題を設定する力)
  • 3つは階層を成し,テクニカルがなければヒューマンは得られず,ヒューマンがなければコンセプチュアルは得られない。何もないところに,コンセプチュアルは身につかない。
  • テクニカルのトレーニングは苦痛なので挫折するのが普通。なので,思い込みでもよい軸が必要。自分の直感で決め,決めたらある程度やり込む。結婚と同じ。
  • コンセプチュアルは,大学くらいしかトレーニングの場がない。卒論はその最も効果的な方法。

2011/05/10

佐藤郁哉(2005)「大学の歩き方」『一橋論叢』133, 4, 341-358


  • 組織は流行に従う:新制度派組織理論
  • なぜ組織は互いに似ているのか,なぜ特定の組織構造,慣行,戦略が普及していくのか,それは,組織が組み込まれている環境に働く制度的プレッシャの影響を受けるから。
  • シラバスの例は,効果や効率は明らかでないが,既に勝ち組に入っている組織が採用したので,とりあえずそれを模倣してみるということ。許認可が絡む学校では,仕事のほとんどは事務のため,容易に理解できるが,実はこれは民間であっても同じ。
  • ある一群の組織に,それまでみたことのない外来語などが急速に広まった場合,強制的同型性や模倣的同型性を疑え。
  • 問題は,モデルの模倣にあるのではなく,模倣する側が有効な形で現場の実践に生かす視点や発想を持てるかどうか。
  • 制度的プレッシャーは何らかの形で避けがたく,制度的な圧力には黙従するのではなく,戦略的な対応をしていくことが必要。