2008/03/17

Dundar, H. and D. Lewis (1998) "Determinants of Research Productivity in Higher Education," Research in Higher Education, pp.607-631.

 本論文は、大学における研究のパフォーマンスを決定する要因の抽出を目的とした分析を行っている。研究の生産性を分析した研究はこれまでにも数多く行われているもので、それらは大きく分けて、個人の生産性を計測する分析と学部・大学レベルでの生産性を計測する分析に分けられる。従来は個人の生産性を対象とした研究が多かったが、本論文は学科レベルの研究の生産性をいくつかの説明変数へ回帰するモデルを推計する分析を行っている。具体的な分析は、大学における学科iの平均研究出版物の数を生産性として、先行研究で使われた変数を使って分析する。その変数には、教員数(とその自乗項)、教員数/大学院生数比率、大学院生のうちRAに採用されている学生の割合、図書館の支出額、公立・私立ダミー、教員に占める教授の割合などを含めて回帰分析を行う。これらのデータは、1993年のNational Research Councilの調査からとられており、17の学問領域を対象にして集計されている。そのうち、データは90の研究大学を対象に1841の博士課程プログラムをサンプルとして使用する。推定では、すべての領域をプールした推計に加え、生物学、工学、物理学・数学、社会科学の領域にサンプルを限定した推計も行っている。

 Pi = a0 + a1 Fi + a2 Fi2 + Σaj Xij + ε

 全ての領域をプールした結果としては次のような機関評価を提言している。(1)学科のサイズが大きいほど研究論文のパブリッシュも多い、(2)公立・私立ダミーは概して有意に負に推定されており、公立大学より私立大学のほうが研究の生産性が高い、(3)正教授職が多いほど研究の生産性も高い、(4)パブリッシュの集中度をみたジニ係数からは、スター教授に依存している傾向はみられない、などの結果を得ている。これら一連の研究では、研究のアウトプットを測る代理変数として論文数が適当かという議論、さらに書籍や査読論文から学会報告の予稿までどこまでがアウトプットになるのか、それらがどの程度正確にカウントできるのかという問題もある。
 まだ日本ではあまり行われていない研究ではあるが、バックグラウンドとなるモデルがないままとりあえず論文数を直観的に説明すると思われる変数で回帰したという印象が否めない。しかし、政策を提言するということなら、とりあえずこういう分析でもありなのかもしれない。しかし、その場合推定式のバリエーション(説明変数の組み合わせ)は無限になり、やはり背後のモデルが重要なのではないかと思う。