- 経済学的思考法とは、人々のインセンティブを重視した意思決定メカニズムから考え直すこと。
- 格差は努力を促すために必要だが、格差をつけすぎると運による差が努力の差と間違うリスクが大きくなり、危険回避的個人は運による格差を小さくすることを望むが、格差がないとやる気を失う。リスクとインセンティブのトレードオフ。
- 時間非整合性の問題を解決するには、コミットメント(最初に決めたことを変えないこと)が必要。アメリカの肥満をこれで説明できる。
- プロスポーツのように一人勝ちが必ずしも最大所得とならないのがルイス=シュメリングの逆説。
- 成果主義はどのような仕事のやり方をすれば成果が上がるかについて採用側がわからない場合、授業員の仕事ぶりを評価することが難しいが成果の評価が正確にできる場合、に行うべき。
- 自信過剰説:人間は成功確率が30%を切ると危険愛好的に、80%を上回ると危険回避的になる傾向がある。よって成功の可能性が低いものについては、その成功確率を過大評価する場合がある。
- トーナメントでは、参加者の能力差が小さい時に賞金格差を大きく、能力差が大きければ賞金格差を小さくするする方が、参加者の努力をより引き出せる。
- 日本の長期雇用慣行の労働者比率は、もともと20~30%。
- 賦課方式年金が成り立つのは、損をするか得をするかわからない状況で、その不確実性に対処するために保険契約を結ぶ場合。人口成長率・経済成長率が長期にマイナスになることが予測されると、公的年金は損がわかった投資を強要することになり賦課方式は成り立たない。
- 予想外に寿命が延びた70歳以上世帯への所得移転は合理的だが、生まれたタイミングで年金の収益率が大幅に異なる中で行うねずみ講には参加できない。少子化でねずみ講を維持するには、収益率の引き下げか大量の移民受け入れしかない。既得権を崩すには、国民年金を未納にして公的年金破綻の時期を早めるという行動がある。
- 習慣形成理論:同じ額を受け取るとしても年功型を選ぶ人が多い。
- 損失回避:一定額の得をすることによる満足度の増え方よりも、同額の損をすることによる満足度の低下の方が非常に大きい。確実に小額の損ができずに、大幅な損をする、人間は損切りができない。
- 従業員の危険回避度が高いなら、賃下げ・ワークシェアリングができ、損失局面で危険愛好的になる場合は人員削減を受け入れやすい。
- 引退後の所得のばらつきが、見かけの不平等度を増加させている場合がある。
- 恒常所得仮説(消費は将来にわたり期待できる平均的な所得に左右される)によれば、消費格差を見ることで不平等が見えやすくなる。
2007/12/19
大竹文雄(2005)『経済学的思考のセンス』中公新書
本書は、インセンティブの観点から社会を観察し因果関係を見つけ出すというメッセージの経済学紹介文献である。経済学というと株とか金融とか需要曲線とかがすぐに連想される。しかし、このインセンティブこそが経済学分析の肝であり、そこが面白さと魅力なのだが、専門家以外にはなかなか知られていない。本書は、一般向けにこのことを示した良書である。