本論文は、Acemoglu (1998)やKiley (1997)のモデルにマッチングモデルを組み込む形で拡張し、内生的経済成長の枠組みで、失業と熟練偏向的技術変化に関する分析を行うものである。基本的なセッティングはAcemoglu (1998)を踏襲している。
この論文の上手いところは、雇用量をKiley (1997)の形を使って表現しているところである。しかし、結論として議論される問題は、主に、
ln (ph/pl) = + ln{(1-d)/d} - ln(Qh/Ql) - ln(Nh/Nl)
に関連する。この議論はAcemoglu (1998)で議論される結果と同様ではあるものの、新たな貢献という意味ではそれほど重要ではない。従って、雇用に関する問題と分析しきれているとはいい難い部分がある。
もうひとつの疑問は、家計の問題
U(C) = ∫0∞ exp(-ρt) { (C1-γ -1)/(1-γ) } dt
に関して、予算制約は、
dtG = rG + Iw - C
であるが、労働者タイプによってこれは変わらないのか? Iwは各家計の平均所得(代表的家計の所得?)を表すということだが。ここでは、このまま解いてしまって通常のKeynes-Ramsey Rule
(dC/dt)/C = (1/γ)(r - θ)
を得てしまう。また、失業手当等は考慮されていない。Barro and Sala-i-Martin (1995)等を参照するなら、Gは研究開発部門の市場価値に等しくなるのではないか。内生的に成長する技術は2タイプあり、労働者の職場は分断されていて、各タイプの賃金が異なるので、予算制約が上式のように表すことができるのかが若干疑問である。
しかし、Acemoglu (1998)の枠組みで雇用と賃金に関する分析を行う試みは注目に値するものであり、今後の参考にしたいと思う。