2020/04/04

福畠真治(2015)「企業経営・学校経営研究における理念とその浸透に関する諸研究のレビュー」『東京大学大学院教育学研究科教育行政学論叢』(35), 119-148


  • 組織化の理論:ある考えが組織の中でどのように解釈・再解釈されて形成されていくのか。
    • 定義:意識的な相互連結行動によって多義性を削減するのに妥当と皆が思う文法。→ 相互連結行動(個人同士の相互行為)を最小単位とした行為を中心としたサイクルを繰り返し行うことで、組織が抱える将来の予測における多義性・多様な選択肢を少しずつ削減し、最終的に1つの意思決定・行動に収斂させる過程を指す。
    • 文法=(1)一人ではできないことをさせるレシピ・処方箋、(2)いかに種々の相互連結行動を組み立てるかに関するルールや習慣の体系、(3)変数と因果関係から有意味な構造(因果マップ)を作り上げるためのルール。
  • 組織化・センスメーキングにおいて目的・目標の一致は必ずしも必要ない。
    • 組織の行為はせいぜい目標解釈的。目標はばらばらで未来は不確実で、行為の差異を説明するものとして目標を論じるのは有効でない。目標は実際の活動と不可分に絡み合っており、目標はそれ以前の行為の総括として理解した方が生産的である。
    • → 将来に多義性が残る状態では、1つの目標・目的を設定することは困難、実際の組織活動はまず行動してからその結果に対して、後付けで解釈・意味付与を行うことで、多義性を削減していき、最終的に1つの目標間を形成すると捉える方が自然。
    • 因果マップ:メンバーの経験における因果関係を図示したもの。
      • +→-:逸脱・減衰ループ=システムは安定
      • 符号が同じ:逸脱・増幅ループ=多義性が削減されず収斂しない
      • 因果マップの過程:(1)構成員による多義性の知覚とそれに対処すべきルールの数と相互連会サイクルの数が決定される。(2)ルールとサイクルで多義性が削減されるが、増幅ループの場合は、9つの方法で変える(因果の向きを逆転する、つながりの符号を変える、2つの変数を切断する、関係の方向がなくなることがある、変数そのものをなくす、結合を強める、結合を弱める、発端の変数の影響がバイパスによって相殺される、変数が曲線的に関係している)。
  • ESRモデル:組織化の中心的役割を果たすプロセス
    • 生態学的変化:イナクトしうる環境=意味付与の素材を提供するもの
    • イナクトメント:自然淘汰における変異、変化を隔離し深く注意を払うための囲い込み
    • 淘汰:イナクトされた多義的なディスプレーに多義性を削減しようとしてさまざまな構造をあてがうこと
    • 保持:多義的だったディスプレーをメリハリのある因果の形に要約したもの
    • 組織の至る所で常に多数のESR連鎖が行われ、それらがルースカップリングで結びついている。組織は常に流れの中にある。
    • → そのダイナミクスを捉えるには、最小単位である相互連結行動、それが集合して構築されるESR連鎖をどう観察するかに依存する。
  • センスメーキング理論=組織化理論の発展版
    • 解釈(テクストをどう読むか)とは違う。テクストがどう構築されるかも問題にする(読みだけでなく創作・発見・創造)。
    • 中心となるレシピの要素:(1)これまでの考えや行動を正当化すること、(2)センスメーキングの課程で抽出された情報とそれに合致させるフレームワークを選択すること、(3)ある行為が生まれた後にそれを回顧的にとらえて意味づけしていくこと、(4)現状では理解しきれない状況が発生した時がセンスメーキングのきっかけとなること、(5)正当化され意味づけがなされた事柄を共通理解可能な形で捉え直していくこと、(6)センスメーキングをは全て行為から始まること。
  • センスメーキング理論の7つの特性
    • アイデンティティ構築に根付いたプロセス:主体は、センスメーキングの過程の中で自己の再定義を繰り返し、そのつど他者に対してその自己を提示することで、いずれの自己が適切かを決定しようとする存在。
    • 回顧的プロセス:センスメーキングの目的が多義性の削減にあり、現在の状況を跡づけ的に意味づけ・再解釈することで、行為の選択肢を絞り込む。
    • 有意味な環境をイナクトするプロセス:経験の流れの中に違いが生じた際に行為者が不快有意を払うべく変化を隔離する行為(ESRモデルのイナクトメントと同じ)。
    • 社会的プロセス:一人で行うものではない。常に他者の存在を想定し、その中でプロセスが進行していく。
    • 進行中のプロセス:センスメーキングには始まりがない、人は常に物事の中にある。物事はある時点から過去を振り返って焦点を当てる時に物事になる。ただし、流れのリアリティが最も鮮明になるのは流れが中断される時で、その情動がセンスメーキングに影響を与える。
    • 抽出された手掛かりが焦点となるプロセス:センスメーキング過程で選択・イナクトメントによって手掛かりが抽出・囲い込まれるが、その手掛かりがどのようなものとなるかはコンテクストで決まる。
    • 正確性よりももっともらしさ主導のプロセス:センスメーキングに必要なのは優れた物語、正確性は二次的。もっともらしさ=納得できるか。
  • Weickの考える組織:ルーチンを相互に結びつける集主観性、解釈を相互に強化する間主観性、この2つの形態を行き来する運動を継続的コミュニケーションという手段で結びつける社会構造。
    • ルーチンは完全に自動で行われるのではなく、常に繰り返し達成去れ発展している。達成が繰り返されるとイノベーションや間主観性につながり、繰り返されないとコントロ=ルや集主観性につながる。
    • → 組織の発展にはイノベーション(間主観性)が必要だが、それだけでは不安定になるので、議論・予期・正当化でコントロール(集主観性)することでバランスをとる。 
  • センスメーキング理論におけるフレーム
    • 意味=進行中の経験を何かしら伝えるために会話文へ結びつけられた言葉によって生み出されるもの。
      • 言葉=生み出される発話を制約する、発話を知るために押しつけられるカテゴリーを制約する、このプロセスの結論を保持するラベルを制約する。
      • 一方で、言葉と指すものには常にズレがある。
      • 流れを適度に保ち、カテゴリーが実世界の中に適度にイナクトされれば、センスメーキングは成功する。
  • センスメーキングは3要素からなる:フレーム・手掛かり・連結。
    • フレームの6カテゴリー
      • イデオロギー:手掛かりはイデオロギーで意味が確定され、多義性が削減される。
      • 第三次コントロール(前提コントロール):第一次=直接監督、第二次=プログラムやルーチンのコントロール、第三次=自明視されている過程や定義によるコントロール。初期の影響力は以後のステップを左右するので、この前提は重要。
      • パラダイム:繰り返し元出される標準らしき一連の説明。
      • 行為の理論:個人の認知構造の組織版。環境からの信号をフィルタ・解釈・反応するメタレベルのシステム。
      • 伝統:実践に埋め込まれているノウハウはシンボルとなる時のみ持続し伝達される。
      • 物語:センスメーキングにもっともらしいフレームを提供する。
  • 組織化もセンスメーキングも鍵となるのは、回顧性・行為の先行性
    • 設定した目的・目標を有意味なものにする活動を否定することになるという批判もある。