2013/08/23

一橋大学経済学部(2013)『教養としての経済学』有斐閣


  • パソコンとインターネットの普及で,知的能力の高い人と低い人の生産性の差が歴然と出る時代となった。この知的能力を鍛える場が大学であり,大学で学ぶことはパソコンの使い方ではなく,新たな価値を生み出す思考方法である。
  • 大学生が多すぎるかは,あるべき大学論に基づくのではなく,中学レベルの数学をやり直しても卒業時にエンジニアとしてやっていけるという,本人にとって進学がよかったかどうかを問うことで考える。(そういう教育機関は称賛されるべき)。
  • 今後,高卒労働者を吸収してきた生産現場の仕事が海外へ移転し,大卒労働者の需要が増えるなら,大学生は多すぎるとは言えない。
  • 個人の合理的な選択と,社会としての合理的な選択が相反する状況を社会的ジレンマという。

2013/08/22

「大学組織を問い直す」『IDE現代の高等教育』2013.5


  • いかなる組織においてもそうであるように,大学教育が革新的であるためには,業務の担い手である教職員が,組織の置かれている環境と課題を明確に理解し,自分の部署の最適化だけでなく,組織全体を展望した活動を行うことが求められる。
  • 優れたマネジメントは,構成員のモチベーションを高め,能力を引き出し,組織の価値を共有させるマネジメントであり,マネジメントの役割は大きい。
  • しかし,人間は自分の所属する世界がよければ,組織全体や社会全体のあり方には関心を持たないものである。マネジメントは万能薬ではなく,柔軟性に欠け,現状維持に陥りがちな大学教職員の行動様式を変容させていく仕掛けが,組織に内包されていく必要がある。
  • 公私立は,将来も研究組織に基づいて教育組織を編成と考え,学長・部局長・学科長間での葛藤が小さいが,国立は学長だけが将来教育組織を研究組織を分離と考え,ギャップがある。分離型は,柔軟な組織運営の条件づくりと,学部学科を超えた教員手段を形成して,規模・範囲の経済を活かした組織の活性化を目指す。急速に変化する知識生産と需要に対応した活動が可能なように,需要業務である教育と研究を遂行できる教員組織のあり方が課題になってきた。
  • 研究とは,確立したパラダイムをもとに,新しい知見を加えることで学者コミュニティに認知されるプロセスであるため,パラダイムを変革するイノベーションは,研究者の地位を危うくする。よって,研究者は意識的・無意識的に依拠する枠組みを維持し,変化を拒否する。
  • 組織改革には,組織にはまって行動する教員のハビトゥスを変化させる高度な戦略性が必要である。そのために求められるマネジメントは,行動様式の変容を視野に入れた組織の移行マネジメントであるが,現状はFDに特化され,肝心の能力論に組織的社会性が欠落している。
  • よって,単純な組織改革モデルではなく,各機関・組織の状況に対応した多様な組織移行モデルが提示される必要がある。
    • 機関内の組織多用戦略:並行して部局横断型で学際融合型研究組織を設置
    • 機関内の部局横断・学際融合型教育の推進:教員が複数の組織に属し,教育プログラムを担当(組織のマトリックス化)
    • 機関内の組織的分業化:情報センター,学習支援センター,図書館などが学生の教育を担う
    • 大学間の組織柔軟戦略:連合大学院
  • 札幌大学の教学組織に求められる特性は,(1)教育ニーズの多様化・流動化に柔軟・機動的に対応できること,(2)よりコンパクトな教職員組織によって運営可能であること,(3)変革への意思を顕示し,社会の期待感を醸成するものであることに絞った。
  • その上で,3つの学部制の限界を示した。(1)専門学部制では学生のユニバーサル化に対応しきれない(低学力者に専門教育を低年次から学ばせる悪循環),(2)教員数の削減と共に必置科目の制約が強まること,(3)学部間の障壁が総合力の発揮を妨げること。
  • 名古屋経済大では,法・経済・経営の専門共通基礎科目を新設し,3学部全員の必修科目を3クラス編成にして,ここの科目を3名の教員が担当する方式をつくった。
  • 日本は大学組織をあるべき形を規則によって組み立てようとするが,アメリカでは個々の活動が合理的になされるように組織化している。日本は組織を入れ物の集合体,アメリカは協調した行為の体系と見る。日本は大学には学部を置く,大学院を置くなど内部組織まで法規で定めるが,アメリカでは個々の大学がその活動に則して組織するため,ファカルティ,スクール,カレッジ,インスティテュート,ディビジョンなど多彩。(辞書的にも学校は入れ物,スクールは学ぶ者の集まりの意)。
  • よって,大学組織は,学術の固有の法則と学ぶ者のニーズに従って組み立てる。

2013/08/20

原田勉(2010)『実践力を鍛える戦略ノート』東洋経済新報社


  • 経営戦略を効果的に学習するには,理論的な学習は最低限にして,出来るだけ多くのケース演習を積み重ねる中で戦略的思考や問題解決能力を身につけることがポイント。
  • ケース演習の目的は,事前に想定した正解を得ることではなく,各自が知力を振り絞って何らかの解にたどり着くこと,その解を参加者同士で議論しながら何らかの教訓(=分析のポイントや注意事項≠正解)を引き出すことにある。
  • この本では,経営戦略を「資源配分+シナリオ」と定義する。経営戦略は必ず資源配分を伴い,その背後にあるシナリオを綿密に計画することで成功の蓋然性を高める。
  • 戦略が資源配分であるなら,戦術は資源運用であるが,この線引きは簡単ではなく,むしろ両者は相対的な概念である。戦略の立案は簡単であることも多く,戦術の立案こそ,現場の経験,知識,ノウハウ,知恵が要求される。戦略立案は事業部に数名で十分だが,社員の大半が戦術立案・実行者であることの方が重要。
  • シナリオは,経営資源と外部環境との適合をつくり出すことである。強みがはっきりしているなら,強みを強化すればよいが,環境が適合しないならこだわると危険。よって,両者を別々に検討して,組み合わせをチェックする方がよい。
  • PPMは単純に考えるためのもので,横軸に市場シェア,縦軸に市場成長率(市場魅力度)を取ってシナリオを描くもの。ただし,PPMは事業をどのように定義するかで結果が全く異なる点に注意(カメラメーカーとして定義するか,フィルム事業部,デジタルカメラ事業部ごとに定義するか)。
  • 事業戦略では,事業のコンセプト(誰に,何を,どのように)を定義することから始まる。具体的には,同じ要望を持つ特定の顧客層にターゲットを絞り,顧客が感じる主観的な価値や効用を定め,いかにしてそれを提供するかであるが,競争優位の差につながる部分は価値の提供方法にある。
  • 事業コンセプトは,視点を変えると顧客,競争相手,自社,販売網という4つのCを取り巻く関わりを考えることでもある。この中で最も重要なのは,競争相手ではなく顧客を見てコンセプトを構想する点にある。
  • 組織を分析するための組織図は,事業コンセプトを考える際には不都合。組織図は,内部の都合を表したもので,顧客を中心に検討されたものではないため。
  • 戦略グループマップは,2つのレベルの競合状態を2次元軸で表したもの。例えば,戦略グループ間と戦略グループ内(軽自動車中心の企業と,フルラインメーカー)など。
  • 業界構造分析をしなさい,とは業界の魅力度を評価するもので,競合企業間の敵対度,顧客の交渉力,供給業者の交渉力,新規参入の脅威,代替品の脅威の5つを評価すること。具体的には次の点。
    • 敵対度:業界成長率,企業の集中度,付加価値に占める固定費の割合,過剰設備の存在,製品差別化の程度,ブランド識別力,スイッチングコスト,情報の複雑性,競合企業の多様性,退出障壁
    • 顧客の交渉力:顧客の集中度,購買量,スイッチングコスト,顧客の持つ情報,顧客の利益,価格への反応度,全購買に占める割合,製品差別化,プラン度識別力,後方統合への能力,品質や成果へのインパクト,意思決定者のインセンティブ
    • 供給業者の交渉力:スイッチングコスト,インプットの差別化の程度,供給業者の集中度,代替インプットの存在,供給業者にとっての量の重要性,インプットのコストや差別化への影響,前方・後方統合への脅威,総コストに占める割合
    • 新規参入の脅威:規模の経済性,ブランド識別力,必要投下資本量,製品差別化の程度,スイッチングコスト,販売網へのアクセス,習熟効果の程度,インプットの確保,既存企業からの反撃可能性,政府による規制
    • 代替品の脅威:代替品のコストパフォーマンス,スイッチングコスト,顧客の代替嗜好性
  • SWOTは戦略オプションを考えるために使うもので,SWOTの要因列挙だけでは意味がない。その戦略オプションの基本パターンは,コストリーダーシップ,差別化,集中の3つ。
  • SWOTでは,みんなが脅威と感じていることに機会を見出すことに成功の鍵がある(アスクルの系列販売網を持たないことなど)。
  • 損益分岐点に達するとは,売り上げから変動費を引いた利益(=限界利益)が固定費をカバーしたとき(=損益ゼロ)。
    • 限界利益率=限界利益/売上=(売上ー変動費)/売上=価格ー単位当たり変動費
    • 損益分岐点=固定費/限界利益率
     ケース学習を演習問題型で提供する点は,とてもよい試みだが,前置きとなる解説が多すぎる点が残念で,もっと演習中心で編集してもよかった。このケースブックでは,事例に示された数字を正確に読み取る力を重視している。実際に問われるケースクエスチョンは,大雑把でケース独特のものではなく,どのケースでも共通するもの。

    2013/08/19

    青井博幸(2011)『経営戦略教室』PHP研究所


    • クリエイティブな組織をつくるには,クリエイティブな人が評価される仕組みが必要。これは,クリエイティブ重視による性善説に基づいたマネジメントがアイディアを出すための前提。
    • 戦略立案上の判断基準となる経営理念やビジョンに,社員が幸せになるという項目を入れる。この戦略を実行して本当に社員が幸せになれるかを真面目に考えるようになる。
    • 20世紀型MBAは,経営戦略が株主のために必要であるとはっきりしていたため,簡単に従業員を使い捨てる考え方で戦略を立案してきた。