2010/02/21

白石弘幸(2009)「組織学習と学習する組織」『金沢大学経済論集』29, 233-261


 「組織学習」論では、個々人による学習と別に「組織が学習する」という現象が存在すると考える。
 組織学習はルーチンベースで行われる。ルーティンはそれを実行する個々人とは独立であり、メンバーが入れ替わっても存続する。そしてこれは社会化、教育、模倣、訓練等を通じて伝承される。
 ルーティンは将来の予想よりも過去の解釈を基礎にしているから、組織学習は歴史依存的でもある。しかしそのような組織学習は短期的、表面的、一時的である。
 組織学習の「近視眼」に(1)長期的な学習と存続が危うくなる(すぐに成果が出る活動は構想しやすいためにこれが優先される)、(2)組織学習では近くのことが優先される(組織の各部分の存続性を最大化するための戦略と、全体としての存続性を最大化するための戦略が必ずしも一致するとは限らない)、(3)失敗を見落とす(経験の蓄積にバイアスがかかる)という三つの形態がある。

 学習する組織論」は学習の主体として個々のメンバーを重視し、組織学習の存在を明確に否定しているわけではないが、知識や技能を取得するのはあくまで個々のメンバーと考え、また学習の主体として個々人を重視する立場で、メンバー各人による学習の促進策を検討する。
 学習する組織とは、組織メンバーを学習の主体として尊重し、すべてのメンバーが知識や技能の取得に動機づけられている組織である(「革新的で発展的な思考パターンが育まれる組織」「共同して学ぶ方法をたえず学びつづける組織」)。
 「組織内のあらゆる人々が、問題の発見と解決に取り組み、実験・変化・改善をくり返し、それにより成長・学習・目標達成をする能力を高める組織」であるには、全メンバーの学習能力を高め、また全メンバーを学習へと動機づけ、学習しやすい環境をつくらなければならない。
 ただし学習の能力や意欲には個人差があり、何の働きかけをせずとも学習する能力と意欲が高い人を引き寄せる組織とならなければならない。そうした組織の特徴は、(1)エンパワーメントによってモチベーションの強化が図られている(意思決定者として各人が尊重されている)、(2)継続的な学習が可能な環境が整っている(外部のセミナーや研究会に容易に参加できる)、(3)客観的な評価制度がある(知識や技能の獲得とそれらの活用およびアウトプットが正当に評価される仕組みがある)、(4)キャリアの選択肢が広く、多種多様な経験が保証されている(色々な職務で様々な経験を積める、職務選択の自由度が大きい)。
 学習意欲を減退させる典型的な要因は、(1)組織が慣例重視で保守的であること、(2)顧客を放っておいて主導権争いに明け暮れているような組織。