2008/04/11

池田潔(1949)『自由と規律 イギリスの学校生活』岩波新書

本書は、イギリスのイギリスのパブリックスクールに在学した経験を持つ筆者によるその解説である。
  • 良識とは、この世に何が大切であり、何が然らざるかを識別する力を指す。イギリス人は、良識によって到達した判断を敢然として実行に移す勇気を持ち備えている。
  • 庶民の学校は官公立学校で、エレメンタリースクール・グラムマースクール、富裕層の学校は私立の全寮制の学校で、プレパレートリースクール・パブリックスクール。
  • パブリックスクールとは、私立の中学校であり、卒業生は直ちに大学へ進学するため、日本の中学校と高等学校を合わせたものに相当する。
  • エレメンタリー、グラムマーでの教育は、日本の小中学校に比べはるかに職業教育的傾向がある。卒業後は大多数が社会に出、一部の優秀者が師範学校・専門学校へ進む。その中のごく少数が大学へ入学する。イギリスでは、実利的見地から子弟の高等教育進学を躊躇する。
  • 実社会側もプロフェッションを除き、職業に高等教育修了者を求めない。職場の経験を重視し、社員の成績は執務上の実力のみで判定される。大学は高度の学問を修める人間のための施設で、然らざる人間は行かない。
  • パブリックスクールの新学期は秋に始まるが、一斉に新入生がそろって入学するのではなく、学期末や学期途中と比べるとこの頃の出入りが比較的多いだけである。大学新学年の始まるのも秋。入学者は試験合格者より欠員に応じてウェイティングリスト順に入学する。
  • パブリックスクールの特徴として、寮、校長、ハウスマスターと教員、学課、運動競技とその精神に特徴がある。
  • パブリックスクールでは個々の私を捨てて全体の共同目的の貫徹に奉仕する精神を涵養する手段として、運動競技が最も重要視される。運動場で対抗競技が行われる時は書物を置いて観覧席に集まり、一人多事に没頭することは許されない。
  • 裕福な家の子弟で経済的困窮はないが、食物量を制限し、思春期の少年の飽食を不可とし、何事も少年のほしいままにさせぬ。この厳格な教育が期するところは、正邪の観念を明にし、正を正邪を邪としてはばからぬ道徳的勇気を養い、そこにはじめて真の自由の保障があることを教えること。パブリックスクール教育への信頼は、苦しきを知って敢えて愛児に苦につくことを求めさせる点。
  • 夜の自修では教師が付き添わないものの私語一つない。自修時間が限られているからなのと、勉強に充てられている時間は勉強をするという常識が支配しているため。逆に自修時間以外で勉強をすると非難の対象になる。
  • パブリックスクールの生活が規律正しく運営される仕組みに、プリーフェクトの制度がある。最高学級に属し人格成績で他の模範にして、運動競技の正選手をしている者を校長が指名して自治を委ねる。学生間の小さな紛争はプリーフェクトの調停により、いちいち教師が登場しない。
  • パブリックスクールは校長の邸を中心に校舎が建つ。全ての裁量が校長の判断で処理される。職員会議のようなものは一切ない。
  • パブリックスクールでは試験の不正行為が全くない。成績の優劣が重視されず、全てで優をとっても崇敬の的にならないから、席次がなく課目別の進学が頻繁で落第が目立たないからなどの理由もあるが、彼らには本質的な正直さがあるからだろう。大学の入学試験は1年4回にわたって数課目ずつ部活して受験するのでゆっくり2年掛けて合格する者もいる。
  • イギリス人が愛好するのは団体競技で、個人競技に関心がない。
とてもおもしろい内容であるが、書かれた時代が古く、ここから直ちに今の教育への示唆を得るには慎重でなければならないだろう。