2008/04/25

堀公俊(2004)『ファシリテーション入門』日経文庫

問題とは、望ましい姿と現実とのギャップである。
組織で対処すべき大きな問題解決には、異なる意見を調整し、コンセンサスを生み出す必要がある。
  • 組織はリーダーシップとマネジメントで動く。リーダーの役割は組織の方向性を決めること。マネージャーの役割は定められた目標を達成すること。
今日求められるのは構造的(システム的)アプローチではなく、関係的(プロセス的)アプローチ、人と人の相互作用の集まりとして組織を考える。
  • ファシリテーションとは、集団による知的相互作用を促進する働き。中立な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大となるよう支援すること。
  • 横軸を個人的⇔社会的、縦軸を学習的⇔創造的とすると、第一象限に入る問題解決、合意形成、教育研修は主なファシリテーションのタイプ。
  • 合意形成型には、生み出した結果に正解がない。いかに納得性と合意の質を高めるかがファシリテータの役割。
  • ファシリテータは、対人スキルと論理スキルが必要。基本スキルとして、場のデザイン(チーム設計・プロセス設計・アイスブレイク)、対人関係(傾聴と質問・非言語メッセージ・非攻撃的自己主張)、構造化(論理コミュニケーション・ファシリテーショングラフィック・フレームワーク)、合意形成(意志決定・コンフリクトマネジメント・フィードバック)の4つが必要である。
  • 場をデザインする5つの要素とは、目的、目標、規範(ルール・バリュー)、プロセス(ロードマップ)、メンバーのこと。
  • ブレーンストーミングの4つのルールは、自由奔放、質より量、批判厳禁、付け足し歓迎。
  • 話し合いは、ダイアログ(拡散型、意味の探求)とディスカッション(収束型、解答を目指して知識を寄せ合う)の2つがある。
  • 同質の人間が集まるチームでは、意志決定が早く、創造的になりにくい。異質な人間が集まるチームでは、合意形成に時間がかかるが、創造的なアイディアが出る。
  • 傾聴(アクティブリスニング)は、聞くことだけを行うこと。最後の言葉をくり返す、キーワードを返す、まとめて返すなどの復唱をし、うなずくこと。
  • 質問には、5W1Hで問うオープンクエスチョンとY/Nで問うクローズドクエスチョンがある。なぜは使いすぎると非難に聞こえるので、if+whatで問うと前向きになる。
  • 創造力を引き出すには肯定系の質問をする。
  • 自分の意見を述べるときは、例えばAという考え方についてはいかがお考えですか?反論も、なるほど・・・さらに・・・はどうでしょう?
  • 論旨があいまいか、十分な情報がないときに誤解が生まれる。
  • 論理の3点セットとは、話の前提となる知識、根拠、結論の3つを指す。
  • 前提を明らかにするときは、テーマを明らかにする、前提となる事実を明確にする、事実と意見を切り分ける、言葉の定義を明確にする、暗黙の価値観を明らかにする。
  • 根拠を示すときは、根拠を提示させる、根拠の因果関係をチェックする、例証の適切さを確認する、基準の妥当性を確かめる、他に根拠がないかを調べる
  • 結論を明確にするときは、主張を具体化する、事例や定量的表現を求める、文脈を明らかにする、思考停止ワードを避ける、他の結論を調べる
  • 問題を扱えるようにするには、小さな問題に分けるしかない。これは、意見をまとめるという作業を同じ。この構造化はフレームワークで行う。人物金、SWOT、3C、起承転結など。
  • 評価基準を使った意志決定には、選択肢の長短を全て並べて比較(メリット・デメリット法)、実現性と収益性の2×2マトリックスで分類(ペイオフマトリックス)がある。
  • アイディアを絞るときは、多重投票法などの多数決を利用する。
  • コンフリクトは、考え方の枠組みが対立している時に起こる。表面的な意見の対立が原因であることは少ない。
  • コンフリクトは解消しなければならないが、ギャップは解消する必要がない。解消とは、枠組みを変えることではなく、違うことを確認した上で、双方が満足できるアイディアを考えること。

2008/04/18

リタ・エメット(2004)『いまやろうと思ってたのに・・・』光文社

 なぜ今日できることを明日に延ばしてしまうのか。その克服をまとめたという本だが、興味深い内容である。
  • グズが恐れているのは、時間やエネルギーを費やすことではなく、単に始めること。いやな仕事を真っ先に。その仕事の後には晴れやかな気分が待っている。
  • 自分に褒美をあげる。仕事が完了するまでちょっとした楽しみを我慢する。
  • 漂流をしているときは、まず一つ仕事を片付ける。
  • リストを作るときは、本当にやらなくてはならないことだけを具体的に書く。
  • 締め切りには必ず中間締め切りを作る。
  • プラン作りのステップは、(1)ちょっと考える、(2)やることリストを書く、(3)仕事について人に話す、(4)仕事の各段階を想像し必要な道具や書類など、やっている姿を想像する。
なぜグズグズするかの原因は、不安・恐怖心。
  • 不完全の恐怖:タイミングや気分や条件がきっちり整うまで物事を先延ばす。しかし、完全な状況はまず起こらない。完全でなく優をめざす。
  • 批判の恐怖:恥ずかしさ、怠惰、愚か、バカというレッテルを貼られるのがいやで、やるべきことに手をつけずいつまでも延期する。
  • ミスをする恐怖:思い通りに事が運ばないのではないか。一度もミスをしていない人間は何もしていない。何事もほかのやり方があることをミスは教えてくれる。
  • 高い水準を守る恐怖:一度高い成功を収めたことを続けるプレッシャー。
  • その他、拒絶される恐怖・誤った決断をする恐怖
恐怖を克服する方法としては、
  • 自分は何が怖いのかを自問する。恐怖を特定できるだけで、圧力が軽くなる。
  • 恐怖が最悪の形で実現するとどうなるかを自問する。
原題はThe Procrastinator's Handbookなのだが、これを「いまやろうと思ってたのに」と訳したところがとてもうまい。

2008/04/11

池田潔(1949)『自由と規律 イギリスの学校生活』岩波新書

本書は、イギリスのイギリスのパブリックスクールに在学した経験を持つ筆者によるその解説である。
  • 良識とは、この世に何が大切であり、何が然らざるかを識別する力を指す。イギリス人は、良識によって到達した判断を敢然として実行に移す勇気を持ち備えている。
  • 庶民の学校は官公立学校で、エレメンタリースクール・グラムマースクール、富裕層の学校は私立の全寮制の学校で、プレパレートリースクール・パブリックスクール。
  • パブリックスクールとは、私立の中学校であり、卒業生は直ちに大学へ進学するため、日本の中学校と高等学校を合わせたものに相当する。
  • エレメンタリー、グラムマーでの教育は、日本の小中学校に比べはるかに職業教育的傾向がある。卒業後は大多数が社会に出、一部の優秀者が師範学校・専門学校へ進む。その中のごく少数が大学へ入学する。イギリスでは、実利的見地から子弟の高等教育進学を躊躇する。
  • 実社会側もプロフェッションを除き、職業に高等教育修了者を求めない。職場の経験を重視し、社員の成績は執務上の実力のみで判定される。大学は高度の学問を修める人間のための施設で、然らざる人間は行かない。
  • パブリックスクールの新学期は秋に始まるが、一斉に新入生がそろって入学するのではなく、学期末や学期途中と比べるとこの頃の出入りが比較的多いだけである。大学新学年の始まるのも秋。入学者は試験合格者より欠員に応じてウェイティングリスト順に入学する。
  • パブリックスクールの特徴として、寮、校長、ハウスマスターと教員、学課、運動競技とその精神に特徴がある。
  • パブリックスクールでは個々の私を捨てて全体の共同目的の貫徹に奉仕する精神を涵養する手段として、運動競技が最も重要視される。運動場で対抗競技が行われる時は書物を置いて観覧席に集まり、一人多事に没頭することは許されない。
  • 裕福な家の子弟で経済的困窮はないが、食物量を制限し、思春期の少年の飽食を不可とし、何事も少年のほしいままにさせぬ。この厳格な教育が期するところは、正邪の観念を明にし、正を正邪を邪としてはばからぬ道徳的勇気を養い、そこにはじめて真の自由の保障があることを教えること。パブリックスクール教育への信頼は、苦しきを知って敢えて愛児に苦につくことを求めさせる点。
  • 夜の自修では教師が付き添わないものの私語一つない。自修時間が限られているからなのと、勉強に充てられている時間は勉強をするという常識が支配しているため。逆に自修時間以外で勉強をすると非難の対象になる。
  • パブリックスクールの生活が規律正しく運営される仕組みに、プリーフェクトの制度がある。最高学級に属し人格成績で他の模範にして、運動競技の正選手をしている者を校長が指名して自治を委ねる。学生間の小さな紛争はプリーフェクトの調停により、いちいち教師が登場しない。
  • パブリックスクールは校長の邸を中心に校舎が建つ。全ての裁量が校長の判断で処理される。職員会議のようなものは一切ない。
  • パブリックスクールでは試験の不正行為が全くない。成績の優劣が重視されず、全てで優をとっても崇敬の的にならないから、席次がなく課目別の進学が頻繁で落第が目立たないからなどの理由もあるが、彼らには本質的な正直さがあるからだろう。大学の入学試験は1年4回にわたって数課目ずつ部活して受験するのでゆっくり2年掛けて合格する者もいる。
  • イギリス人が愛好するのは団体競技で、個人競技に関心がない。
とてもおもしろい内容であるが、書かれた時代が古く、ここから直ちに今の教育への示唆を得るには慎重でなければならないだろう。

2008/04/04

宮崎伸治(2001)『英語うまいと言われる和訳の技術』河出書房新社

本書は、翻訳家である著者が英文和訳のテクニックをまとめたものである。
以下はいずれも経験的に実践していることだが、あらためてまとめるとわかりやすい。漠然と翻訳には自信があったが、方向が間違っていなかったことを確認した。前の文献が古すぎたので、最近のものにも一通り目を通すべく読んだが、翻訳をするなら一度は読んでおきたい本と言える。

・できるだけ短い日本語で表現する
・数字は単位をつける、単位は日本のものに換算する
・超は more than, over、以上は or more、未満は less than, under、以下は or less
・-nessは文脈から日本語を補う
・無生物主語は受け身で訳す
・yes, noは内容と対応する、ただし否定で聞かれたらyesを「いいえ」と訳す
May I smoke? Yes→いいですよ
Do you mind if I smoke? Yes→だめです
・名詞を動詞で訳す(I am a good swimmer.)
・略語は元の意味を明示

・単複で意味の変わる単語
air(空気) airs(気取り)
advice(アドバイス) advices(通知)
ash(灰) ashes(遺骨)
color(色) colors(軍旗)
day(日) days(時代)
letter(文字) letters(文学)
pain(苦痛) pains(骨折り)
spectacle(光景) spectacles(眼鏡)
ruin(破滅) ruins(遺跡)

・読み違えやすい単語に注意
respective(それぞれの) respectable(体裁のよい) respectful(敬意を表する)
sensible(思慮のある) sensitive(感じやすい)
stationary(動かない) stationery(文房具)
principle(原理) principal(主な、第一の)
particular(特別の) peculiar(特有の、固有の)
その他、narionalとrationalとかも。

・全体否定と部分否定を明確に訳す
I have not read both books. どちらも読んだわけではない(部分否定)
I have not read either book. どちらも読んでない(全体否定)