- GTAは看護研究から始まった。
- 実証研究が理論の生成へ発展できないのは,検証偏重だから。理論とデータのギャップを克服するための足場を,理論側ではなくデータの重視に求めた。
- 問題はGTAと何かではなく,いかにしてGTAを実践するか。
- GTの理論特性
- GTとは,データに密着した分析から独自の説明概念をつくって,それらによって統合的に構成された説明力に優れた理論である。
- 概念=データを解釈して得られる仮説
- 理論=説明的な概念によって構成されるもの→分析に用いたデータに関する限りの理論で一般化できるものではない
- GTは,継続的比較分析法による質的データを用いた研究で生成された理論(=データに密着した分析,分析とデータ収集を並行。両者をつなぐのが比較法(理論的サンプリング),分析結果を類似と対局の2方向で比較検討,その有無をデータで継続的に確認)。
- GTは人と人の直接的なやりとり(社会的相互作用)に関係し,人間行動の説明と予測に有効。(研究者によってその意義が明確に確認されている研究テーマ限定された範囲内で説明力に優れた理論。)
- GTは人間の行動,他者との相互作用の変化を説明できる理論(=動態的説明理論)。
- GTは実践的活用を促す理論。
- GTの内容特性
- オリジナル版:
- 現実との適合性:説明力が問われる。研究対象の具体的領域・日常的現実に可能な限り当てはまらなくてはならない。
- 理解しやすさ:研究対象に関心を持つ人や日常に的にいる人に,理論が理解しやすいものであること。
- 一般性:研究対象は変化しており,多様性に対応できる一般性。
- コントロール:次につながり,実践的活用のために重要となること。
- GTA:大きく4タイプに分かれる:オリジナル版,グレーザー版,ストラウス・コービン版,M-GTA。
- 共通性
- コーディング:オープンコーディング,選択的コーディング,継続的比較分析,理論的サンプリング,理論的飽和化の5つは不可欠(適切にGTAに沿っていると判断される条件)。切片化を求める立場もあるが,M-GTAでは代替案を提示。
- グレーザーVSストラウス問題:前者=データから概念・カテゴリーが浮上する,後者=事前に設定した解釈枠組みにデータを合わせる
- → どちらであっても使い方次第でEmergentにもForcingにもなる。
- 現時点では,ストラウスの方がグレーザーよりもGT的。
- M-GTAの7つの特性
- 5つの理論特性と4つの内容特性を満たす。
- データの切片化をしない。
- データの範囲,分析テーマの設定,理論的飽和化の判断において方法論的限定を行うことで分析過程を制御する。
- データに密着した分析のためのコーディング方を使う。(概念を分析の最小単位として,グレーザーの厳密なコーディングとストラウスの深い解釈を両立させるために,分析ワークシートを作成して分析をすすめる)。
- 研究する人の視点を重視する。
- 面接型調査に有効に活用できる。
- 解釈の多重的同時平衡性を特徴とする。(分析作業を段階分けしない。データから概念を生成する際に,類似例,対局例に加え,未生成の概念も検討する)。
- 質的研究の役割:分析方法に比重が大きい研究評価の現状に対して,各研究者が立てた問いと結果を評価対象として同列に置く必要性に応えられる。
- 質的研究は,単にデータが非数量的であることではない。データが,ディテールの豊富なデータである必要がある。
- 現実をデータに置き換えるときに,調査者側の枠組みを強要するのではなく,回答する人の制約が少ない方法で表現できる(だから面接を行う)。
- データ分析のアプローチ
- できるだけ数量的分析と同じ厳密さを求める → オリジナル版
- 解釈の手順を明示化し,数量分析とは別の方法をとる → グレーザー(1+2)
- 解釈結果のみ表示する → ストラウス
- 1と2をつなぐ作業が切片化。
- ストラウス・コービン版は2と3の統合?
- M-GTAは1~3の統合を目指す。
- 感覚的要素は,科学的でないものの,私たちがわかるために不可欠の要素であり,厳密さのためにこれを排除すべきではない。
- 社会学の概念が感覚的要素を含むものであるからと行って,概念として未発達で科学的洗練さに欠けているのではなく,社会学が分析しようとする対象はそうした性格を有したものである。
- 分析の重要な点
- コーディングを深い解釈を同時に行う(グレーザー=厳密なコーディング,ストラウス=深い解釈,どちらも分析手順を示していない)
- 解釈とは,データとの対話から意味を読み取っていく作業。対話とはやりとりを通して最初になかった何かを共同で生み出すプロセス。
- 理論生成よりもデータ密着。データは理論的サンプリングによりシステマティックに収集されていること(密着の前提)。
- 概念ができればデータは捨ててよい(データから分離するため)。密着していれば捨てられる。
- 概念・概念間関係・概念の意味は,データの例示によって表現する。
- エスノグラフィー=ディテールを直接記述分析に活かす。GTA=ディテールを概念の生成に活用する。
- 文献レビューの指導:(1)1つの論文の書評(著者視点の要約+自分視点の批評),(2)3~5の論文の書評,(3)授業で取り上げた文献+独自探索文献のレビュー論文。
- ベースデータ(研究テーマに照らして理論的・現実的判断で選択された対象者について,最初にまとめて収集されたデータ)に対する分析から始める。
- ベースデータの目安は10~20。飽和化のためには一定量のデータが必要。
- 面接は半構造化でよい。
- ディテールの豊富さを確保するために振り返ってもらう(質問する)。
- 1日1人。面談後すぐ文字化。
- M-GTAでは研究テーマに対して分析テーマを設定する(分析の成否を左右する)。
- 分析テーマはデータ収集後に設定する。
- 分析の最小単位として,分析ワークシートの作成をコーディングの要にする(⇔ 他はデータの切片化をコーディングの要にしている)。
- はじめは~プロセスの研究というように,プロセスの文字をわざわざ入れてみる。
- 動きを明らかにするという方向性=データをどう解釈していくかという方向性の設定 ≠ 分析テーマにデータを当てはめることではない。
- 分析焦点者=概念・カテゴリーレベルで分析結果の中心に位置する人間。
- → 特定の人間に焦点を置いてデータを解釈していくこと。(必須ではないが,最初はその方が解釈が順調に進みやすい。)
- 分析の流れ:
- オープンコーディング(概念生成)と選択的コーディング(=世界の拠点)。カテゴリー生成)の2つで進める。
- (M-GTAではとらない)コーディングの鉄則:Coding & Retrieval(コードから元のデータをたどれる)。
- M-GTAのコーディング:コードという語は用いない。
- データを解釈した結果は全て概念と呼ぶ(分析の最小単位)。
- データと概念の距離は全て一定(データ,1次コード,2次コード,3次コードの関係はない)。
- データと概念を研究する人間をはさんで非連続化。
- 概念にはばらつきが生じる(限定された説明力,包括的な説明力のものが混在)。
- 切片化をしない(細分化は解釈が拡散するため)。← 初心者には切片化したデータから解釈が浮上することがわかりにくい。
- 切片化の前提に問題がある:そもそも何のために研究しているかという問題を棚上げしてしまう。
- 実際の分析
- 1人分のデータに目を通す。分析テーマに照らしてディテールが豊富で多様な具体例がありそうなもの。
- 関連のありそうな箇所に注目。語句から1~2頁分までさまざま。
- はじめは,らしきことからでよい。なぜそこに注目するのかと問いかける。
- 指導者はこの段階で問いかけを支援する。
- グループでこの段階の作業を行うと効果的。ただし,あれこれ解釈を言うのではなく,手順を一緒に確認することで研究する人間の設定を共有することが重要。分析が軌道に乗ったら,分析主体は1人に限定すべき。
- データの中のコンテキストを重視する=データの背後にある意味の流れを読み取る。
- データからいきなり概念そのものを考えるのではなく,データの中で着目した部分の意味を考え,それを適切に表現する言葉は何かという順序で検討する(はじめに意味の解釈作業がある)。
- それが難しい場合は,in-vivo概念を検討する=データの中の言葉や表現そのものを分析概念としたもの。
- 概念をとらえる断面は,できるだけ動的である方がよい(プロセスに注目する研究なので)。
- 概念は一般的すぎないようにする=データから離れすぎる(ex. ~の事情,~の特性,~との関係)。
- 簡単に概念を作らないことがコツ。解釈の段階で複数の解釈を検討する(=解釈をオープン化する ⇔ 他は切片化をオープン化とする → 研究する人間が着目したデータの解釈においてオープン化)。
- 分析ワークシート
- 表計算ソフトで作成しない→文書ソフトで作成。1概念1シート。
- ワークシートの完成=その概念の理論的飽和化。
- ワークシートは,注目した箇所をヴァリエーションに,検討の結果採用した解釈(短文)を定義欄に,それ以外の解釈案で重要なものを理論的メモに,定義を凝縮表現した言葉(単語かそれに近い表現)を概念欄書く順に進める。
- 概念はデータとの対応を重視するとインパクトの弱い言葉になりやすいが,そのためにも,定義(解釈)が重要。
- 定義には,解釈内容を記録する必要がある。後から概念だけ見ても意味を忘れてしまうため。定義は,動きとしてとらえ,他の何かとの関連を記録する(名詞的でなく動詞的)。採用しなかった定義も,理論メモに残す(オープン化)。
- 理論的メモ=解釈の思考プロセスを記録することになる。各項目の最後に日付をいれてもよい(自分への記録になる)。対局例も理論的メモに記入(同じ対象者の具体例レベルの場合)。
- 10ケースあれば,ベースデータだけでの分析から結果をまとめられる。
- 理論的メモ・ノート
- ワークシートとは別に作るもの。分析結果全体についてのアイディアやひらめきを記録するもの。
- カテゴリーの生成
- 概念のグルーピングではない。2概念の関係を見出す。1つの概念を起点にして,それと関係のある概念を見出していく。→ 概念同士の関係を図にしていく。
- 概念の目安は10。10あると相互の関係が見え始める。
- 結果図
- 概念はワークシートで生成し,カテゴリーは理論的メモなどで残す。
- 理論的飽和化:ワークシートで小さい飽和化を行っているので,判断しやすい。
- 結果を論文にする前に,A4一枚でストーリーラインを書く。
- 論文は2つ書く。第1論文で活用しきれなかった概念やカテゴリーについて,新たな分析テーマを設定して分析する。(または,第1論文では取り上げなかった対象者を第2論文で取り上げる)。
- 論文で,結果を考察を分けずに書く。分けるよう指示された場合は,他の研究との比較を交えた広義の考察として書く。