2017/02/28

町支大祐(2013)「教員の組織社会化に関わる研究の動向と展望」『東京大学大学院教育学研究科教育行政学論叢』33,13-29


  • 社会化:(1)成員性の習得である,(2)学習の過程である,(3)他者との相互作用を通じて社会システムに結びつけられる過程である(柴野 1992)。
    • 文化や規範,行動様式などを内面化しながら一人前になっていく。
  • 社会化研究を分析する視点:(1)社会化を担うエージェント,(2)社会化される内容,(3)推し進めるメカニズム,(4)移行の段階,(5)社会化を果たしていく主体(山﨑 2002)。
    • エージェント:重要な他者は研究者は著名な実践家ではなく,身近な実践者(南本・加野 1989)。
  • 組織社会化:組織への参入者が組織の一員となるために,組織の規範・価値・行動様式を受け入れ,組織に必要な技能を習得し,組織に適応していく過程(高橋 1993)。
  • 組織社会化と職業的社会化
    • これまでの教員社会化は後者に注目 → 前者の知見を用いて従来の研究を克服。
    • 前者は転職で再社会化,後者は継続的。
  • 未決問題
    • 現実的職務予告の機能,教員研修の機能,異動と再社会化(異動は最大の研修)。どれも実証されていない。

  • 南本長穂・加野芳正(1989)「生涯学習の視点から見た教師の学びの構造」『香川大学教育学部研究報告第1部』79,59-95
  • 山﨑準二(2002)『教師のライフコース研究』創風社

2017/02/27

木下康仁(2003)『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践』弘文堂


  • GTAは看護研究から始まった。
  • 実証研究が理論の生成へ発展できないのは,検証偏重だから。理論とデータのギャップを克服するための足場を,理論側ではなくデータの重視に求めた。
  • 問題はGTAと何かではなく,いかにしてGTAを実践するか。
  • GTの理論特性
    • GTとは,データに密着した分析から独自の説明概念をつくって,それらによって統合的に構成された説明力に優れた理論である。
      • 概念=データを解釈して得られる仮説
      • 理論=説明的な概念によって構成されるもの→分析に用いたデータに関する限りの理論で一般化できるものではない
    • GTは,継続的比較分析法による質的データを用いた研究で生成された理論(=データに密着した分析,分析とデータ収集を並行。両者をつなぐのが比較法(理論的サンプリング),分析結果を類似と対局の2方向で比較検討,その有無をデータで継続的に確認)。
    • GTは人と人の直接的なやりとり(社会的相互作用)に関係し,人間行動の説明と予測に有効。(研究者によってその意義が明確に確認されている研究テーマ限定された範囲内で説明力に優れた理論。)
    • GTは人間の行動,他者との相互作用の変化を説明できる理論(=動態的説明理論)。
    • GTは実践的活用を促す理論。
  • GTの内容特性
    • オリジナル版:
      • 現実との適合性:説明力が問われる。研究対象の具体的領域・日常的現実に可能な限り当てはまらなくてはならない。
      • 理解しやすさ:研究対象に関心を持つ人や日常に的にいる人に,理論が理解しやすいものであること。
      • 一般性:研究対象は変化しており,多様性に対応できる一般性。
      • コントロール:次につながり,実践的活用のために重要となること。
    • GTA:大きく4タイプに分かれる:オリジナル版,グレーザー版,ストラウス・コービン版,M-GTA。
      • 共通性
      • コーディング:オープンコーディング,選択的コーディング,継続的比較分析,理論的サンプリング,理論的飽和化の5つは不可欠(適切にGTAに沿っていると判断される条件)。切片化を求める立場もあるが,M-GTAでは代替案を提示。
  • グレーザーVSストラウス問題:前者=データから概念・カテゴリーが浮上する,後者=事前に設定した解釈枠組みにデータを合わせる
    • → どちらであっても使い方次第でEmergentにもForcingにもなる。
    • 現時点では,ストラウスの方がグレーザーよりもGT的。
  • M-GTAの7つの特性
    • 5つの理論特性と4つの内容特性を満たす。
    • データの切片化をしない。
    • データの範囲,分析テーマの設定,理論的飽和化の判断において方法論的限定を行うことで分析過程を制御する。
    • データに密着した分析のためのコーディング方を使う。(概念を分析の最小単位として,グレーザーの厳密なコーディングとストラウスの深い解釈を両立させるために,分析ワークシートを作成して分析をすすめる)。
    • 研究する人の視点を重視する。
    • 面接型調査に有効に活用できる。
    • 解釈の多重的同時平衡性を特徴とする。(分析作業を段階分けしない。データから概念を生成する際に,類似例,対局例に加え,未生成の概念も検討する)。
  • 質的研究の役割:分析方法に比重が大きい研究評価の現状に対して,各研究者が立てた問いと結果を評価対象として同列に置く必要性に応えられる。
  • 質的研究は,単にデータが非数量的であることではない。データが,ディテールの豊富なデータである必要がある。
    • 現実をデータに置き換えるときに,調査者側の枠組みを強要するのではなく,回答する人の制約が少ない方法で表現できる(だから面接を行う)。
  • データ分析のアプローチ
    1. できるだけ数量的分析と同じ厳密さを求める → オリジナル版
    2. 解釈の手順を明示化し,数量分析とは別の方法をとる → グレーザー(1+2)
    3. 解釈結果のみ表示する → ストラウス
    • 1と2をつなぐ作業が切片化。
    • ストラウス・コービン版は2と3の統合?
    • M-GTAは1~3の統合を目指す。
  • 感覚的要素は,科学的でないものの,私たちがわかるために不可欠の要素であり,厳密さのためにこれを排除すべきではない。
  • 社会学の概念が感覚的要素を含むものであるからと行って,概念として未発達で科学的洗練さに欠けているのではなく,社会学が分析しようとする対象はそうした性格を有したものである。
  • 分析の重要な点
    • コーディングを深い解釈を同時に行う(グレーザー=厳密なコーディング,ストラウス=深い解釈,どちらも分析手順を示していない)
      • 解釈とは,データとの対話から意味を読み取っていく作業。対話とはやりとりを通して最初になかった何かを共同で生み出すプロセス。
    • 理論生成よりもデータ密着。データは理論的サンプリングによりシステマティックに収集されていること(密着の前提)。
      • 概念ができればデータは捨ててよい(データから分離するため)。密着していれば捨てられる。
    • 概念・概念間関係・概念の意味は,データの例示によって表現する。
  • エスノグラフィー=ディテールを直接記述分析に活かす。GTA=ディテールを概念の生成に活用する。
  • 文献レビューの指導:(1)1つの論文の書評(著者視点の要約+自分視点の批評),(2)3~5の論文の書評,(3)授業で取り上げた文献+独自探索文献のレビュー論文。
  • ベースデータ(研究テーマに照らして理論的・現実的判断で選択された対象者について,最初にまとめて収集されたデータ)に対する分析から始める。
    • ベースデータの目安は10~20。飽和化のためには一定量のデータが必要。
    • 面接は半構造化でよい。
    • ディテールの豊富さを確保するために振り返ってもらう(質問する)。
    • 1日1人。面談後すぐ文字化。
  • M-GTAでは研究テーマに対して分析テーマを設定する(分析の成否を左右する)。
    • 分析テーマはデータ収集後に設定する。
    • 分析の最小単位として,分析ワークシートの作成をコーディングの要にする(⇔ 他はデータの切片化をコーディングの要にしている)。
    • はじめは~プロセスの研究というように,プロセスの文字をわざわざ入れてみる。
      • 動きを明らかにするという方向性=データをどう解釈していくかという方向性の設定 ≠ 分析テーマにデータを当てはめることではない。
  • 分析焦点者=概念・カテゴリーレベルで分析結果の中心に位置する人間。
    • → 特定の人間に焦点を置いてデータを解釈していくこと。(必須ではないが,最初はその方が解釈が順調に進みやすい。)
  • 分析の流れ:
    • オープンコーディング(概念生成)と選択的コーディング(=世界の拠点)。カテゴリー生成)の2つで進める。
    • (M-GTAではとらない)コーディングの鉄則:Coding & Retrieval(コードから元のデータをたどれる)。
    • M-GTAのコーディング:コードという語は用いない。
      • データを解釈した結果は全て概念と呼ぶ(分析の最小単位)。
      • データと概念の距離は全て一定(データ,1次コード,2次コード,3次コードの関係はない)。
      • データと概念を研究する人間をはさんで非連続化。
      • 概念にはばらつきが生じる(限定された説明力,包括的な説明力のものが混在)。
      • 切片化をしない(細分化は解釈が拡散するため)。← 初心者には切片化したデータから解釈が浮上することがわかりにくい。
        • 切片化の前提に問題がある:そもそも何のために研究しているかという問題を棚上げしてしまう。
  • 実際の分析
    • 1人分のデータに目を通す。分析テーマに照らしてディテールが豊富で多様な具体例がありそうなもの。
    • 関連のありそうな箇所に注目。語句から1~2頁分までさまざま。
    • はじめは,らしきことからでよい。なぜそこに注目するのかと問いかける。
    • 指導者はこの段階で問いかけを支援する。
    • グループでこの段階の作業を行うと効果的。ただし,あれこれ解釈を言うのではなく,手順を一緒に確認することで研究する人間の設定を共有することが重要。分析が軌道に乗ったら,分析主体は1人に限定すべき。
    • データの中のコンテキストを重視する=データの背後にある意味の流れを読み取る。
    • データからいきなり概念そのものを考えるのではなく,データの中で着目した部分の意味を考え,それを適切に表現する言葉は何かという順序で検討する(はじめに意味の解釈作業がある)。
    • それが難しい場合は,in-vivo概念を検討する=データの中の言葉や表現そのものを分析概念としたもの。
    • 概念をとらえる断面は,できるだけ動的である方がよい(プロセスに注目する研究なので)。
    • 概念は一般的すぎないようにする=データから離れすぎる(ex. ~の事情,~の特性,~との関係)。
    • 簡単に概念を作らないことがコツ。解釈の段階で複数の解釈を検討する(=解釈をオープン化する ⇔ 他は切片化をオープン化とする → 研究する人間が着目したデータの解釈においてオープン化)。
  • 分析ワークシート
    • 表計算ソフトで作成しない→文書ソフトで作成。1概念1シート。
    • ワークシートの完成=その概念の理論的飽和化。
    • ワークシートは,注目した箇所をヴァリエーションに,検討の結果採用した解釈(短文)を定義欄に,それ以外の解釈案で重要なものを理論的メモに,定義を凝縮表現した言葉(単語かそれに近い表現)を概念欄書く順に進める。
    • 概念はデータとの対応を重視するとインパクトの弱い言葉になりやすいが,そのためにも,定義(解釈)が重要。
    • 定義には,解釈内容を記録する必要がある。後から概念だけ見ても意味を忘れてしまうため。定義は,動きとしてとらえ,他の何かとの関連を記録する(名詞的でなく動詞的)。採用しなかった定義も,理論メモに残す(オープン化)。
    • 理論的メモ=解釈の思考プロセスを記録することになる。各項目の最後に日付をいれてもよい(自分への記録になる)。対局例も理論的メモに記入(同じ対象者の具体例レベルの場合)。
    • 10ケースあれば,ベースデータだけでの分析から結果をまとめられる。
  • 理論的メモ・ノート
    • ワークシートとは別に作るもの。分析結果全体についてのアイディアやひらめきを記録するもの。
  • カテゴリーの生成
    • 概念のグルーピングではない。2概念の関係を見出す。1つの概念を起点にして,それと関係のある概念を見出していく。→ 概念同士の関係を図にしていく。
    • 概念の目安は10。10あると相互の関係が見え始める。
  • 結果図
    • 概念はワークシートで生成し,カテゴリーは理論的メモなどで残す。
    • 理論的飽和化:ワークシートで小さい飽和化を行っているので,判断しやすい。
    • 結果を論文にする前に,A4一枚でストーリーラインを書く。
    • 論文は2つ書く。第1論文で活用しきれなかった概念やカテゴリーについて,新たな分析テーマを設定して分析する。(または,第1論文では取り上げなかった対象者を第2論文で取り上げる)。
    • 論文で,結果を考察を分けずに書く。分けるよう指示された場合は,他の研究との比較を交えた広義の考察として書く。

    2017/02/16

    井上真琴(2004)『図書館に訊け』ちくま新書486


    • 校閲=書かれた内容の裏をとり,引用を点検して正誤・適否を確かめる。
    • 大学で学ぶものは学術研究の基礎訓練を受けなければならない。それが,調べて書くこと。
    • 選定図書は全体の16%程度。
    • 比較はちょっとした努力で本質がわかるようにしてくれる。
    • わからないことはまず事典を引く。引く際は,索引巻から引く+複数を引き比べる。
    • ノーベル賞受賞者に,どう研究を進めて新発見をしたかをインタビューし,オーラルヒストリーとして保存。

    2017/02/15

    楠見孝・南部広孝・西岡加名恵・山田剛史・斎藤有吾(2016)「パフォーマンス評価を活かした高大接続のための入試-京都大学教育学部における特色入試の取り組み-」『京都大学高等教育研究』第22号, 55-66


    • パフォーマンス評価:知識やスキルを活用・応用・総合する力をみるために,学習の成果物やそれに関わる活動を評価する方法。
    • 特色入試 = 学力重視のAO入試。:(1)高校までの学びを振り返る書類とその成果をポートフォリオの形で提出を求める,(2)2次選考の課題において,教科学力を超えた汎用的能力である論理的-批判的思考力や問題解決力,創造力をみる点。
    • 論文の目的:入試の適切性を4つの観点で評価。
      • カリキュラム適合性:学力評価計画がカリキュラムにおいて設定されている目標群に適切に対応するものとなっているか。
      • 比較可能性:評価者が評価基準を共通理解し,同じ採点規則に従うことによって,評価の一貫性が確保されているのか。
      • 公正性:平等性や結果妥当性は確保できているか。諸条件,評価方法・評価規準(基準)は公開されており,社会的に承認されているのか。
      • 実行可能性:入手可能な資源と時間の範囲内で,評価対象としなくてはならない人数の学習者を評価できるのか。
    • 実施準備:(1)他大学AO調査(求める人物像,募集人員,出願書類,試験方法に関する動向を確認),(2)高校調査(高校の特色ある取組=小論文指導,グループ研究,個人研究,思考力育成,ディベート)→ 課題や提出書類の内容の作成,(3)サンプル問題公開。
    • 求める人物像:
      • 過去の経験として,高校までの広範な学習や経験の成果としての卓越した学力や,学校内外の活動で豊かな経験を積み,創造的熟達(様々な領域において経験を振り返りつつ自分なりの工夫などによる洞察を得て,高いレベルのパフォーマンスを発揮できるようになること)による洞察を得ている者
      • 現在の能力として,教育や心理などへの関心と論理的・批判的思考力などの汎用的能力を持つ者
      • 未来の志向性として,専門に基づく社会貢献の志を持つ者
    • 1次選考
      • 学びの報告書:(1)中学時代から現在までに取り組んだ「学び」の活動(各教科での学習や総合的な学習の時間,読書,課外活動,学校行事での活動,ボランティア活動等)のうち,主なものを時間の経過に沿って記述,(2)取得した資格や各種の検定の成績がある場合は,その最高の等級や得点を列挙,(3)1にあげた活動の中で,大学での学びに向けて,重要なものとあなたが考える3つの活動について説明。
      • 学びの設計書:(1)教育学部へ入学を希望する理由,(2)大学生活において何を目標にし,どのように学びたいか,具体的に設計してその内容を書く,(3)大学卒業後,大学で学んだことをどのように活かしたいか,具体的に書く。
    • 2次選考
      • 課題:問1は英文資料の下線部訳と著者の主張の要約,問 2は事実の解釈を資料に基づいて推測する問い,問3は複数の資料を用いて論じる問い。
      • 口述:提出書類・特定のトピックについての質疑応答。
    • 最終選考:センター試験80%。
    • 入学者の,入学時学習成果は高い,学習後の獲得感高い,授業外学習時間長い,グループの振るまいアクティブ,コンセプトマップ豊か

    2017/02/14

    山下柚実(2016)『広島大学は世界トップ100に入れるのか』PHP新書


    • 文系不要批判
      • 本当に大切なのは,価値の軸を想像する力=既存の価値を批判する力,自明と思っている価値を相対化する力。
      • 文系の特徴:扱う時間の長さ,扱う対象が自分たち,知の根底に無目的の遊戯性が伏在。→ 価値創造を可能にする。→ 今役立つではなく,将来役立つ基盤を整える。
    • まずは,今の能力・実力の見える化・モニターが大事。
    • 過去のデータに基づいたシミュレーション。
    • KPIは10年度のトップ100大学から逆算して算出。KPIは個人ごとにウェイトが異なる点が重要。
    • 数値化すると目標にしてしまいがちだが,モニターであることが重要。

    2017/02/13

    ウィリアム・ジャマーノ(2012)『学術論文出版のすすめ』慶應義塾大学出版会


    • 一見,瑣末に思われるもろもろの事項が,最終的には非専門家である聞き手に語りかける力に結びつき,実はそれこそ,専門家としての実力の有無が試されるきわめて重要な場が存在していることを,研究者の社会貢献を示す恩返しという言葉を使って解き明かしている。
    • 校正は,渾身の力を持って行う。校正の労は著者自身がとるものと覚悟して遂行する。校正で修正できる範囲を超える修正は,著者がそのコストを負担する。
    • 図版はクオリティの高いものだけを使用する。
    • 専門用語は正しく明確に言い表し,不可能なときだけ用語を使う。
    • 書き出しに重きを置く。