- NPMとは,(1)業績・成果による統制(Management by Results)を行う(経営資源の使用に関する裁量を広げる代わりに(Let Managers Manage))ことで,そのための制度的仕組みとして,(2)市場メカニズム(民営化,エイジェンシー,内部市場の契約型)の活用,(3)顧客主義への転換,(4)ヒエラルキーの簡素化(統制しやすい組織への変革)を行うもの。
- 官僚制に基づく行政管理システム(Traditional Model)には,次の2つがある。
- ウェーバーの官僚制理論(Weber's Theory of Bureaucracy):
- 規則による規律の原則:業務が客観的に定められた規則に従って継続的に行われること
- 明確な権限の原則:業務は規則に定められた明確な権限の範囲内で行われる。
- 明確な職階制構造の原則:組織内では上下の指揮命令系統が一元的に確立され,上級機関は下級機関の決定について再審査権・取消権を持つ。
- 経営資源の公私分離の原則
- 官職占有の排除の原則
- 文書主義の原則:少なくとも最終的な決定は全ての文書の形で表示・記録・保存される。事務所は文書と職員から成り立つ。
- 任命制の原則
- 契約制の原則
- 資格任用制の原則:職員の採用は一定の学歴と専門知識を持つ有資格者の中から行い,公開競争試験の成績の優秀な者から採用する。
- 貨幣定額俸給制の原則
- 専業制の原則
- 規律ある昇任制の原則:職員の昇進は在職年数か業務成績,またはその双方に基づいて行われる。
- ウィルソンの官僚制における政治的支配:行政管理を非政治的プロセスとして分離する。政治は有権者に対して政治的説明責任を負い,官僚は執行機関として議会に対して官僚的な説明責任を負う。
- 伝統システムの限界:(1)政治と行政(政策と執行)の区分は,実際には困難で,相互に影響を受ける,(2)官僚は情報の優位性から官僚による支配が行える,(3)終身雇用と職階制を前提とした年功的な昇任制度が,有能な職員の志気をそぎ,業務効率化インセンティブを阻害するとともに,業績・成果よりも法令・規則の順守を志向し,イノベーションを阻害する。
- 一般的なマネジメントの機能は,(1)戦略(組織の目標と優先順位付け),(2)内部管理(組織編成,職員配置,人事監督・管理,業績評価),(3)外部マネジメント(目標達成に影響するエイジェンシー・団体・企業,メディア・大衆対応)がある。
- 伝統的な行政では,評価が不要でPlan-Doのみの業務の流れであったが,マネジメント・サイクルの導入は,業績測定・評価を次のPlanにフィードバックさせる点が異なる。
- 行政における業務の流れは,Input,Output,Outcomeの流れであり,アウトプットからアウトカムへのプロセスを考える必要がある点で,民間組織と異なる。それぞれの評価の視点は,Economy,Efficiency,Effectivenessである。
- 評価の困難さの問題として,(1)アウトプットとアウトカムのどちらを重視するか(当事者は前者,住民は後者の方が重要,ただしアウトカムをPIでみる場合,指標としての精度が問題になる),(2)アウトカムをフィードバックに利用すると,アウトカムへの因果関係評価が重要になるが,外的要因やタイムラグの問題で実施が困難。
- 行政評価は,明確な目標基準がないために,戦略性に限界がある。NPMの課題は,業績・評価による統制の有効性の問題。パフォーマンス・メジャー面との枠組みの中でロジックモデルを構築することである程度克服できる。
- PMの理念型は2つのリンクから成り,計画・業績目標・予算配分の流れと,業績測定・業績評価・予算査定の流れがある。この2つの間のダイナミックなリンクの形成がPMの理念型である。ただし,測定の技術的問題,アウトプットとアウトカムのタイムラグや因果関係評価の問題で,2つめのリンクはつながらないことが多いことが問題。
- 民間企業の戦略経営は,(1)予算・財務管理(初期マネジメント,収支のみに着目),(2)長期計画(50年代,安定成長の下での売り上げ予測,ほとんど機能しない),(3)事業戦略計画(60年代,事業ごとにミッションを定義,環境分析(SWOT),目標設定),(4)企業戦略計画(70年代,国際競争,不確実性,需要多様化で長期の企業のビジョンの明確化),(5)戦略経営(80年代,分析による停滞と戦略計画導入への組織的抵抗から,戦略ビジョンをここの従業員の役割までブレイクダウン)という歴史を辿り,公共部門でも同様の発展形態が見られる。
- NPMの基本は,責任・権限の委譲。マネジメントの第一要素は戦略で,ビジョンをもとに政策目標,具体的目標,施策・事業へと展開しなければらないが,日本ではトップダウン(演繹的)展開ではなく,ボトムアップ(帰納的)にとどまる例が多い。それは,戦略経営への前提条件として,施策・事業の総点検を行う必要があったとも考えられるが,戦略経営への素材づくりは終わっているなら,トップダウン的な戦略展開を進めることが課題。
2011/04/25
大住荘四郎(2002)『パブリック・マネジメント―戦略行政への理論と実践』日本評論社
2011/04/24
大住荘四郎(2009)「ポジティブ・アプローチによる自治体の組織開発 : 松戸市のケースをもとに」『関東学院大学経済経営研究所年報』31, 1-14
- ギャップ・アプローチが,問題を特定し解決する問題解決アプローチであるのに対し,ポジティブ・アプローチは,強みや価値を発見し、ありたい状態を描いて現実的達成状態を共有し,新しい取り組みを始めるもの。はじめから最適解を志向するのではないため,環境が不安定な状況下で有効なアプローチ。
- ポジティブ・アプローチの代表は,AI。これは,(1)Discovery(強みや価値を発見,潜在的真価をインタビュー,最高の瞬間を味わうプロセスを発見,ポジティブコアの発見),(2)Dream(組織の最高の状態を想像,ストーリーを描く),(3)Design(達成したい状態を共有・記述),(4)Destiny(達成へ向けて技術的に取り組む)という4Dプロセスで進める。
- 公共組織で主体性・自律性が生まれにくい理由は,(1)その宿命(事業領域が外生的で,公平性とマイノリティ重視),(2)対価性の欠如と受益者意識の希薄さにより要求や課題が噴出する可能性,(3)外に基準を求めても,その基準自体が正確でなく,外の基準のみでの意志決定が困難であること。
2011/04/03
Michael Shattock (2002) "Re-Balancing Modern Concepts of University Governance," Higher Education Quarterly, 56, 3, 235–244.
高等教育機関のガバナンスモデルとしては,企業モデルの単一直線型(トップダウン)が注目されているが,今こそShared governanceを取り戻すべき。共同委員会,共同検討委員会を具体的な問題について立ち上げて,双方向の議論を行うべき。大学内の各所・各層にリーダーシップが存在することが必要。
2011/04/02
斎藤嘉則(1998)『戦略シナリオ』東洋経済新報社
- 戦略思考とは,不確実なビジネス環境において,明快な将来のシナリオを創る思考である。
- 日本人は方向を定めてから動くことに優れているが,今は方向を定めながら動く能力が求められる。
- 思考のモラルハザードは,失敗やリスクの最小化という責任回避思考からくる。人が判断する基準は,目的か価値観しかない。
- 戦略思考の3つのスキルは,次の通り。これを身につける最短距離は,自己責任の下にビジネスを行う厳しい環境に身を置くこと。
- 責任を持って具体的結論を出す力(仮説思考:早く結論を出して実行し,検証して次のステップへつなげる)
- 過去から将来までロジックで構造を洞察する力(こうするとどうなるという因果関係)
- 価値基準をもってリスクを伴う判断を行う力(判断基準:コスト・ベネフィット,理念・規範・ビジョンを持つこと)
- 現場主義のやり方は,担当者の責任・リスクが共に少ない。現状改善型のオペレーション思考では難しい時代には,先を予測するリスクを覚悟して新たなニーズ創造を行わなければ優位性は達成できない。
2011/04/01
榊原清則(2002)『経営学入門』日経文庫853
- 大航海時代と今日の企業の違いは無限持続体(Going concern)であること。
- 組織の定義では次の4つが重要。
- 組織の定義には複数の人間が含まれる。
- 組織は意識的に調整された複数の人間の活動の集合体。(マネジメントとは,他人に一定の仕事をさせること)。
- 組織には構成員がいる。ゆえに,構成員か否かをもって組織の境界ができる。
- 組織には目標・目的が存在する。
- 戦略は,有効性(何をするか)と効率性(どのようにするか)に関わる組織の基本的意志決定のこと。有効性高×効率性高がベストだが,どちらかの場合は有効性を追求したい。にもかかわらず,実際のマネジメントの努力は効率性の追求に集中しがち。
- 高等教育機関の組織文化の複雑さは,マッチョ文化と手続き文化の共存とコンフリクトにある(マルチカルチャー)。
- インサイド・アウトとアウトサイド・インのバランスが重要。成熟組織は,人がいる,技術がある,部門がある,だから新規事業ができるという考え方をしがち,新興組織は少子高齢化だ,リサイクルが重要だ,だからその分野へ進出しようと考えがち。
- 戦略的という場合,短期より中長期を,また先手を考えることを意味する。先手を打つには目標と共に,世界観やべき論が必要。また成長を目指すという現状に満足しないことも必要。
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