著者は「双方型授業」を提唱しており、本書はその重要性を説くものである。著者は大学の授業は未だよくなっておらず、教員も学生も満足できるものではないと述べ、そのためには授業は学生と一緒に作るものであるという視点が不可欠であるという。この学生と一緒に作ることを著者は「双方向型」と呼んでいる。具体的な内容は、文系学生対象の自然科学実験授業、教養型科目でのひとことカード活用などの著者の実践事例を紹介するものである。先行研究に基づく内容ではなく、双方向のための方法論も出席カード、コメントカード、読書ノート等既知のものが多く、これといって目新しい情報はない。シラバスの重要性を説いているものの、実際のシラバスは決して学習支援のためのアジェンダとはなっておらず、著者の実践紹介書にとどまる内容である。
しかし、面白い点は本論の前に展開される、授業アンケートに見る大学教育の現状紹介である。アンケート項目を様々な角度から分析し、大学教育の特徴を考察するものである。履修登録者数・単位取得者数・教室定員数・アンケート回答者数の比較、授業出席率の上昇傾向、授業アンケートの実施と授業満足度の無相関、教室環境の向上と理解度向上の相関、学生の読書量の傾向など多数の項目を見ており、その結果もほとんどの大学で共通して当てはまるものではないかと思われる。特に大規模授業の特性を分析する視点としていくつか参考になるだろう。