- 教育学における規範欠如の問題は,教育構想や教育実践のためにどのような方向に研究を進めていけばよいのか,教育学が蓄積してきた多様な知見をいかに共同的に活用することができるかという指針欠如の問題に直結する。
- 教育学領域の細分化問題にも起因する。
- → 教育学のメタ理論体系の理路を明らかにする。
- 伝統的教育学
- 倫理学に基礎を置く目的論
- 心理学に基礎を置く技術論
- 今日では,3部門で広く了解されている
- 教育哲学(目的・規範部門)
- 教育科学(実証部門):教育心理学,教育社会学,教育史
- 実践的教育学(実践部門)
- 実際は,これらの部門を横断しながら研究を行う。
- この3部門それぞれに原理的視座(メタ理論)が必要である。
- ex. 教育社会学:社会学的分析がそもそもどのような意味において教育構想にしするのか,どのような目的によって行われるのが正当と言いうるか,明確でないことを問題視する動きがある。
- ⇔ 公教育の目的・正当性・構想指針原理が解明されれば,多様化・細分化した教育学の知見を整合的に再構築できる。
- メタ理論1の導出
- どのような教育を正当と言いうるか:政治哲学諸理論に求める(混乱しているが)。
- 道徳・義務的アプローチ(ロールズ,ノージック):どのような社会が最も道徳的で,そのような社会においてどのような義務があるかを問うアプローチ。
- 何を持って道徳的かは,欲望・関心相関的であるため,道徳原理を定めることは不可能。
- 状態・事実論アプローチ(テイラー,サンデル):われわれが事実的にどのような状態に置かれているかを思考の出発点として,社会構想理論を立てるアプローチ。
- 何を持って事実的状態かを一義的に決められない。
- 存在から当為を導出するアプローチになっている。
- プラグマティックアプローチ(ローティ,ウォルツァー):その都度どうすればうまくいくかを考えながら社会構想理論を立てるアプローチ。
- 具体的な考え方が欠けている。
- 現象学=欲望論的アプローチ:絶対正しい社会や教育の目的・正当性はあり得ないから出発する。
- 絶対客観的な目的・正当性ではなく,共通了解可能な目的・正当性を見出すよう問いを進めるアプローチ。
- 教育の目的や正当性に対して抱く確信が,欲望・関心相関的であるなら,普遍的に了解されうる欲望・関心がありうるか。あるなら,そのような欲望・関心を十全に達成しうる社会や教育の根本条件は何か。
- 人間的欲望の本質は,自由の相互承認。
- 互いが対等に自由な存在であることをルールとして認め,その上で自由への欲望を調整し合うことが,各人の自由を十全に達成するための根本的社会的条件。
- 実質化には,法の創設と教養が必要。
- 教養には学力だけでなく,自由の相互承認の原理の十全な理解(感度)が含まれる。
- 公教育の本質は,自由の相互承認の原理を教養を通して実質化するもの。
- メタ理論2の導出
- 研究対象の同一性が高い場合は,帰納法が正当性を持ちうるが,人間科学が扱う1回起性の高い事象には有効でない。
- → 構造構成主義:構造化に至る諸条件の開示。どのような関心・目的を持つ研究者が,何を対象に,どのような観点からどのようにデータを収集し,どのような角度からどのように分析した結果得られたものかという条件を開示する。
- 実証部門の科学性は,関心相関的に立ち現れた教育減少を共通了解可能な仕方で説明できるよう構造化することによって担保される。
- メタ理論3の導出
- 4つの課題に取り組む:
- 現代において自由に生きるための教養(力能)は何か,
- この教養はいかに育めるか,
- 自由の相互承認の感度はどうすれば育めるか,
- 教育行政において一般福祉はいかに実現しうるか。
2017/05/08
苫野一徳(2017)「教育学のメタ理論体系」『本質学研究』4,1-17
登録:
コメント (Atom)