- 大学生に比較的よく見られる3つの障害
- 注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):3つの基本症状,
- 不注意(集中できない,気が散る,聞き落とし,不要な情報を無視できない),
- 多動性(じっとできない),
- 衝動性(予測や考えなしに行動する,待てない)
- 7歳までに2つ以上ある時に判断される。子供時代は保護者がいるため表面化しないが,自己管理の問題として出る。(90分集中できない,指示を聞き逃してミスが多い,提出物をなくす,期限を忘れるなど)
- 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder,自閉症・アスペルガー症候群):3つの主要障害,
- 社会性障害(他人への関心乏しい,集団の中で適切に振る舞えない,相手の気持ちを察せない),
- コミュニケーション障害(紋切り型など独特の話し方,抑揚が不自然,自分の興味を一方的に話す),
- 想像性障害(限定された対象に熱中,特定の手順にこだわる,空想と現実の切り替えが困難)
- 学習障害(Learning Disabilities/Learning Disorder):知的能力は低くないのに学習効果が上がらない状態を言う
- 教育的定義(文科省):読む・書く・計算する・聞く・話す・推論するのいずれかでつまずいている状態
- 医学的定義:読字障害・書字表出障害・算数障害が含まれる
- 話を聞きながらノートを取れない,読むのが遅,特定科目の成績が極端に悪い,簡単な計算に間違いが多い
- 共同作業が不可欠な課題で困難が出るものの,身体の障害と比べて周囲から理解されにくい上,本人にも分からない場合も多い。よって,大学が支援する場合は,障害に対して支援するのではなく,学生が直面する課題を把握して合った支援をすること。
- 発達障害は,生まれつき・ごく早期から持っている特性であり,その根本的性質は終生続く。生活上の困難は,個人特性と環境の相互作用に依るものであり,環境の調整と周囲の理解で適応可能な状況を増やすことができる。
- 発達障害学生は,視覚的に整理された環境や,やることが明確な指示で判断や行動がしやすくなる傾向があるが,大学は構造化されていない(みんな時間割が違う,席が決まっていない,授業形態が多様,評価方法が多様,ホームルームがない)ため,戸惑いやすい。
- しかし,大学生活は失敗から学べるチャンスでもあり,大学で学ぶ意義は大きい。
- 発達障害者支援法第8条2,大学および高等専門学校は,発達障害者の状態に応じ,適切な教育上の配慮をするものとする
- 大学が必ず行うのは,学ぶ権利を保障することであり,学生の特性に合わせた配慮は特別扱いではなく他の学生と同じ土俵に乗るための権利保障である。組織的に対応するためには,ガイドラインの作成と授業の代替措置が求められる。代替措置では,課題の本質は変えない(専門領域の中核的な部分の学習)ことが重要で,機能面の弱さが単位修得に影響を及ぼしにくい専攻へ進路変更することも視野に入れる。
- ただし,単位認定基準,卒業要件の緩和,過度な負担のかかる支援はするべきではない。
- 信州大の学生支援コーディネータは,アメリカのスクールサイコロジストをモデルとした。心理教育的アセスメント,コンサルテーション,コーディネーションを中核的機能として持つ。学生につながる経路は,他の支援スタッフからの要請(カウンセラー・校医)やキャリアカウンセラー,教職員など。つなぎ方は,直接学生に会う,スタッフへ対応を提案するコンサル,スタッフと学生を交えた三者面談。
- コーディネータは,関係者を集めて会議を開くなど,部局を超えて連携して支援全体をマネジメントする。学部教員に単独で交渉しにくい場合は,プロジェクト推進メンバである副学長,学生支援課長から事前に話を通すことで部局対応を容易化する。
- このように,相談室で話を聞くことを主たる業務とせず,コーディネート(=人と人をつなぐ)を主たる業務とすることのメリットは大きく,コーディネータには日常的に教職員と情報交換をし,大学の教職員をよく知っていることが求められる。限られた資源の中でコーディネータを探すには,ピアサポートと学外資源を使う必要がある。
- 多くの文献を読む作業(=環境からの要請)→読みに困難(=特性)→期限内にレポートできない(=折り合いがつかない状況)
- 支援方法を探る5つの問い,(1)トレーニングや治療で改善できるか,(2)得意な部分で補えるか,(3)やり方の工夫で補えるか,(4)支援技術や道具で補えるか,(5)環境側が変わることができるか
- (1)はSSTや薬物療法がある,(2)は対面議論からオンライン化など,(3)は読まない部分を隠して読むなど,(4)はITツールなどの例がある。結局はオーダーメイドの支援。
- 支援ニーズの把握については,大学生精神健康度調査の新入生ガイダンス・健康診断での実施を活用。
- 学生の理解では,何ができないのかに焦点が当てられがちだが,何ができるかも重要な手がかりであり,理解には学生の特性の理解と,学生を取り巻く状況=環境の理解が重要。
- 支援計画作成においては,中長期目標と,短期目標の設定の2つが重要。これに支援提供者,支援内容,評価を加えた5領域の横軸と,学習面,心理・行動面,社会面,生活・健康面,進路面の5分野を加えたマトリックスで計画を考えるとよい。